韓国でスマホがないと不安で何もできない子供が続出、3歳から「スマホ中毒」予防教育義務化へ [2013年6月14日]

.
韓国で「スマホ中毒(スマホ依存症)」が社会問題になっている。IT政策を担当する未来創造科学部と韓国インターネット振興院が2013年6月、10~49歳のスマートフォンユーザー1万683人を対象に調査したところ、10代の18.4%が「中毒」状態であるという結果になった。20~49歳の中毒率9.1%を大きく上回る。

 スマートフォンが手元にないと不安で、日常生活ができなくなる状態を「中毒」と判断する。2012年調査では11.1%だったのが、1年の間に7ポイントも増えている。スマートフォンユーザーの1日の平均使用時間は4時間、中毒と判定された人は1日7.3時間以上使っている。中毒者は1回当たり19分ほど、1日23回以上スマートフォンをチェックしていた。


 また別の調査では、未就学~小学生の7.3%が1日3時間以上インターネットを利用する「ネット中毒」(パソコン利用)という結果も出ている。小学生はネット中毒、中高生はスマートフォン中毒が問題である。


スマホ中毒とSNS中毒の“合併症”も


 一般的なスマートフォンユーザーは主にニュースや検索、メール、スケジュール管理といったことにスマートフォンを使う。一方で、片時も手から離せなくなる中毒状態の人は、SNSとゲームに使う時間が圧倒的に多かった。


 一般的なユーザーはスマートフォン使用時間4時間のうち3時間をSNSに使うが、中毒者は7.3時間のうち5.4時間をSNSに使っている。青少年のスマートフォン中毒は「SNS中毒」と言われるほどである。青少年のスマートフォン中毒者は1年に平均7.9回ほど、SNSで嘘を書き込まれたり、仲間外れにされたりする「ネットいじめ」を経験したことがある。




「ネットゲーム中毒」は解消に向かったが


 韓国インターネット振興院の『2012年インターネット利用実態調査』によると、6~19歳のスマートフォン保有率は64.5%で、2011年21.4%に比べ3倍も増えている。小学生から当たり前のように自分用のスマートフォンを持つ韓国では、デバイスの普及と共に小学校でも個人情報保護やネチケット(ネットで書き込みする際のエチケット)などを教えている。


 韓国では15年ほど前から、青少年の「ネットゲーム中毒」が社会問題になった。ネットカフェで寝泊まりしながらゲームのしすぎで“過労死”した事件、ゲームを止める家族に暴力を振るった事件、現実とゲームの世界を区別できなくなり殺人や自殺をする事件、などが何度も起きている。


 学校と政府機関、警察、病院が協力してネットゲーム中毒予防教室と治療教室を続けたことで、今ではネットゲーム中毒そのものが問題になることは少なくなった。ところが、それで一件落着とはならず、時代がパソコンからスマートフォンに移行した途端に、今度はスマートフォン中毒が問題化しているのである。


「中毒予防計画」もスマホ版に改定


 韓国政府は2013年6月13日、ネット中毒予防教育、ネットゲーム中毒予防教育など、別々に行っていた各種ネット中毒の予防教育を1つにまとめ、3歳から義務的に教育する総合計画を発表した。国家情報化基本法により2010年に成立した「インターネット中毒予防と解消総合計画」を改定し、幼児から大人まで、生涯にわたってネット中毒・スマートフォン中毒を予防し、治療・事後管理するという内容である。中毒予防・治療に関する韓国の経験や治療事例を海外に伝える国際協力も活発にする。


 総合計画では具体的に以下のような施策を掲げている。2015年までに幼稚園から高校まで予防教育の義務化、医学・科学的スマートフォン中毒治療モデルの開発、スマートフォン中毒予測指数の開発、「スマートフォン中毒対応センター」を11カ所から18カ所に増設、治療を終えた「回復者の集い」を結成、などである。幼児の場合は親に対する教育活動をして、子供がスマートフォン中毒にならないよう見守れるようにする。



政府が保護者向け「アプリ制限アプリ」を提供


 さらに、スマートフォン中毒・ネット中毒を細分化する。スマートフォン中毒の中でもSNS中毒なのかゲーム中毒なのか、ギャンブル中毒なのか、といった中毒の類型を細かく分けて、それに合わせて予防・治療をするのだ。この計画には、教育部、未来創造科学部、保健福祉部、女性家族部、文化体育観光部、放送通信委員会といったネットと教育に関わる省庁がすべて参加する。


 韓国政府は「子供のスマートフォン中毒を予防するためのアプリ」も開発している。親が決めたサイトとアプリしか利用できないようにしたり、ネットに接続する時間を制限できるアプリである。スマートフォンの使用時間と何に使っているのかを自動記録し、「やり過ぎ」と判断した場合、親と担任教師に連絡するアプリも登場した。


 スマートフォンの普及が速かった分、中毒という悪い面が出てしまった韓国。3歳からのスマートフォン中毒予防教育は効果を発揮するのか、中毒の原因と言われるSNS会社がどう対処するのかも気になるところだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130614/1094523/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *