[日本と韓国の交差点] 韓国で進む二極化:北の核を懸念する人、無関心な人

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2月12日、ついに北朝鮮が第3次核実験を行った。韓国では、新聞やテレビがこのニュースを大々的に報道した。朴槿恵(パク・クンヘ)次期大統領は、「韓国と国際社会の強力な警告にもかかわらず、北朝鮮が核実験を強行したことを強く糾弾する。新しい政府はどのような場合でも北朝鮮の核武装を容認しない」と声明を発表した。

 しかし、ソウル市内に動揺する様子はない。株価も変動していない。

 核実験が行われた12日まで韓国人は、北朝鮮及びその核の問題に無関心だった。関連するニュースにコメントが書き込まれることはほとんどなかった。そうなった原因の一つに、目の前に問題が山積していることがある。福祉公約を実現するための財源確保、旧正月前後の物価急騰など、明日の暮らしがどうなるか分からない。足元の火を消すのが精いっぱいで、北朝鮮の核実験まで心配する余裕がないのかもしれない。

 韓国政府の北朝鮮対応も核実験直前までぬるいものだった。北朝鮮が核実験するのを止めようと、日本や米国、中国が警告している中、朴政権の政府組織構想や人選に追われていた。

 しかも核実験が行われた12日、李明博大統領は自分と夫人に韓国最高等級勲章である「槿大勲章」を授与すると決めた。北朝鮮が核実験を強行し国際社会が騒がしい時に、李大統領は「セルフ勲章授与」のことで頭がいっぱいだったようだ。任期末とはいえ、最後まで、大統領として国の安全保障を最優先すべきではないだろうか。

朴次期大統領も危機感に乏しかった

 朴次期大統領も、北朝鮮の核実験に関して安保理と米国、中国に任せているように見えた。1月24日に北朝鮮が核実験を示唆して以降、積極的な動きは見られなかった。

 2月7日になってやっと与野党の代表と会合し、「どのような場合でも北朝鮮の核武装は容認できない。北朝鮮問題に関しては、北朝鮮が正しい選択をするよう、与野党が声を一つにして強く求める」と表明した。「駄々をこねれば何かもらえるという認識を持たせてはならない」「北朝鮮が国際社会に協力する姿勢を行動で見せるのが平和への出発点である」といった内容の声明を発表した。

 この場で朴次期大統領は、韓半島(朝鮮半島)信頼プロセスについて言及した。朴次期大統領の対北安保構想であるこの構想は、大きく3つに分かれる。

  • 北朝鮮は、韓国と北朝鮮が合意した既存の約束(南北非核化共同宣言)、および北朝鮮と国際社会がした約束を尊重し守る
  • 政治的状況に関係なく持続的に人道的交流(支援)事業を行う
  • 北朝鮮の改革開放および開発水準と需要に応じて、南北の経済協力を多様化させる。さらに、北朝鮮インフラ構築事業に対する支援を段階的に拡大する

 基本的に、北朝鮮が韓国との約束、国際社会との約束を守り、信頼関係を築くのが先。その後で対話を始めるという姿勢である。北朝鮮が12日に核実験を強行したことで、朴次期大統領は、北朝鮮の非核化を前提にした「韓半島(朝鮮半島)信頼プロセス」を修正するのだろうか。どのような戦略で北朝鮮と向き合うのか気になるところだ。

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By 趙 章恩

2013年2月15

-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130214/243732/

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