韓国でSNS選挙運動が合法化、“つぶやき合戦”の火ぶた切る

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韓国では2012年4月11日の総選挙より、SNSを利用した選挙運動が合法となった。

 中央選挙管理委員会のホームページに告示された「選挙運動」の定義を見ると、「インターネット、電子メール、SNSを利用した選挙運動は常時許容」、候補者はいつでも「インターネットホームページ(ポータルサイト、Hompy(注:mixiのような個人ホームページ)、ブログ)、インターネット掲示板・チャットなどに文章と動画を使って情報を掲示し、電子メールまたはモバイルメッセンジャー、TwitterなどSNSを利用して選挙運動できる」とある。


 Twitterに特定候補や政党を支持するつぶやきを残しても選挙法違反ではないということである。また、選挙当日、オフラインでは選挙運動してはならないが、インターネット上では自由にできるようにした。なお日本ではネットを利用した選挙運動が禁じられている。


 2012年4月11日に行われる総選挙は、全国の国会議員を選ぶ大規模な選挙である。12月には大統領選挙もあるため、SNSを使った選挙運動がどれほどの力を発揮するのか、4月の総選挙で試されることになる。TwitterなどSNSの力で、若い世代が支持する候補へ世代交代となるか、与党が没落するか、これが一番注目されている。


 今までの選挙運動といえば街角演説、駅前での名刺配り、大音量で名前を連呼しながら宣伝カーに乗って街を周回するなどだった。今回の総選挙は「Twitter選挙」とも言われるほど、各党と候補者はTwitterで熱心につぶやいている。SNSに慣れていない候補者のために、TwitterとFacebookを管理してくれるコンサルティング会社まで登場したほどである。選挙に勝つためのSNS活用戦略を練り、どのようにつぶやけば有権者により魅力的に映るのかをアドバイスしてくれるという。


 Twitterでの選挙運動が話題になるのは、今回が初めてではない。2011年の補欠選挙からだった。4月と10月補欠選挙で、20~40代がTwitterを使って無所属と野党の候補を支持。10月の選挙では歴代補欠選挙の中で最も高い投票率45.9%を記録すると同時に、若い世代に支持された候補がほとんど当選した。


 また、「投票認証」が流行った。投票場の前で撮った写真をTwitterに投稿、投票したことを報告し、友人らにも投票するよう呼びかけることである。フォロワーの多い芸能人や著名人が多く参加してファンにも「投票認証」するよう呼びかけたことで一般人の間でもブームになった。

ところが、中央選挙管理委員会は「投票認証」を取り締まった。特定候補に投票しようといったつぶやきと一緒に投票認証したり、フォロワーの何人以上が投票認証すれば自分は○○しますと約束して、特定候補に投票するようそれとなく仕向けるつぶやきは選挙法違反であるとして、人気芸能人が取り調べを受けたりした。


 それがきっかけとなってSNSを利用した選挙運動がどうして違法なのかの議論が始まり、2011年12月には憲法裁判所が、経済的・社会的地位や年齢、性別、地域などに関係なく誰でもアクセスできる公平な選挙運動の手段としてネット選挙運動を合法化すべきと決定し、中央選挙管理委員会がルールを変えた。


 さっそくポータルサイトは4月11日に向け、総選挙特設ページを設けた。選挙管理委員会が提供する候補者の公式プロフィール、投票場案内、選挙関連記事一覧、Twitterをはじめ各種SNS上に書き込まれた選挙関連情報を集めて見やすいように表示。Twitterで多数RT(リツイート)された選挙関連書き込みは別途まとめている。検索結果にTwitter検索も反映し、芸能人のTwitterつぶやきをまとめて初期画面に表示するなど、SNSと連動したサービスにも力を入れる。ポータルサイト最大手のNAVERは、SNS上の書き込みを分析して、話題のキーワードをリアルタイムで表示する。総選挙特設ページはスマートフォンやタブレットPCから見やすいようモバイル用も提供する。










今回の選挙をきっかけに、ポータルサイトはTwitterとFacebookに移行している“情報のたまり場”としての役割を自分たちに戻す絶好のチャンスと見ているようだ。ニュースに対するコメント、問題提起といった意見のやりとりや口コミ・企業宣伝などは、以前はポータルサイトのニュースコメント欄や掲示板へ投稿されていたが、スマートフォンとSNSが登場した2009年11月以降からはTwitterとFacebookに取って代わってしまったからだ。


 SNSを利用した自由な選挙運動の一方で、誹謗中傷や間違った情報がRTにより伝播して事実であるかのように広がってしまうことを懸念する声もある。しかしSNSは匿名で利用できても、自分が誰であるかを明かし、知人や友人とつながっているので、実名制の掲示板よりも誹謗中傷が少ないといわれている。Twitter選挙運動でお金をかけない選挙、有権者の声が大いに反映される選挙に変わることができるか、興味深い。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月23日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120322/1044342/

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