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韓国は教育分野ではタブレットや電子黒板を使ったデジタル教育が盛んなだけに、タブレットの普及率が高いように思われがちだ。だが実際には、スマートフォンは売れてもタブレットはなかなか売れない市場である。
タブレット販売台数は伸びるどころか減少している。韓国IDCの調査によると、韓国内のタブレット販売台数は2010年39万8660台から2011年139万7172台と3倍以上に増えたが、2012年には125万5956台と前年比10%ほど減少している。
世界市場ではタブレットの販売台数が大きく伸びている。2012年は前年の1億4440万台より60%ほど増加した2億2930万台だった。タブレットは特に米国と発展途上国で売れているという。米国では小型TVの代わりにタブレットを利用する家庭が増えていることから「テレビのライバルはタブレット」とまで言われているそうだ。韓国IDCは、世界市場におけるタブレットの販売台数は2017年まで年平均23.2%成長し、スマートフォンの年平均成長率(16.9%)を上回ると展望している。
iPad mini発売以降、タブレットが話題にならず
一方、韓国内を見ると、スマートフォンに比べタブレット新機種発売のニュースがあまりない。そのせいか米アップルの「iPad mini」発売以降、2013年に入ってからはほとんどタブレットが話題になることはなかった。ようやく8月中旬になって、9月に開催するドイツの家電展示会IFAと新学期に向け、タブレットの新機種が発売されるようになった。
韓国のタブレット市場は、サムスン電子とアップルが競争するハイエンド市場、中国メーカーと韓国中小企業メーカーの価格競争が激しいローエンド市場、幼児向け教育端末市場の3つに大きく分けられる。
サムスンとアップルは10.1インチタブレットで競争してきたが、最近はサイズがだんだん小さくなっている。学生の間では10.1インチの大画面タブレットが人気だが、社会人には、スマートフォンとノートパソコンの間を埋めてくれるサイズのタブレットの方が人気である。
韓国では、何でもポケットに入れて、会社に行く時も遊びに行く時もバッグを持たない社会人男性が多い。これも、ジャケットの内ポケットに入れるか、あるいは片手で持ち歩ける7~8インチのタブレットが売れる理由である。
サムスン「GALAXY Tab 3」は少し大きめ
サムスンが韓国で2013年8月22日販売した新しいタブレット「GALAXY Tab 3」は、8インチの画面に厚さ7.4mm、重さ314gとだいぶ軽くなった。サムスンは「片手で握れる大きさと重さで、携帯性を強化したタブレット」だと強調している。7インチではなく8インチにしたのは、直前に発売したスマートフォン「GALAXY Mega」が6.3インチなので、スマートフォンより大きく、手軽に持ち歩けるサイズでありながらもタブレットらしさを出すためではないかとみられる。
サムスンは、2011年にLG電子が発売した幼児向け7インチタブレット「キッズパッド」に似た「GALAXY Tab 3キッズ」も9月に発売する予定だ。LGのキッズパッドはインターネットにつながらず、コンテンツはゲーム機のように専用のメモリーを差し替えて利用するモデル。一方のサムスンGALAXY Tab 3キッズは、無線LAN(Wi-Fi)につながるようにした。
タブレットの新製品競争から一歩引いていたLGも、8インチモデルで再び挑戦する。2013年9月のIFAで8.3インチの「G Pad 8.3」を展示することが決まった。画質にこだわったタブレットで、発売は10月の予定である。
グーグルの第2世代「Nexus 7」がサムスンの脅威に
サムスンのタブレットに劣らない仕様なのに1万円以上安いことから、米グーグルの新しい「Nexus 7」(関連記事)も大きな話題になっている。韓国では8月26日から予約販売を開始した第2世代Nexus 7は、「全てが新しい、生まれ変わった」と宣伝している。
初期モデルより薄くて軽くなっただけでなく、1920×1200ドットの高画質である。画面の密度は323ppi(1インチ当たりの画素数)とタブレットの中では世界最高レベルで、文字がくっきり見える。真っ黒い外観で高級感があるという点も人気の秘訣である。
韓国内での正式発売を待てず、「個人輸入してしまった」と新しいNexus 7を自慢するブログも多かった。カメラが500万画素という性能にとどまるところは残念だが、タブレットでよく利用する動画再生、電子書籍閲覧には価格も性能もちょうどいい。韓国では、初代のNexus 7はいつも品切れで買いたくても買えなかった。第2世代はいつでも買えるようにしてほしいものだ。そうすれば少しはタブレット販売台数が伸びるかもしれない。
Amazon Kindle不在の韓国市場
Nexus 7よりも安くてシンプルなタブレットもある。ネット書店のインターパークは2013年8月16日、中国で製造した7インチの「ビスケットタブ」を発売した。約1万5000円と韓国で販売している7インチタブレットの中では最も安い水準である。インターパークが販売する電子書籍リーダーとして使うのはもちろん、インターネット検索やGoogle Playストアのアプリも利用できるようにした。普段はスマートフォンを使うがたまに動画や電子本をもう少し大きな画面でベッドに寝ころがって観たい、タブレットは子供の絵本アプリを再生するぐらいしか使わない、という人にはちょうどいい。
実は、韓国はまだ米Amazon.comが進出していないので、Amazonのタブレット・電子書籍リーダーの「Kindle」は正式発売していない。Kindleが発売されれば利用できるコンテンツが増えるので、タブレット市場に活気が出るかもしれない。
スマートフォンとの差異化が難しくなったタブレットだが、新機種が続々発売される秋以降は動きがありそうだ。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130830/1103123/