韓国のブジャ(富者)マーケティングはここまでやる [2007年2月27日]



 2月26日の朝鮮日報に面白い記事が載った。「アメリカで84万ウォンのシャネルのクラシックバッグが韓国では221万ウォン、アメリカで32万6千ウォンのラプレリーのクリームは43万ウォン、メーカー側は高い値段をつけるほどよく売れるのでいいじゃないかと反応」といった内容だった。


 そう、韓国では同じ商品でも値段が高ければ高いほどよく売れるというおかしい現象が起きている。デパートで売れ残りの商品の値段に0をもう1つつけたらすぐ売り切れたという嘘のような伝説があるが、確かに最近の家電や携帯電話、パソコンなども「プレミアム」という説明が必ず入り、値段が高くなっている。


「全員が裕福」な状態


 デパートでは上位1%の顧客が70%の売上を占めているそうで、80:20の法則(80%の売り上げは20%の商品が作るという説)よりすごい。この高額消費者層を狙うブジャ(富者、お金持ち)マーケティングが全産業に広がっている。


 正直、周りを見るとみんな職業や所得に関係なく裕福な生活をしている。マスコミではあまり普及しておらずメーカーは悩んでいると報道しているが、40インチ以上のデジタルTVなんて普通に持っているし、携帯電話も日本円で10万円以上する最新スリム&スライド携帯を持っていない人が逆に珍しがられる。私なんて携帯電話を機種変更せず1年半使ったということだけでみんなに「ケチ」と呼ばれている。


 2004年あたりから韓国ではお金持ちになることが生涯の目標のようになってきた。1997年のIMFに対する緊急支援要請に始まった経済危機を乗り越えてから、幸せはお金があってのものという意識が深く芽生え始めたのも影響がある。韓国のお金持ちを分析し、彼らはどうやってお金を儲けたのかを追いかけた本が大ベストセラーになり、不動産バブルの影響から財テク本も飛ぶように売れている。宝くじや不動産、株で一攫千金を手にした成金なんて韓国ではちっとも恥ずかしいことではない。みんなに羨ましがられ、財テク講師として全国各地で引っ張りだこになる。


 韓国のお金持ちの特徴はお金があることを自慢したがるところにある。代々お金持ちだった家は質素な生活をする場合も多いが、自分で稼いだ金を自分で使うのに何が悪いというのが一般的な考えだ。お金は貯めて楽しいものではなく使って楽しいものなので、韓国のお金持ちはどうやれば楽しい人生を送れるかに神経を集中する。自分が好きなものにはお金を惜しまず、景気に関係なくいつも経済的に余裕のある生活をし、デパートや銀行でVIP待遇してくれるのを楽しむ。


 このような人たちを狙ったのがブジャマーケティングだ。


VVIPの顧客リストを企業間で交換も


 VIPより上のVVIP(Very Very Important Person)をターゲットにしていて、特に自動車と家電メーカーは顧客DBを交換したりもしている。サムスン電子の最高級デジタルTVを購入した顧客DBと現代自動車の最高級車を高級した顧客のDBを交換し、販促活動を強化しているそうだ。個人情報保護はどうなる!とつっこまずにはいられないのだが、潜在顧客を探し出しよりよいサービスを提供するためなんだそうだ。


 両社の顧客交流ということでオペラ公演招待、海外旅行招待などをしている。LG電子とGMデウ自動車などは高級ホテルのスイートルーム宿泊客の顧客DBを確保しているそうで、これまた個人情報の売買?と疑いたくなるが、1万人ほどのVVIPを特別管理している。


 このマーケティングはちゃんと効果があり、3500CC以上の大型セダン車の売上が2005年に比べ10%以上増加している。1億円はするロールスロイスも2006年下半期15台以上売れた。ベンツのニューSクラスは発売初日500台契約を突破している。100万円前後する大型プラズマTVの売上も2005年に比べ30%以上増加している。1着140万円の国産ブランドスーツも20%以上売上が伸びた。


 デパートの場合は高級外車での送り迎えはもちろん、個人秘書兼スタイリストの役割をする「パーソナルショッパー」がプライベートルームに似合いそうな服を選んで持ってきてくれ、美術品の貸し出しもしている。銀行はお金持ち同士のお見合いに熱をあげている。ベンツコリアは若いお金持ちは自分より子供によくしてくれるマーケティングに感動するという分析から、小学生向けゴルフ教室を開催し10万円ほどする子供用ゴルフクラブをプレゼントした。


 LG電子では中国でもブランドイメージを高めるためこのようなブジャマーケティングを始めている。最近は弁護士、医者と並び高所得職業として芸能人、プロスポーツ選手になりたがる人が増えている。芸能人になって韓流スターになればヨン様のように年間100億円まではいかなくても、年間1億円は余裕で稼げるからだ。


 内需の拡大が厳しいほど金持ちにターゲットを絞ったマーケティングが流行るのは全世界の共通だけど、韓国は一気に盛り上がってすぐ忘れるという国民性。ブジャマーケティングも過熱しすぎていて怖いところがある。何でもほどほどにしてほしいものだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070226/263221/

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