今年上半期だけで55件2961台摘発
【ソウル発】韓国では数年前から拾った携帯電話に自分の携帯電話の認証番号を認識させ、勝手に新しい携帯のように使う「ブリッジフォン」や、他人の携帯電話の情報を盗んで同じ電話をもう1台作る「双子フォン」などが市場に出回り問題になっている。携帯電話の認証番号などは一般のユーザーには分からない情報なので、修理センターの元社員や代理店社員、携帯電話をよく拾うタクシー運転手などのグループによる犯行が多い。PtoPサイトで携帯電話不法複製プログラムが誰でもダウンロードできるように出回っているのも問題だ。
情報通信部の発表によると、中央電波管理所が今年上半期に摘発した携帯電話不法複製件数は55件2961台で、昨年の年間摘発件数43件858台の3倍以上。2002年に中央電波管理所が司法警察権を与えられて、取り締まりを始めてから最大規模の摘発件数となっている。今年3月から始まった「認証キー制度」により、自分の携帯電話が複製されたとの届け出が急増したのも摘発件数の増加要因となっている。
これは通信キャリアと情報通信部の不法複製防止対策の一環で、すべての携帯電話の新規購入および機種変更では不法複製防止機能(認証キー)が搭載された携帯電話を使うことになった。端末の認証キーとキャリアの基地局内にある暗号アルゴリズムが交信し、認証を得てから通話が始まるため、1秒ほど間をおいてから通話が始まるが、複製された携帯電話では通話できないようにシャットアウトしてくれる。この時ユーザーが何か操作する必要は全くない。
古い端末でも、基地局の内部システムにある通話盗用防止システム(FMS)が不法複製を監視しているので、不法複製を防止できる。だが、新機種の場合は「認証端末」のため複製しても使えないが、古い端末の場合は複製された可能性があるという判断しかできない。キャリアは毎日番号ごとの発信号を集め、その日の夕方にFMSを稼動させ不法複製を判断し、これを1か月単位で加入者に知らせている。判断基準は、すべての発信号に対する位置登録が同時に複数の場所に散らばっていたり、近い位置から2つのESN(端末固有認識番号)が表示される場合などだ。
このような場合、キャリアは中央電波管理所に連絡し、中央電波管理所は警察や検察に捜査を依頼し追跡する。キャリア側は、認証キーが適用された携帯電話は全体の20%に過ぎないので、07年までに95%以上の加入者がサービスを受けられるようシステムを変える方針だ。
ほとんどのタクシー運転手は、乗客が忘れた携帯電話を持ち主に返さず、業者に渡し1台3万-10万ウォン(3000-1万円)をもらっている。最新機種の忘れ物を3万ウォンの手数料で自分の携帯電話にしたというある運転手は、「毎月50万ウォンは稼げる。最新機種を拾った日は携帯電話の情報を入れ替えて友達にプレゼントしたりもする」と自慢げに話しているほどだった。代理店が買ってくれるという理由で携帯電話を専門的に盗むグループも増えている。
自分の携帯電話の情報が盗まれ高額の請求書が届いたり、紛失した携帯電話が戻ってきたという話が美談として新聞に紹介されるほど、一般ユーザーの被害も広がるばかり。不法複製やブリッジフォンを利用すると、電波法により3年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金と厳しい処罰を受けるが、情報通信部とキャリアが取り締まりをどんなに強化しても「ブリッジフォン」は一向になくならない。中央電波管理所の取り締まり担当者の人員不足から全国をカバーしきれないためだ。
オークションサイトには毎日数十件の「ブリッジフォン売ります」が登場し、1度に10台以上のブリッジフォンを販売している人もいる。ソウルの電気街「竜山」の携帯電話通りには「ブリッジフォン・双子フォン厳禁」の張り紙が張ってあるが、ほとんどの代理店は、「ブリッジフォンありますか」と聞くとどこかに電話して機種を調べてくれる。取り締まりはいたちごっこに過ぎないわけだ。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)