韓国キャリア、LTE周波数競争の一巡後にモバイルテレビ競争始まる [2013年11月2日]

.
この2013年秋、韓国のスマートフォン市場では、端末は5型以上の大画面で競争、キャリア(通信事業者)はLTEでモバイルテレビを安く利用するサービスで競争を繰り広げている。

 10月まで韓国大手キャリア3社は「黄金周波数でよくつながるLTE-A」と、周波数を全面に出すCMをしていた。「黄金周波数」とは日本で言うプラチナバンド、800~900MHzの周波数帯のことである(詳しくは関連記事参照)。

 日本ではどうなるか分からないが、韓国では周波数だけでは一般消費者にLTE通信の速さが伝わらなかったようだ。今では高画質モバイルテレビや音楽サービスに競争の重点が移っている。スマートフォンからLTEで途切れることなくハイビジョンクラスの高画質で野球中継やDVD発売前の映画を視聴し、「5.1chサラウンド」で新曲もどこより早く聴けるといったことをアピールしているのだ。

スマホ端末は大画面化

 この秋人気のスマートフォンも、サムスン電子のGALAXY Note 3(5.7型)、LG電子のG2(5.2型)、パンテックのシークレットノート(5.9型)のように、5型以上ばかりである。移動中に1人でテレビや映像コンテンツを楽しむには小さすぎずちょうどいいサイズだ。

 キャリア3社のモバイルテレビやスポーツ中継はLTE加入者でないと利用できないようになっている。KT、SKテレコム、LGU+の3社は「広帯域LTE」という、さらに速度が速くなったLTEサービスを提供している。広帯域LTEサービスでは、LTEは下り最大100Mbps、LTE-Aは下り最大150Mbpsである。LTE-Aの実際の速度はソウル市内中心部で70Mbps前後、人が多い地下鉄の中では20Mbps前後だった。

各社がLTEとコンテンツのセット割引を提供

 KTは月額約550円の音楽ストリーミングサービスをLTE加入者には1年間無料で提供している。また、月額約450円で64チャンネルと5万5000本のVOD(ビデオ・オン・デマンド)がそろうモバイルテレビサービスと、映像コンテンツだけを利用できるLTEデータ通信6GB分がセットになったパック料金制を導入した。1980~2000年代のテレビドラマを10分以内に編集して提供する「思い出のドラマ」というコーナーが目玉である。

 SKテレコムはLTEデータ通信料とモバイルテレビ利用料を合わせて月額約800円のパック料金プランを始めた。70チャンネルあるモバイルテレビで、リアルタイムの野球中継やドラマ、バラエティー、ニュース番組などを視聴できる。ハイビジョン画質の映画や地上波テレビの人気ドラマやバラエティー番組の再放送VODも3万本以上あり、追加料金なしで利用できる。SKテレコムはサムスンと共同販促も実施していて、GALAXY Note 3を購入すると、パック料金が2カ月間無料になる。

 SKテレコムは、キャリア3社の中で唯一米メジャーリーグの試合を中継している。韓国人選手が登場する試合の日になるとLTEとモバイルテレビの加入者が急増するという。モバイルテレビで3Gより料金の高いLTEに加入者をシフトさせる戦略は有効だったようだ。パック料金に加入しなくても、SKテレコムの利用料金に応じて貯まるポイントでコンテンツ料金を決済できるようにもしている。さらに、月額約5000円以上のLTE料金プランに加入した加入者は、毎月約1800円分映像コンテンツを利用できるようにするキャッシュバック制度も始めた。

モバイルテレビを見ながらつぶやく「マルチタスク」も

 LGU+は月約500円で40チャンネルと映画VOD、ドラマ再放送VODを利用できるモバイルテレビ「U+HDTV」に力を入れている。


「LGU+のモバイルテレビ「U+HDTV」

 

LTE加入者だけが利用できる高画質モバイルテレビ(モバイルIPTV)で、リアルタイム放送40チャンネルと地上波テレビ番組の再放送VODがそろっている

 スマートフォンの画面を4分割して4チャンネルを同時に視聴できるマルチチャンネルが目玉である。モバイルテレビ視聴中は電話の着信を拒否する機能もあるので、「ドラマの一番いい場面で、突然の電話に邪魔される」という事態を防止できる。

 モバイルテレビを観ながらSNSでつぶやいたり、ネット検索したりという「マルチタスク」も実現している。韓国ではモバイルテレビや動画を観ながら番組内容をネットで調べたり、出演者が身に着けている洋服を検索して購入したりと、テレビをより楽しむために「マルチタスク」する人が多い。マルチタスクを楽にできるかどうかも競争のポイントになっている。

モバイルテレビを見すぎると料金はどうなる?

 SKテレコムの調べによると、LTEよりさらにネットワークが速いLTE-Aユーザーの方が、スポーツ中継やドラマといった映像コンテンツの消費が多かった。2013年7月の場合、LTE加入者のデータ通信量が月間3.2GBなのに対し、LTE-A加入者は4.1GBで、約1GBほど多かった。

 しかし気になるのはデータ通信料金である。3Gはデータ通信使い放題の料金制度があるが、LTEは従量制。野球中継やドラマを毎日観ていると、とんでもない料金になってしまう可能性がある。

 そこで、キャリア3社は映像コンテンツを利用する時だけ使えるLTE定額料金を始めている。1日2GBずつ月最大62GB分の映像コンテンツを利用できる特別なLTEデータ通信料金をキャリア各社が月額700~900円で提供している。LGU+は、24時間約200円でLTEを使い放題という料金プランも始めた。週末や特別に観たいスポーツ中継がある日だけ加入すれば、従量料金を気にぜず視聴できるというわけだ。

 日本でも地下鉄構内や走行中にLTEを利用できるようになり、モバイルテレビを利用するユーザーが増えているというニュースを見た。日韓のスマートフォンユーザーが欲しがるコンテンツは似ているのかもしれない。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131102/1110843/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *