韓国ではスマートフォンユーザーが人口の半分に近づく中、ITカテゴリーニュースのほとんどがスマートフォンで埋め尽くされている。今週は、2月27日からスペインのバルセロナで開催されるMWC2012を前に、サムスンとLGの新しいスマートフォンが公開され話題になった。
LGは厚さ9.6mm、重さ148gと世界で最も薄いという3Dスマートフォン「Optimus 3D Cube」をMWC2012で初公開し、ギネスブックにも登場するとしている。スマートフォン上のアイコンを自由に変えられる機能も付く。アイコンを変え、待ち受け画面を編集する機能がそんなに大事なのかな? と思ったら、20代のスマートフォンユーザーの間ではものすごく重要なポイントだそう。スマートフォンのアイコンや待ち受け画面、チャット用のアラームなどをアプリストアでダウンロードして編集するのが当たり前で、いじらず出荷状態のまま使うと、「おばあちゃんスマホ」とからかわれるのだとか。
サムスンは「Galaxy Ace2」と「Galaxy mini2」を公開した。デザインとグリップ感はそのまま生かし、カメラとディスプレイの性能をアップグレードした。Galaxyからは、サムスンとAndroid両方のアプリケーションストアを利用できる。サムスンは「合理的な性能と価格のGalaxyシリーズを発売して、より多くの人にスマートライフを楽しんでもらえるようにする」ために、「普及型スマートフォン」にも力を入れていくという。
端末のニュースだけでなく、スマートフォンユーザーの実態調査も毎日のように発表されている。
オンラインマーケティングリサーチ会社のエムブレインがスマートフォンユーザー1838人を対象に調査したところ、スマートフォンの1日平均利用時間は4時間、主に訪問するポータルサイトはNAVERが97.4%、DAUMが77.9%、NATEが60.7%、Googleが53.2%の順だった。Googleはパソコンからの利用率は数%程度なのに比べ、デフォルトでGoogle検索が設定されていることからスマートフォンからの利用者が増えたとみられる。ポータルサイトのNATEは、誰でも自由に書き込めるネット掲示板が有名で、20代が好んで利用し、Googleは40代に人気があった。また8割以上がスマートフォンからショッピングをしたことがあると答え、韓国でもいよいよモバイルショッピングが市民権を得たと調査は分析する。
地上波放送のSBS(ソウル放送)は、2月19日、幼児のスマートフォン利用実態について放映した。多くのお母さんたちが、「赤ちゃんが泣きやまない、ぐずる、そういうときにスマートフォンを与えると泣きやむ」という理由で、スマートフォンで遊ぶようにさせているという。スマートフォンからアニメやゲームのアプリを利用させると赤ちゃんが夢中になって、泣きやむというのだ。赤ちゃんをベビーカーに乗せてスマートフォンを見せてあげられるホルダーまで登場し、ヒット商品になっている。
番組で5歳未満の幼児16人にスマートフォンと人形、おもちゃなどから一つ好きなものを選ばせたところ、10人がスマートフォンを選択していた。
この番組が、脳治療専門家に依頼して、スマートフォンに夢中になっている幼児の脳を分析してもらったところ、右脳の活動が他の幼児よりも減っていることが分かったという。「幼児のときにスマートフォンで脳を刺激しすぎると、右脳の機能が衰える。落ち着かない、過剰に騒ぐ子どもによくある現象。幼児のときはスマートフォンより家族みんなで遊ぶのが一番いい」と警告したほどだ。
もちろん、このような可能性を主張する人たちがいると番組が示しただけで、今後さらなる研究が必要だろう。ただ、幼児への影響に対する心配が表面化するほど、韓国では赤ちゃんや幼児のスマートフォン利用が問題になっている。何かと便利なスマートフォンだが、子どものおもちゃとして長時間利用させてはいけない理由が「右脳」にあるかもしれないとは。だとすれば、タブレットやパソコンにも該当するのではないか。
韓国の教育科学部(日本の文部科学省にあたる省庁)は、青少年のいじめや暴力問題を予防するため、オンラインゲームの利用時間を制限するといった規制をしようとしている。オンラインゲームのしすぎで(関連記事「スマートフォンでもゲーム漬け」韓国の深刻」)ゲームの世界と現実を区別できず、青少年が暴力的になっているというのが教育科学部の考えである。しかし幼児の頃からスマートフォンでゲームをさせていれば、中高校生になっても遊びといえばオンラインゲームしか思い浮かばないのが当然だろう。オンラインゲームを規制したところでいじめがなくなるかは疑問だが、これを機会に「右脳に影響を与えないゲームアプリ」が登場しそうな気がする。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年2月24日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120223/1041924/