韓国版モバイルWiMax、ユーザー急増の理由はやっぱりあれ

 この5月に韓国を訪問する人にぜひ利用してほしい無料サービスがある。韓国KTが5月1日から韓国仁川国際空港より入国する外国人を対象に無料で貸し出しているWibro(モバイルWiMax)が使えるUSBモデムだ。


 ノートパソコンに差し込んで使う外付けモデムで、ノートパソコンを持参していけばソウル市内ほぼ全域でブロードバンドをタダで利用できる。USBモデムのレンタル料はもちろん、通信料も込みで全て5月の1カ月間は無料だ。仁川空港の1階KTブースで貸し出し中。保証金として50ドル預かるが、端末を返却すると保証金は全額返してもらえる。6月からは有料化される予定で外国人観光客向けに1日5000ウォン(約500円)で貸し出すというが、それでもモデムはもちろんノートパソコンまで含めて貸し出した上にブロードバンドも使い放題でこの値段はお得だろう。旅行中でもインターネットが使えると色々検索できるし何かと便利なのは間違いない。


 Wibroは2006年6月に世界で初めて韓国が商用化したモバイルWiMaxのサービスである。2008年4月末時点ではまだソウルと首都圏の一部でしか利用できないため通信エリアは狭いが、地下鉄の中やバスで移動しながらも途切れることなくすいすいインターネットが利用できるのが特徴だ。実測で平均下り3Mbps、上り1.2Mbpsなので携帯電話からアクセスするよりも断然速い。


 モバイルWiMaxはこれから日本やアメリカでもサービスが始まるため、世界中から注目されているサービスである。韓国でも順調に伸びていたわけではない。商用化したのはいいが、加入者が伸びるわけでもなくサービスエリアが拡大されるわけでもなく、なんとなくほったらかし状態だったのだが、2007年6月頃から急激に加入者が増加している。2007年4月より通信エリアがソウル全域に広がったことも影響してはいるが、何よりもKTが太っ腹のプロモーション料金を打ち出したことにあるとみえる。


 その内容は、1万6000円相当のUSBモデムを無料贈呈、加入料免除、利用料は1~3カ月無料というもの。しかも無料お試し期間が終わった後も交渉次第で無料期間を延長してくれたというBlogの書き込みが絶えず、無料のうちに加入してしまえという雰囲気になってきた。5月末までに加入した人には、インターネット使い放題の月1万9800ウォン(約2000円)のコースを申し込むと、KTの無線LANをおまけにつけてくれるので、Wibroが使えない地域では無線LANでアクセスできる。1カ月に1000MBまで利用できる従量制のコースは月1万ウォン(約1050円)で、超過分はMB当たり25ウォンだ。


 商用化から2年近く経った2008年3月末時点での加入者はまだ14万5千人に過ぎないが、2008年の加入者目標は40万人だ。その後はもっと加入者数が増えて、これからは携帯電話のパケット通信や3Gより値段も安くて速度も速いWibroがインターネットの中心になるだろうといわれている。サービスエリアが広がれば、家の中にいても外にいてもWibro一つで途切れずインターネットが使えるので、家ではxDSL、外では無線LANに携帯電話と通信費を何重に払わなくても済む。それにWibroを利用してモバイルVoIPを利用できるとなれば、携帯電話もいらなくなる。モバイルVoIPについては携帯電話キャリアの反発も大きく、国としても認可する予定は当分ないのだが、技術的には今すぐにだってできてしまう。


 KTは2008年にWibroに約120億円を追加投資する計画だという。速度を2倍速くしたWibro Wave2も開発は終わり現場テスト段階なので、首都圏全域をフルカバーできるようサービスエリアの拡大に集中する。日本やアメリカでも始まるモバイルWiMaxサービスを韓国で一足先に体験できるチャンスを逃すのは惜しい。季節的にも5月はイベントも多く清々しい気候から観光しやすい時期でもあるのでぜひ韓国ソウルを訪問してもらいたい。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年5月14日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080507/1001984/

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