韓国電機大手のサムスンとLG、ハードの次はソフト人材確保で激しい競争 [2013年7月26日]

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韓国では、ディスプレイの大きさ、3Dテレビの技術、冷蔵庫の容量の大きさ、スマートフォンのデザインなどあらゆる分野で、サムスン電子とLG電子が競争し続けている。今度はソフトウエア開発人材確保を巡り、新たな競争が激化している。

サムスン電子は「分離融合」型のソフト技術者育てる

 一歩先にソフトウエア開発人材確保に乗り出したのはサムスンである。これからもハードウエアを売り続けるためにはソフトも一緒に開発しなければならないとして、ソフト人材教育に力を入れ始めた。

 2013年からは文系人材を採用してソフトウエア開発を任せると発表した。まさに「文理融合」、文系と工学系の両方の考え方ができる人に育てるということだ。従来のサムスンの新入社員は8割が理系・工学系だった。

 文系出身でソフトウエア開発職になるためには、採用試験に合格して内定をもらい、その後「サムスン・コンバージェンス・ソフトウエア・アカデミー」で6カ月間960時間のソフトウエア開発教育を履修しなければならない。修了しなければ採用はなかったことになる。まずは今年200人を採用し、徐々に拡大していくとしている。2013年度の新入社員は全9000人を採用する予定である。

技術そのものに加えて「感性」を重視

 実験的ともいえる「文系人材をソフト開発者に育てる」という採用方式は、未来を考えてのことである。サムスンは、これからは技術そのものの競争よりも、人間の感性や感情に訴えられるように技術・サービスを組み合わせられる力、「融合」力の競争になると見ている。故スティーブ・ジョブズ氏のような、哲学を専攻した開発者、人間と文化を理解できる文理融合人材こそが、未来をリードすると強調する。

 サムスンは今年から5年間、小中高校生4万人、大学生1万人を募集してソフト開発教育を実施する計画も持っている。大学生の場合は、コンピュータサイエンスなど工学専攻者と、文系学生などコンピュータ非専攻者に分けて教育を行う。学生の頃からサムスン向けの人材になるよう教育して、その後に採用しようという考えだ。

LG電子は「コーディング専門家認証」制度

 LG電子もソフトウエア人材を大事にしている。2012年からは社員を対象にした「ソフトウエアコーディング専門家認証」を設けて、プログラミング言語でソースコードを作成する能力の優れた社員を専門家として認証している。

 この専門家に選ばれると、社内講師となってセミナーをするなど他の社員のお手本として活躍することになる。インセンティブ(報奨金)がもらえるのはもちろん、海外カンファレンスへの参加や、研究委員として昇格できるチャンスも与えられる。

長時間労働・低賃金から脱却できるか?

 韓国政府も2013年末までにソフトウエアセキュリティ専門家200人を養成する計画を発表した。相次ぐサイバー攻撃・ハッキング事件に歯止めをかけるため、政府Webサイトのセキュリティ脆弱性を把握し、防御できる人材を育てるのが目的だ。

 ソフトウエアセキュリティ専門家は、6年以上の開発経験と、3年以上のセキュリティ診断経験があり、韓国インターネット振興院の専門家養成課程を履修する。要件を満たすと、安全行政部(省)から資格証をもらえる。

 韓国では長時間労働、低賃金で、定年退職も早いのがソフト開発者のよくある姿だった。ところが最近は大手企業がこぞって「これからはソフトウエアが競争力を左右する」として、開発者を大事にする意向をアピールしている。ソフトウエア開発人材確保競争が開発者の待遇改善につながるとことを期待したい。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130725/1098984/

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