韓国20~30代、パソコンとモバイルのネット利用時間が逆転

 韓国インターネット振興院が毎年発表する「無線インターネット利用実態調査」によると、2011年9月時点で12~59歳の韓国のモバイルインターネット利用率は前年比で5.9ポイント増加し、65.2%となった。


 年齢別には20代の利用が94.1%と最も多く、その次が12~19歳の85.2%、30代の78.2%、40代の45.0%と続く。


 スマートフォンの利用率は2.6%(2009年)から36.6%と約15倍に増えている。タブレットPC(韓国では「スマートパッド」という)の利用者は2010年の1.2%から3.1%に伸びた。


 モバイルインターネットにアクセスしている端末はスマートフォンが60.1%と最も多く、これも2010年(13.8%)と比べ4倍以上伸びている。利用するモバイルインターネットの種類はWi-Fiが69.2%と最も多かった。韓国は2010年から地下鉄駅構内はもちろん、地下鉄の車両の中、バスの中、図書館、いたるところでWi-Fiが使える。フリースポットも多い。そのため3Gよりは料金の負担なく使えるWi-Fiの利用が集中している。





韓国は2010年からWi-Fiスポットが増えていて、全国のほぼどこでも、地下鉄の車両の中でも、バスの中でもWi-Fiが使える。フリースポットも多いため、3GよりWi-Fiを利用する人の方が多い


モバイルインターネットから利用するコンテンツは情報検索(71.4%)、音楽(70.1%)、ニュース(57.6%)、メッセンジャー(56.1%)、SNS(45.0%)の順だった。

 またモバイルインターネットユーザーの51.6%が「モバイルインターネットを使うようになって有線インターネット利用時間が減少した」と答えている。また36.4%は「有線インターネットが使える環境でもあえてモバイルインターネットを使う」と答え、「インターネット」=「有線ブロードバンドとパソコン」だった韓国のネット環境が、急速にスマートフォンとWi-Fi中心に変わっていることを確認できた。


 今回の調査の中で浮き彫りになったのは、「スマートデジタルデバイド」である。


 大卒以上のモバイルインターネット利用率は69.8%、高卒以下の利用率は40.3%と、その差は広がっている。韓国はデジタルデバイド、所得による情報格差を解消するため、生活保護を受けている低所得層には国が無料でパソコンを支給し、KTが無料でインターネット接続を提供するといった支援を行っていた。スマートフォンの時代でもそのような支援をするのか、それとも別のアイデアがあるのか、対策を考えるべき時期を迎えている。



 一方、ポータルサイトのDAUMとLG経済研究院が共同で、2010年8月から2011年9月までモバイルWebとPC Webの利用動向を比較した結果も発表された。


 これによると、20~30代の場合、インターネットに接続する際に携帯やスマートフォンを使う「モバイルWeb」が70.6%、パソコン経由でWebに接続する「PC Web」が57.5%とモバイル機器からネットにアクセスする方が多くなっていた。PC Webは主に仕事用として昼に利用し、モバイルWebは私用に移動中や夜間に利用していた。


 モバイルから利用するコンテンツとしては、交通情報、乗り換え案内、バス到着時間、道路情報、出前、グルメなど位置情報基盤検索やリアルタイム情報検索を利用する人が多い。移動中や暇つぶしに利用できるエンタメ情報、ソーシャルコマースやオーディション番組の情報も頻繁に検索されていた。


 またページビューを比較してみたところ、女性はマンガ、音楽、映画、料理、女性用掲示板のコンテンツをよく利用し、男性はニュース、スポーツ、掲示板のコンテンツをよく利用することが分かった。


 今後は20~30代だけでなく、中年層においても有線インターネットよりモバイルインターネットの利用者が増えると見込まれていることから、KTは40代以上主婦向けサービスとして「スマートホームパッド」を発売した。


 サムスンの8.9型Galaxy Tab端末に、主婦向けアプリとしてテレビ電話、位置情報を利用した地域情報案内、IPTV、音楽鑑賞、ニュース、クーポン、ホームセキュリティ、スマートホームドクター(ヘルスケア)などをインストールしている。KTのアプリケーションストアを利用すれば他のアプリもインストールして使える。タブレットには地上波DMB(ワンセグ)受信機能が付くので、テレビも観られる。


 スマートホームパッドは設定をいじる必要もなく、顔写真を登録すると性別と年齢を判断しておすすめの音楽と動画を推薦してくれる機能が付くのが特徴である。若い人のように自分もタブレットPCを使ってみたいけど、使い方が難しそうだからとあきらめていた主婦をターゲットに、誰に教えてもらわなくても使える端末とアプリであることをアピールしている。


 スマートホームパッドの利用料金はテレビ電話・音声通話100分、Wi-Fi、IPTV、音楽、専用アプリ含めて2年間契約すると端末価格を含めて1カ月3万ウォン(約2100円)。KTは幼児向け、シニア向けのタブレットとアプリ、Wi-Fiをセットにしたサービスも企画しているそうで、国民がパソコンよりスマートデバイスとモバイルインターネットを使う日も遠くないようだ。

趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2012年1月17日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120105/1040084/

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