企業のR&D投資は減少
【ソウル発】三星SDSがこのほどまとめた、「国内ITサービス市場動向及び展望」報告書によると、2005年の韓国IT産業の市場規模は04年に比べて7.4%成長し、13兆ウォン(約1兆3000億円)にのぼると予測されている。また、長期的には04年から07年まで年平均6.6%の成長が見込まれている。
同レポートによれば、特に公共、金融分野が10%を超える高い成長率を見せている。他のシンクタンクの展望も同じような数字で、製造・サービス分野は比較的小幅な成長にとどまる見込みだ。公共分野では、①IT839、②ニューディール政策、③省庁別業務高度化──などのためのIT需要が拡大し、金融分野では新規事業創出のための投資が活発になると予想されている。
また、ITサービスの種類別では、システムインテグレーションとITアウトソーシング市場は拡大する一方、コンサルティング市場は減少する見通しだ。ERP(統合基幹業務システム)など基幹システム構築作業のためのIT投資拡大の動きと、大手に続き中堅企業でも戦略経営管理のためのIT投資が増えている点に注目すべきである。
市場規模は成長を続ける見込みだが、企業の研究開発(R&D)投資には問題があるとの指摘が多い。今年第3四半期(7-9月期)のIT企業の純利益は前年同期比70.6%も増え、史上最大の利益を記録している。主なIT企業のR&D投資も今年9月まで合計5兆4166億ウォン、前年同期比27%ほど増加しているが、売上高に対するR&D投資の割合は5.6%から5.5%に減っている。
三星電子は9月まで3兆2918億ウォンをR&D投資として使っているが、売上高の7.4%に過ぎず、前年同期比で約1%減っている。三星電子は半導体事業進出30周年を記念し、2010年まで半導体の新規ラインに25兆ウォンを投資し、累積売上200兆ウォン、新規雇用1万人を達成すると発表した。07年までモバイルCPUおよびメモリ、ディスプレイ駆動チップ、CMOSイメージセンサー、チップカードICなどモバイル分野の5つの中心となる半導体製品でも世界1位を達成したいと強調している。
一方、三星電子の9月末現在の現金資産保有額は6兆3000億ウォン。昨年より32.5%増え、株の買入れと配当にはR&D投資費用の1.6倍を超える5兆4300億ウォンが使われる予定だ。
先端技術で勝負するべきIT企業が、技術開発より現金資産確保と株式買入れにより積極的なのは、社会全般の不況が長引くかもしれないとの懸念から。こうした動きに対して、韓国の産業を牽引するIT企業が未来に対する投資を惜しみすぎるのは深刻な問題になりかねないため、政府主導のR&D事業も次々発表されている。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)
[BCN This Week 2004年12月13日 vol.1068 掲載] Link