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韓国では「LTE」よりも2倍速いモバイル通信である「LTE-A」対応のスマートフォンが増えている。サムスン電子の「GALAXY S4」に続いて、LG電子も「G2」という名前のスマートフォンを公開した(関連記事)。パンテックも「VEGA LTE-A」を発売した。
LGはG2のプレス向け製品公開イベントを2013年8月7日米ニューヨークで開催した。サムスンはいつも新しいスマートフォンの公開イベントを欧米で行っている。LGもスマートフォンの激戦区である米国でスマートフォン公開イベントを開催することで、世界市場を攻めるという意思をはっきりと表明した。
それほどG2はLGの野心作、自信作ということだ。G2は8月8日から韓国で発売し、その後世界130キャリアから販売する計画である。
5.2型フルHDの画質、24ビット192KHzの高音質
LGは記者会見で「G2は史上最高の自信作」であると強調した。
5.2インチのフルHDのIPSディスプレイにLTE-A、2.26GHzのクアルコム製スナップドラゴン800プロセッサー、外側1300万画素カメラには手振れ補正機能も搭載した。内側カメラは210万画素。カメラのレンズは指で触っても指紋が付きにくくした。
何といってもG2の自慢は音質にある。24ビット192KHzのハイファイサウンドで、スタジオ録音の原音を再生できるレベルだという。CD(16ビット、44.1KHz)の音質をはるかに超えている。もちろん通話品質も良くなった。バンドルイヤホンも2万円はする高級イヤホンと差がない着用感と音質で差異化した。
ユーザーインタフェースに一工夫
G2のキャッチフレーズは「Learning From You」。顧客こそがイノベーションの源で、ユーザーの意見を最大限に反映したスマホだという。「G2を使うことでユーザーは日常の中で、感動と楽しさを味わえる」との説明だ。ただし、米アップルのiPhone 5や、サムスンのGALAXY S4もCMで確か同じことを言っていたような……。
それはともかく、G2の面白いのは、電源ボタンとボリューム調整ボタンが全て端末の後面にあることだ。これはスマートフォンユーザーの行動を観察した結果生まれた変化で、端末を握りしめたまま楽に人差し指でタッチできるようにするためだという。端末の前面にあったボタンはディスプレイに電源が入ると使えるソフトキーに変えた。
ディスプレイは5.2インチと大きいが、横幅は2.7インチなので、女性でも握りやすくなった。5インチ以上のスマートフォンだと大きすぎてうまく握れず、通話する度に手が疲れたが、これなら大丈夫だ。
「ノックオン」「電池長持ち」など新機能多数
もう1つ、「ノックオン機能」も面白い。iPhoneなら端末前面にあるボタンを押してディスプレイの電源を入れるが、G2はディスプレイの上を2回ノックして電源を入れたり消したりする。
パソコンのログオン機能のように、1つのスマートフォンで複数のユーザー向けの画面を設定できるのも特徴だ。子供がスマートフォンで遊ぶ時はカメラと写真アルバム、学習アプリだけ使えるようにできる。安心して親のスマートフォンを子供のおもちゃとして使わせることができる。
スマートフォンのヘビーユーザーにとって嬉しいのは、何といってもバッテリー長持ち機能だろう。G2はGRAM(Graphic RAM)を適用して、同じ画面をずっと見ている時はCPUを休ませる。この手法で使用可能時間を10%以上伸ばした。バッテリーは「Stepped Battery」というもので、従来のバッテリーに小さいバッテリーをくっつけている。バッテリーとカバーの間の隙間を埋める形で小さいバッテリーをもう1個増やし、さらに使用時間を伸ばしている。
iPhone 5とGALAXY S4の牙城を崩せるか?
G2発売前から、韓国のスマートフォンユーザーの間で「LGがすごいスマホを発売するらしい」と噂が絶えなかった。韓国のスマートフォン市場はiPhone 5とGALAXY S4ががっちり握っているので、もっと他に選択肢が欲しいと願うユーザーが多かった。
しかし、実際にG2が発表発表されると、「G2の性能はすごいし、斬新な機能が盛りだくさんなので使ってみたい。けれど今使っているスマホも悪くないし、LTE-Aにしなくてもインターネット速度が遅いと感じないし、悩ましい」という意見が多い。
G2の端末価格は9万円ほどもする。キャリアから乗り換え補助金が出たとしても、6~7万円は払わないと入手できない。スマートフォン新機種の性能が良すぎて、逆にそこまでいらないから端末価格を安くしてほしいという意見も増えている。
LGは、G2を世界市場で1000万台以上販売し、フィーチャーフォン時代の栄光を取り戻すのが目標だ。サムスン、アップルに続く世界3位のスマートフォンメーカーの地位を固めることを目指している。G2の投入でその目標に近づけるだろうか。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130809/1101163/