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韓国LG Chem(LG化学)の電池子会社であるLG Energy Solution(LGエナジーソリューション、以下LGエナジー)が2022年1月27日、韓国取引所に上場した。同社は公募価格だけでも12兆7500億ウォン(約1兆2000億円)という巨費を調達。電気自動車(EV)用バッテリーの世界シェアで首位の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)を追い越そうと意気込む。LGエナジーは調達した資金を主に北米における生産設備の拡大に投じる。韓国の複数メディアは、同社とホンダが北米に共同出資会社設立を検討していると報じている。
韓国では22年1月に入ってから、LGエナジーの新規上場の話題でもちきりだった。韓国内では、LGエナジー株の値上がりは間違いないと見て、借金をしてまで申し込む個人投資家が殺到。LGエナジー株の個人向け申込日だった22年1月18~19日の2日間、韓国では金融機関の個人向けの貸付金額がなんと7兆ウォン(約6700億円)を超えた。
22年1月11〜12日には、機関投資家からの需要を積み上げる「ブックビルディング(需要申告)」が実施され、LGエナジー株の公募価格が1株30万ウォン(約2万9000円)に決まった。公募価格で計算するだけでLGエナジーは上場によって、12兆7500億ウォン(約1兆2000億円)の資金を調達する計算だ。
22年1月27日の上場初日の終値は50万5000ウォン(約4万8000円)と公募価格の倍近くとなり、韓国取引所の時価総額において韓国Samsung Electronics(サムスン電子)に次ぐ2位にいきなり浮上した。
上場で得た資金によって北米のバッテリー生産量を約3倍に拡大
LGエナジーは新規株式公開(IPO)で集めた資金について、約5割を北米地域におけるバッテリー生産設備の拡大に投じる計画だ。残りの4割を韓国と欧州、中国の生産設備拡大に、1割を次世代バッテリー研究と安全性強化のために投資する。
上場直前の22年1月26日には、同社とGMの共同出資会社であるUltium Cells LLC(以下、Ultium Cells)が、米ミシガン州に北米で3番目のEV向けバッテリー工場を新たに建設することを発表した。26億ドル(約2400億円)を投資し、25年上半期に量産開始。最終的には年間50GWhまでバッテリー生産量を拡大する計画だ。
Ultium Cellsの工場は、第1工場に当たる米オハイオ州の生産設備が22年下半期に稼働開始予定だ。年間バッテリー生産量は35GWh超となる見込みである。米テネシー州の第2工場は23年下半期に稼働開始予定。こちらのバッテリー生産量も年間35GWh超を見込む。
LGエナジーはUlitium Cells以外にも、北米バッテリー生産拠点の拡大を急ぐ。同社は米ミシガン州ホーランドに12年から独自運営する工場を持つ(年間40GWh)。さらに24年には、欧州の自動車メーカーであるStellantis(ステランティス、旧FCA)と同社の共同出資会社が、カナダ・オンタリオ州に建設するバッテリー工場が稼働を始める予定だ。この拠点のバッテリー生産量は年間40GWhとなる。
LGエナジーは、自動車メーカーとの共同出資会社を中心にバッテリー生産量をさらに拡大し、25年には現在の約3倍にあたる年間430GWh超(北米で年200GWh、欧州で年100GWh、中国で年110GWhなど)まで生産能力を広げる計画だ。
韓国の複数メディアは、LGエナジーとホンダが、バッテリー生産のための共同出資会社設立を検討していると報じた。報道によると両社は年40GWh規模のバッテリー生産拠点を米国に設置する計画という。
ホンダとの共同出資会社が正式に決まれば、LGエナジーの北米におけるバッテリー生産能力はさらに拡大する。韓国メディアによると、ホンダは北米においてGMと協力関係にあるため、GMと共同出資会社を設立したLGエナジーに近づいたのではないかと分析している。
実際、22年1月10日に実施されたLGエナジーの記者懇談会で、同社副会長でCEOのKwon Young-soo氏は、「GMと韓国・現代自動車(Hyundai Motor)、ステランティスとバッテリーの共同出資会社を推進中で、今は明かせないが他の企業とも合弁契約を結ぶ予定」と打ち明けた。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
(NIKKEI TECH)
2022. 1.
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