第11回:高句麗昔話「バボオンダルとピョンガン姫」


予習してさらにハマる太王四神記

【第十一回】

高句麗昔話「バボオンダルとピョンガン姫」




韓国人なら誰もが知っている物語



韓国人なら誰でも知っている昔話の「バボ(バカ)オンダルとピョンガン姫」。逆玉の輿とでも言うべきストーリーですが、実在した人物の悲しいラブストーリーなのです。いろんな小説やミュージカルのモチーフにもなっているこの物語は、『三国史記』に記録されています。それではご紹介しましょう。



バボオンダルとピョンガン姫



高句麗の25代目王様、ピョンガン王(平岡王または平原王、在位559~590)時代、顔が険悪でこっけいだけど、心は優しい温達(オンダル)という男がいました。温達の家はとても貧しく、いつも食べ物を乞い母親を養っていました。ボロボロの服と履き物で市場を行き交っていたため、人々は彼を「バボ温達(バカな温達)」と呼んでいました。


ピョンガン王には泣き虫の姫がいました。王様は姫が泣くたびに、「いつも泣いてばかりでは、貴族の嫁にはなれない。今度泣いたら、バボ温達と結婚させるぞ!」と脅かしました。


姫が16歳になり、王様は貴族の高氏の家に嫁がせようとしました。すると姫は、「大王は、いつも私に温達の妻になるだろうとおっしゃいました。王様はウソや冗談を言わないものです。私はほかの人とは結婚できません」と言いました。怒った王様は「私の教えに従わないなら、私の娘にはなれない。君の勝手にしなさい」と言いました。


姫は金の腕輪を数十個持って宮廷をあとにし、ひとりで歩き始めました。道ですれ違う人々に温達の家の場所を尋ねて、たどり着きました。


家には目が不自由な年老いた温達の母がひとりでいました。姫はお辞儀をして、温達がいる場所を尋ねました。温達の母は「私の息子は貧しいので、高貴な方とお会いできるような者ではありません。今あなたからは格別な香りがし、手を触ると柔らかく、まるでふわふわの綿のようです。きっと偉い方に違いないでしょう。誰に騙されてここまでいらしたんですか? 私の息子は飢餓を我慢できず、山へ木の皮を剥がしに行きました」と話しました。


姫は温達を探して山に行きました。姫は温達とバッタリ出会い、心のうちを告白しました。温達はびっくりして、「ここは女がひとりで通るようなところではない。君は人間ではなく幽霊に間違いない。近づくな!」と叫び、逃げ出しました。


姫は後を追い、家の前で泊まって、翌朝もう一度温達の家を訪ねました。そして、温達と彼の母に今までの事情を詳しく話しました。温達の母は「我が家はとても貧しく、姫様が泊まるようなところではありません。私の息子は姫様とは婚姻できません」と断りました。


すると姫は、このように話しました。「昔から、貧しくても心が通い合えば幸せになれると言われています。それなのに、お金持ちになってからでないと一緒になれないということでしょうか?」。


姫は金の腕輪を売って畑と家、奴婢、馬と牛を買い、家財道具も揃えました。初めて馬を買いに行く日、姫は温達に「市場の馬を買わず、宮殿から使い道がないと判断されて民に売り払われる馬を買ってください。その中でも、病気にかかってやつれた馬を選んでください」と頼みました。姫は働き者だったので、大事に世話をされたその馬は日に増して太り、丈夫になりました。


高句麗では毎年3月3日、王様が狩大会を開き、捕らえた猪や鹿を天と山川の神霊に捧げる春の祭りが行なわれていました。その日は、温達も自分が育てた馬に乗って、王様について行きました。彼は誰よりも速く先頭を走り、捕獲した獲物も多かったので、王様の目に留まりました。王様は彼を呼んで名前を聞き、驚いてしまいました。


その時、後周(中国)の武帝が軍隊を引き連れ、高句麗の領土である遼東(ヨドン)を攻めてきました。温達は、王様に従い戦で勇敢に戦いました。ほかの兵士達もその気勢に圧倒され、高句麗は大勝を収めます。国中が温達に感心し、尊敬しました。


王様は喜び、温達を婿として正式に認めます。そして大兄(デヒョン)という地位を与え、寵愛しました。ですが温達は安楽な生活を拒み、将軍として国を守るため、毎日兵士と一緒に生活しました。


ある日温達は、「新羅(シンラ)が漢江の北側にある我々の領土を奪い、国民が苦しめられています。大王が私に軍使を与えてくだされば、必ず我々の領土を奪い返してみせます」と王様に申し出ました。戦に出るとき、温達は姫に「鶏立(ゲリプ)と竹嶺(ジュクリョン)の西のにある領土を取り返すまでは帰らない」と誓いました。しかし温達は、領土を取り戻す前に、峨旦城(アチャソン)の下で新羅軍の矢に打たれ死んでしまいました。


みんなは悲しみ、温達を棺桶に入れ宮殿まで運ぼうとしましたが、棺桶はびくともしません。姫が峨旦城まで来て、涙を流しながら「生と死はもう決まってしまいました。安心してお帰りください」と話しかけると、やっと棺桶が動きました。

   – BY  趙章恩

Original column
http://ni-korea.jp/entertainment/essay/index.php?id=11

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