<ケーススタディ“韓流”IT TRY&ERROR>1.今回のテーマ■Wibro(上)
期待高まるWibro
モバイルVoIPで携帯電話を超えた
韓国のITは、日本よりも進んでいると評価されることが多い。だが、その発展の過程を仔細に見ると、試行錯誤の連続ともいえる。韓国在住のITジャーナリストが、その実際を生々しくレポートする。
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今年6月16-17日、ソウルでは10年ぶりのOECD IT担当大臣会議が開催された。アジアで初めて開催されるOECD会議とあって、国を挙げて準備に取り掛かってきた韓国は、付帯行事として数々の展示会やカンファレンスを開催した。そのなかでもひときわ目立っていたのがWibro、すなわち2006年6月に韓国が世界で初めて商用化した2.3GHzモバイルWiMAXサービスだった。Wibroは07年10月、国際電気通信連合が認めた国際標準で、韓国、米国、日本、ロシア、ブラジルなど40か国で導入済みの、あるいは導入を検討されている通信サービスである。
韓国KTとサムスン電子はOECD会議の期間中、Wibroと携帯電話を使ったモバイルVoIPを実演し、OECD関係者はもちろん、一般参加者からも「これはすごい!」と絶賛された。Wibro経由のモバイルVoIPはサムスンのスマートフォンSPH-M8200を使い、携帯電話と同じ感覚で使うことができる。
時速120kmで移動しながらも使えるWibroのモバイルVoIPは携帯電話と変わらないサービスを格段と安い料金で利用できるため、諸外国のIT担当大臣の間で絶大な人気を得た。「自分の国でも導入したい」とWibroの運営会社であるKTに詳しい料金や利用情報などについて質問する人も多かった。特に有線インフラがぜい弱な途上国からはWibroで国の通信網を構築したいという依頼もあり、すでにルワンダやウズベキスタンなどに輸出されている。韓国ではWibroの技術ロイヤリティ収入が2024年までで約6800万ドルに及ぶとの見通しを立てている。
ブロードバンドと電話と地上波DMB(日本でいうワンセグ)を持ち歩けるモバイルトリプルプレーサービスを実現できるので、従来の通信サービスを根底から変えるものとして注目されているWibroの音声搭載だが、肝心の韓国全域での商用化計画はまだメドが立っていない。まずはサービスエリアを拡大しなくてはならないという課題が残っているからだ。(趙 章恩●取材/文)