危機に強い韓国
トライ精神で乗り切る
世界金融不安に端を発した不況が韓国でも深刻な事態を招いている。1997年末に韓国経済を崩壊寸前にまで追い込んだアジア通貨危機の頃よりも、庶民の生活は厳しくなっている。
韓国政府は景気対策として、輸出保険や海外マーケティング支援規模を大幅に拡大する計画を発表した。また雇用維持のため、製造会社が社員を職務教育として大手企業へ一定期間派遣し、政府が賃金と訓練費の一部を補助する制度も始められる。内需創出のため政府が大規模な投資をする「IT・SWニューディール」も計画されている。省エネ設備導入、RFIDの利用促進、LED照明の普及、新再生エネルギーの研究開発などの事業を推進し、約1600億円を投資する。
イ・ミョンバク大統領は新年の国政演説で、「2009年はグリーンITやエネルギーの効率的な活用、先端融合産業、高付加価値サービス産業の3大分野を新しい成長エンジンとして稼働させる」と発表した。かつて果敢にブロードバンドに投資したことでアジア通貨危機を克服できた経験をもとに、今度はグリーンITの推進や放送と通信の融合、モバイルと医療の融合といった先導事業に投資を集中し、外国からの投資を誘致して景気回復につなげたいとしている。
09年には携帯電話端末に義務づけられていた韓国産ミドルウェアWIPIの搭載が廃止され、海外メーカーの端末も韓国で自由に販売できるようになる。料金割引制度の自由化、携帯電話周波数再分配など、競争を促進するための大きな規制緩和も予定されている。
経済政策を担当している企画財政部の長官は、「アメリカ中心の一極体制が弱まり、新興国が浮上するという歴史的な権力の移動が始まっている。かつて世界7位ぐらいだったSamsung Electronicsが、アジア通貨危機以降は世界トップの電子メーカーになった例もある。強者が生き残るのではなく、生き残った者が強者になる不確実な時代なので、私たちの努力次第で一流国家に跳躍できるチャンスをつかめる」と、高らかに宣言した。
韓国ではIT強国として成長していくためには、不況こそがチャンスといわれている。09年も韓国が得意とする「なせばなる」とか「まずはやってみよう」というトライ精神を生かし、危機を乗り越えようとしているのだ。(おわり)
(趙 章恩●取材/文)
[BCN This Week 2009年1月12日 vol.1267 掲載] Link