<韓国リポート>世界初の公式スポーツネット中継 (過去記事)

全世界に向けて国内インターネットインフラを知らせるため、「ワールドカップインターネット中継」を積極的に進めてきた韓国政府の希望がついに実現する。もうすぐ、韓国は国際公式スポーツ競技をインターネットで中継し、視聴する最初の国になる。

■64の競技を生中継するKBS


 このために韓国政府は、放送局と基幹通信事業者達が参加する「次世代マルチキャスティングサービス導入協議会」を構成し、話し合いを続けてきた。そして今年2月20日、公営放送のKBSは2002ワールドカップをインターネットを通じて生中継すると公式的に明らかにした。KBSはすでにワールドカップ特集ホームページ(worldcup.kbs.co.kr/live)を開設し、雰囲気を盛り上げている。1Mbps級水準の動映像生中継のための試験サービスを実施した後、5月31日ソウルで開かれるフランスとセネガルの開幕試合など、韓国内だけでなく日本での試合も含め、64のワールドカップ競技を全て生中継する計画と「放送予定表」に載っている。でも韓国内の競技だけになると予想される。


 これは情報通信部が国際サッカー連盟(FIFA)など関係機関からワールドカップのインターネット生中継を承認してもらい、KBS、MBC、SBSなど韓国内放送局もワールドカップ中継権販売代行社であるドイツのキルヒメディア(www.kirchmedia.de)とインターネット中継を許可するという内容の契約を結んだため実現した。但し韓国内でしか見られないようにするべき、という条件が付く。史上初の「インターネットワールドカップ」を実現させたいが、世界各国に送信するTV中継の商品価値は落としたくないための妥協だ。視聴を国内に限定するためには韓国人しか持っていない「住民登録番号」を使って、サイトへの登録を義務付ける方法(現在既に韓国の放送局はこのシステムを取り入れている)や、IPアドレス等でトラフィックを制御する方法などが考えられる。


 これによってワールドカップ中継権を買った韓国内地上波放送局は、ワールドカップ競技場面を通信業体のインターネット網を借りて自社のサイトや各種スポーツサイトなどにコンテンツとして販売できるようになった(韓国の放送局3社が51%以上の持ち分を持っている会社に制限、結局自社サイトかインターネット子会社だけで中継可能)。KBS場合、自社インターネットサイトでは無料でワールドカップを中継する方針であり、MBC(www.imbc.com)とSBS(www.sbs.co.kr)は有料で中継する計画だ。(料金は未定)


■高画質・高音質という条件


 だが、問題になるのはインターネット生中継の条件だ。キルヒメディアはインターネット中継条件として、「国際放送と同じレベルの画質と音質」を求めている。インターネット中継品質が現在のテレビの水準にならなければならないという話だ。これは最少限SD級TV(720×480、34万画素)のような水準なので、300Kbpsで放送される現在のインターネット放送環境では不可能な基準だ。現在韓国内のほとんどのインターネット放送は300Kbpsの幅(Bandwidth)で放送されていて、それも超高速網が一般化されてない、他の国のインターネット放送はモデムまたはISDNユーザーを対象とし、33~100Kbpsで放送している。地上波放送と同じ水準の画質をインターネットを通じて保つということは技術的にも、通信網の容量を考えてもかなり高額な費用がかかる。通信網を提供するKT(韓国通信)とDACOMの場合、テレビ水準のワールドカップインターネット生中継のためには、莫大な投資(66億円)が必要であると言われている。


 このため業界ではマルチキャストという新しい方式のインターネット放送に期待をかけている。インターネット生中継に必要なマルチキャスト技術は既にメジャーリーグで活躍中のパックチャンホ選手の野球試合中継の時利用されていて、10万~20万人の同時視聴を受容できた実績があるからだ。マルチキャストは、インターネット放送局とユーザーが1対1でつながる既存インターネット放送と異なり、一つの信号で多くの視聴者を結ぶ技術だ。視聴者数が三人なら回線容量も三倍に増やさなければならないが、マルチキャストは同じ信号を分けて見るため、基本的な回線容量を確保すれば、何人見ても大丈夫だという。


 でも韓国の通信事業者の中でマルチキャストに対応できるのはKTやDACOMの大手ではなくドゥルネット一社だけ。他社はこれから動画配信ネットワークサーバー(CDN)を追加しないとサービスは無理かも知れない。どっちにしても通信事業者の負担が一番大きいのが最大の難点。MBC、SBSの民放と通信事業者達がワールドカップを目前に戸惑う中、KBSはKTとドゥルネットにネットワーク、メディアサーバーと技術を提供してもらうことに決まり、着々と準備が進んでいる。


 パソコンにインターネットをつなげ、ゲーム機、テレビ、ラジオ、CDプレーヤー等としてフル活用する韓国では、ワールドカップネット生中継もやって当たり前と考える人が多い。韓国でしか見られないという条件つきなので、PCバン(日本で言えばインターネットカフェのようなもの)を競技場代わりにする観光客も相当いるだろう。


by- 趙 章恩


 デジタルコア連載   Link

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *