<韓国リポート>国を挙げての「ITワールドカップ」(過去記事)

 2002年5月31日--。今日はソウルのサンアムメインスタジアムで開かれるワールドカップ開幕戦を見に行く日。

 競技場へ入る子供の手の甲には小さな半導体チップを、親の手にはそのチップの固有ナンバーの書いてあるシールを貼る。これは迷子追跡システム。子供が見当たらない場合、「迷子センター」に置いてある端末にシールのナンバーを入力すれば、競技場の案内図と共に子供の現在位置が点滅される。


■太っ腹のネット政策


 メインスタジアムだけでなく、ワールドカップ競技場内どこからでもインターネットが使える。無線LANはもちろん、ブロードバンドでつながったIP公衆電話、利用料ただのパソコン等々、ネットに関してはとにかく太っ腹政策である。競技場では無線LANもTCP/IPを合わせたり、ISPを経由したりすることなく使えるプログラムCDを配る予定だ。サッカーファンや大会参加者達に携帯電話や端末機を無償で貸し出し、無線ブロードバンドを利用してMP4動画ファイルを最大8Mbpsの速度でダウンロードして楽しませる計画も持っている。


 2~3カ国語は普通にしゃべれる、親切なボランティアおばさんの案内を受け、楽々席に着く。このおばさんは、すでに2年前から集められた外国語が堪能な1万6000人のボランティアの中の一人で、ずっとインターネットで教育を受けていたと言う。ワールドカップ組織委員会は、「ボランティアサイバーセンター」を通じて韓国全土のボランティアの基礎教育を実施した。ほとんどが学生、会社員であるボランティア達が時間と場所に困らず。自分の好きな時に好きな場所で教育に参加できたため、この施策は絶賛を浴びた。


 ワールドカップ競技は当然昼頃繰り広げられる。みんなお勤めの時間なので競技場まで行けそうにない。それにに会社でテレビだなんてありえないこと。でも韓国ではみんな、パソコンでインターネット生中継を見ている。インターネットでテレビの番組が何でも見れるというのはもうすでに2~3年も前からの話で、韓国では当たり前なのだが、ワールドカップ生中継はFIFAとの中継料問題もあり、有料化されるかも知れないとの噂もある。もしそれが本当であれば、インターネットは何でも「ただ」と信じきっている韓国の人々にはショック!であろう。


■ワールドカップは世界最高水準発露の場


 開催まであと7ヶ月。今回のワールドカップで韓国が自慢できるのは「通信施設とインターネットサービス」、とはっきり言う韓国人が多い。交通、宿泊、大気環境部門では日本より低い点数をもらっているが、情報通信環境は断然、遥かに日本を超えていると自身を持っている。個人的に「今の日本はちょうど韓国の1998年末の状況とそっくり」ではないかと思う。韓国もこの時からADSLとか、ブロードバンドの必要性についてみんなが関心を持ち始めた。


 日本より競技場完工は遅れたが、その代わり韓国は最上級の競技場情報通信インフラを整えた。特に寝ても覚めても「IT強国」命の韓国は今回のワールドカップのコンセプトを「ITワールドカップ」と決めたため、情報通信システム等、ハードウェアインフラと関連ソルー-ション業界はすでに「ワールドカップ特需」で売上がぐんぐん伸びている。この計画はITをワールドカップのための通信支援技術、と単純に考えず、ワールドカップを情報通信システム等の海外輸出のための場に盛り上げるためである。


 韓国が今回のワールドカップを何故、これほどまで「IT」にこだわるのかというと、世界の経済大国、日本との共催だからだ。全世界の人々に、韓国のIT技術は日本より優れている、または同じレベルだと評価されない限り、これからのIT産業の大勢からはじき出されるかもしれないと、全国民が心配している。


 11月19日発表された情報ワールドカップ支援対策を見ると、韓日の歴史的な特殊性を考慮し、日本と違う情報通信サービス、新技術を登場させるべきとの政府と業界の強い意志が込められてある。現在開発中の3DTV技術、商用化された技術、各種コンテンツ、世界最高水準のブロードバンドサービスが、これまた世界最高水準の安さで提供されるのも、日本を意識しているからだ。無線LAN、Blutooth、テジタル放送、IMT2000動画配信、超高速インターネット端末機がすでに商品として登場した。


 1988年ソウルオリンピックを契機に韓国のソフトウェア業界が一気に成長し、大型システム統合(SI)プロジェクトに対する自信を得た。その当時の若手IT主役がみんな今では韓国を代表するベンチャーの社長としてがんばっている。ワールドカップももちろん、彼らの会社が動かしている。


 だが、問題は二つある。、オリンピックと違い、ワールドカップはFIFAがすべてを管理するので、前のように韓国独自で何か出来る余地があまりない。それに韓国の「パリパリ精神」(何でも早く早く進めたがる性格)のお陰で、テスト期間もほとんどなくこの世に登場したIMT2000や新しい技術もちょっと心配である。

by- 趙 章恩


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