<韓国リポート>韓国人はネットが怖い(2)国を動かすネティズンパワー (過去記事)

米軍が引き起こした事件をインターネットで糾弾

 ワールドカップで韓国中が赤い波に覆われていた昨年6月、米軍の装甲車が住宅街に近い細い通りを無理に通行しようとし、そこを歩いていた女子中学生2人をひいて死亡させる事件が起きた。真昼間に起きたこの事件を米軍は隠蔽しようとし被害者家族を脅迫、韓国政府も駐韓米軍地位協定(SOFA)により韓国内であっても米軍の事件事故は米軍が1次裁判権を持っているという理由で、事件をうやむやにしようとした。これを知った一般市民たちはインターネットに集結し、「米軍は時速6~16Kmで運行したと言うが、装甲車の物すごい振動と騒音から考えて女子中学生2人が後ろから近づく装甲車に気付かずひかれたというのはおかしい。通学路を装甲車が何の予告もなしに走るのもおかしい。被害補償もなく米軍は自分たち同士で裁判し無罪と言う。被害者はいるのに加害者はいない。これは米軍の犯罪ではないのか」という疑問を提示した。


 1945年の米軍駐屯後99年まで殺人、傷害、交通事故等公式集計だけで6万件以上の米軍による犯罪があり、このうち韓国が裁判したのはたった234件だ。毎年凶悪な「米軍犯罪」が新聞から消えることがないのにSOFAがある限り韓国側は何もできない、だから犯罪が増える、他の国に比べ常識外れに不平等なSOFAを全面改定しよう、というのがネティズンや社会団体の主張だ。


韓国全土を熱くしたロウソク集会









 
 そして装甲車事件の犯人に無罪判決が報道された11月、ある一人のネティズンがワールドカップの応援で有名なソウル市の真中、広化門で「ロウソク集会」を開催、韓国全土を熱くした。「哀れな妹たちを慰める蛍火」という意味でのロウソク集会は瞬く間に全国各地に広がり反米意識が高まった。ネットでもインスタントメッセンジャーやメールに葬儀に使う麻布やロウソクの絵文字を添付したり、「米軍犯罪根絶バナー」を掲載する等、今でもその動きは続いている。


 ノ・ムヒョン大統領は米国を意識し「ロウソク集会」を自制するようコメントしたが、大統領を作り上げたネティズンのパワーに押され「やめろではなく自制」と弁解する一幕もあった。


 このような雰囲気の中「国益のためのイラク派兵決定」は火に油を注いだのも同然。人気芸能人までも国会前で反対集会に参加し、ネティズンは派兵案に賛成した議員は次の選挙で徹底的に落選運動してやるとウェプサイトまで作った。議員たち達が相次いで自分のホームページや市民団体のサイトに派兵案に賛成した理由を反省文のように細かく報告するほど、ネティズンの力は強いのだ。


自分の考えを示すIDで発言


 ネットの波及力は日本でも「2ちゃんねる」やコミュニティーサイトを通じて経験済みと思う。しかし「2ちゃんねる」と韓国の違いは「匿名」にある。韓国のネットは実名は出さないが、「名無しさん」や「匿名」はない。自分の考えを反映するIDを作りネット上の実名として利用している。住民登録番号を記入し会員登録をしないと利用できないサイトがほとんどなので、管理側はすぐだれだか突き止められる。だからと言って消極的にならないのが韓国人のパワー。反論があればいつでもどうぞ、といった雰囲気がネットに充満している。


 一般市民の力は弱い。だがネティズン(ネットユーザー)は強い。自分もパワーの中心にあるネティズンの一人だが、いつ自分が攻撃の対象になるか分からない。だから韓国人はネットが怖い。


by- 趙 章恩


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