韓国の街並みを象徴するもの、それは「PCバン」ではないだろうか。街の至る所にPCバンの看板が目立ち、ど田舎の駅前にもコンビニは無くても必ずあったのが「PCバン」だった。つい先日もPCバンで3日も眠らずオンラインゲームに没頭した無職の20代青年が過労で亡くなった。99~2000年あたりならみんな他人事ではないと一騒ぎなっただろうが、今は、「まだそんな人がいたのか、珍しい」に変わっている。
PCバンブーム
PCバンはインターネットカフェとも言える場所で、「バン」は「房」、韓国語で部屋を意味する。PCがたくさん並び、超高速インターネットを利用しオンラインゲームや多様なコンテンツを楽しめる部屋と言える。韓国で生まれ、日本、中国、米国、東南アジア等、全世界に広がっている。
ゲームを楽しむ人々。PCバンはゲームの世界を現したインテリアが多く、大体このような雰囲気 |
「スター」にはまり3、4時間
「PCバン」と言えば筆者に思い出がたくさんある。連日友達と、会社仲間とPCバンに寄りネットワークゲームの火付け役である米国ブリザード社の「STARCRAFT」に夢中になったものだ。スターと呼ばれるこのゲームは3種類の部族から自分に合ったものを選び、最大4対4でネットワークでつなぎ、勝つまで延々とやる戦争ゲームの一種で、徴兵制の残る韓国では自分の軍隊経験を自慢したいサラリーマンたちに大いに受け、200勝180敗とか、ついに400勝を達成したとか、物すごい成績を誇る友達がまわりに結構いた。
大型PCバンの場合、コーナーによってインテリアが違う |
韓国でPCバンを含めネットがはやっているのは娯楽が少ないせいかもしれない。TVは平日昼間は放送なし、週末だけ朝6時頃から夜1時頃までやっている。雑誌や漫画も少なく、特に主婦や学生の友はラジオ番組しかないようなものだった。暇つぶしの娯楽がないため、とりあえずインターネットでもやるか、のような雰囲気があるのも事実だ。今でもその状況は変わらない。
なのに、この頃「PCバン」の人気が今ひとつだ。
ブロードバンド普及で人気にかげり
去年までPCバン専用ADSLやLAN、PCバン仕様パソコンの広告で埋め尽くされていたIT雑誌には「PCバンのパソコン買い取ります」、「PCバン廃業処理専門」とかの広告の方が目立つようになってしまった。
PCバンの人気が下り坂なのはやっぱりブロードバンド普及率にある。2002年9月末現在、人口4700万、ブロードバンド契約数は1004万、1430万世帯の70%に達する。1000万世帯を超えた記念式典は大統領まで出席し生中継される等、大騒ぎだった。ブロードバンド普及率は全国98%をカバーし、99~2002年の4年間ブロードバンドインフラに投資された金額は約11兆ウォン(約1兆1000億円)、これを元に23兆ウォン(2兆3000円)の生産効果や付加価値が生まれた。
2003年情報通信部傘下機関が主導し、光ファイバーを導入したデジタルTV、ホームネットワーク実験サービスが開始され、実速度20MBの光ファイバーを2005年まで1350万加入者が利用できるようにする計画を発表した。このための予算は2002~2005年の4年間約13兆3000億ウォン(約1兆3300億円)とみている。家庭内での光ファイバーとなれば、PCバンは早い回線や高級仕様のパソコンだけではもう顧客を集められない。
このような環境の変化の中、PCバンもどんどん変わり始めた。韓国全土に2万店以上あったPCバンが1万店以下に減っている。もうPCバンはだめなのか、この疑問に韓国最大PCバンフランチャイズであり、上海にも支店を持つ「メガウェップステーション」が答える。
by- 趙 章恩