<OVERSEAS REPORT>海外レポート 大盛況!韓国最大のソフトウェア展示会
ウェアラブルパソコンの体験に人だかり
Web2.0時代のソフトやSaaSに注目集まる
ソフトウェアとデジタルコンテンツ産業最大のイベントである「ソフトエキスポ&デジタルコンテンツフェア 2007」と韓国唯一の専門展示会である「2007 次世代コンピュータ産業展示会」が昨年11月29日から12月1日までの3日間、ソウルで同時開催された。その模様をレポートする。(趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)●取材/文)
■450余りのブースが集結 作業環境を再現するソフトも
韓国情報通信部が主催、韓国ソフトウェア振興院が主管する「ソフトエキスポ & デジタルコンテンツフェア2007」は07年で11回を迎え、海外バイヤーの姿も目立っていた。展示館には384社・450余りのブースが出展し、「ITサービスモデル館」「公募展特別展示館」「組み込みソフトウェア館」「2007 次世代コンピュータ産業展示館」など6つのコーナーで構成された。
「ITサービスモデル館」では、公共部門の特許、選挙管理、郵政近代化、港湾物流システムなどITサービスを中心に海外で利用されている韓国産ITサービスモデルが紹介された。「公募展特別展示館」はオープンソースソフトウェア(OSS)、パッケージソフトウェア、コンテンツに分類、07年に行われた5回の公募展の受賞作70点を展示した。
LG電子はホームネットワーク展示館をバスの中に設営し、バスごと会場に持ち込んだ。「ソフトウェア産業協力館」では、米国のT-Mobileに対して500万ドルの輸出を記録したイントロモバイルの「IntroPAD」など最新ソフト技術が適用された製品とETRI(韓国電子通信研究院)の研究成果が展示された。同館で特に注目を集めたのは、政府主導で研究された船舶塗装教育用シミュレーションや「YouFree」という移動型パーソナルソフトウェア基盤だ。「YouFree」はUSBを差し込むだけでどのパソコンでもオフィスで使っていた作業環境を再現してくれる。ちなみに、作業環境とは「お気に入り」やデスクトップのアイコンの並べ方を同じにしてくれたり、頻繁に使うソフトや文書を読み込みやすいようにしてくれる機能をいう。「YouFree」は今後、OSSにして誰でも開発に参加できるようにするそうだ。
■次世代コンピュータに人気沸騰 健康状態を測るバイオシャツなど
最も注目されたのはKT、レインコムなど話題の企業45社、120ブース規模で構成された「2007 次世代コンピュータ産業展示館」だった。業界人よりは子供や一般客向けの展示だったため、特に目新しい展示はなかった。しかし情報通信部が先導基盤技術開発事業として推進してきた研究開発の結果としてウェアラブルコンピュータ、着るだけで健康状態をチェックしてくれるバイオシャツ、手首に巻くとジェスチャーを認識して家電を操作したりお互いに情報のやり取りができるジェスチャー認識機のようなものが登場した。
UM(ウルトラモバイル)PC、PDA、MP3などの情報機器とゴーグルの形をしたディスプレイ(Head Mounted Display)など、韓国の技術で開発された次世代コンピュータ機器が展示された。
展示館内に用意された体験館では次世代コンピュータ機器を利用したシミュレーター体験と触感装置(haptics)を利用した映画館体験システムが一般客に人気を集めていた。
■業界人を魅惑した著名専門家の講演 商談には結びつかず
IT業界の人々が集まったのは「ソフトウェアインサイトカンファレンス 2007」である。「電子政府協力」「OSSとSaaS」「組み込みソフトウェア」「デジタルコンテンツ産業」「ソフトウェア工学」「次世代コンピュータ技術」など12分野について、海外の著名なIT専門家を招待し、2日間にわたって講演会を開いた。
世界的なコンポーネントモデリングの専門家であるOMG(Object Management Group)のRichard Soley会長とデジタルコンテンツマルチプラットフォームサービス分野を切り開いたPioneer OnlineのGideon Summerfield理事、AdSenseの開発を導いたDAVE NetworksのRex Wang代表などの有名人が集まり、各分野別の海外の最新動向とこれからの展望について情報を提供した。
なかでもSaaSは注目のテーマで、このカンファレンスの数日後、韓国SaaS協議会が発足するほどの影響力を示した。
日本・香港・東南アジアなどから招待した40か国の海外バイヤーとの輸出商談会、アメリカ・日本など8か国のベンチャーキャピタルとの商談会、政府省庁の発注者との間では公共ソフトウェアの商談会も開催され、中小ITベンチャーを支援するコーナーも設けられた。毎年、政府の予算でバイヤーを招待しているが、輸出契約が結ばれることはあまりないのが実情で、バイヤー招待費用を他の支援策の予算に回したほうがいいのではないかという批判もある。
Web2.0の主なサービスの一つとして、これから成長が予想されるマッシュアップ(複数の異なる提供元の技術やコンテンツを複合させて新しいサービスを形作ること)の底辺を拡大し、優秀なIT人材を発掘・育成するため、ポータルサイトのNAVERとDAUMが主催した「2008 大韓民国MASHUP大会」には大学生や若手ベンチャー人が集まっていた。オープンAPI(プラットフォーム向けのソフトを開発する際に使用できる命令や関数の集合)を利用してサービスを組み合わせ、また新しいサービスを生み出すマッシュアップに興味を持ってもらえるよう、オープンAPI開発者らが大会に参加した応募者にマッシュアップの技術・企画についてマン・ツー・マンのコンサルティングを提供した。
情報通信部は、毎年年末に開催される「ソフトエキスポ&デジタルコンテンツフェア」を通じて、グローバル市場に韓国製ソフトウェアとデジタルコンテンツ・次世代コンピュータ業界の発展を広報し、有望中小企業のグローバルマーケティングと海外進出のきっかけとなる商談会、活発な技術交流を通じて関連産業の技術力を一層引き上げることを目的としている。
展示会の参加企業数やレベルが年々落ちているという不満の声も一部では聞かれるが、IT関連産業を育成するという政府の意志を、業界に確認させることもこの展示会の目的のひとつかもしれない。
[BCN This Week 2008年1月28日 vol.1220 掲載]