2009年上半期、韓国でもっとも売れた携帯電話は?

2008年3月より販売奨励金、端末購入補助金などマーケティング費支給が解禁となった韓国では、毎月壮絶な加入者の奪いが繰り返されている。ナンバーポータビリティを利用すれば番号は変えずに済み、毎月補助金をもらって無料で新機種に変えられるため、全体の加入者数はほとんど増えずに、マーケティング費用ばかりが急増する悪循環が続いている。

 韓国では夏と冬のボーナス時期に限らずに随時新機種が発売されるため、流行に敏感でCMに影響されやすい高校生や大学生を中心に新機種が出る度に機種変更を繰り返している。通常、韓国の携帯電話機種変更は平均6カ月といわれているが、金銭的な負担がなくなったことから毎月機種変更するユーザーが増えている。この秋からは補助金支給後3カ月以上経たないと他のキャリアから補助金がもらえないように規制することになった。


 機種変更が頻繁な韓国ではどんな端末が売れているのだろうか。


 2009年7月の販売台数は257万台で、タッチフォンが79万台を占めた。よく売れた端末は補助金で安くなった最近機能を取り揃えた新機種。サムスン電子は「ヨナのHaptic」と「Haptic AMOLED」が、LG電子は「クッキーフォン」がトップを占めた。




LG電子でもっとも売れたタッチフォン「クッキーフォン」

フィギュアスケート選手のキム・ヨナをモデルにした「ヨナのHaptic」はフルタッチスクリーンの画面に300万画素カメラ、自分撮り機能、Blogのように編集できるダイアリー、SOS機能、地上波DMB(ワンセグ)を搭載する。「ヨナのHaptic」は7月だけで25万台、発売から2カ月間で45万台が売れ、最短期間で100万台を突破する機種になるのではと期待されている。


 「Haptic AMOLED」は海外で「Jet」という名称で発売されたフルタッチスクリーンフォン。3.5型WVGAの有機ELディスプレイ、地上波DMB、3D効果、DVDクラスの動画録画/再生、5.1チャンネル立体音響、500万画素カメラを搭載した。「クッキーフォン」は300万画素カメラ、11.9mmの薄型、89gの超軽量モデルで、タッチスクリーンの中ではお手頃価格となっている。おかしの「クッキー」のように誰にでも楽しめる端末という意味が込められている。人気女優が携帯電話でゲームをするかわいいCMで認知度を高めた。


 しかし、2009年上半期もっとも売れた端末はほとんどが「0ウォン端末」で、折りたたみ式、カメラ付き、音楽再生といったシンプルなデザインによく使う機能は揃っている端末だった。


 サムスン電子とLG電子が毎月発表している端末出荷台数と機種別販売台数を見ると、2009年上半期韓国で販売された携帯電話台数は1279万3000台。携帯電話加入者の約3割が携帯電話を新規加入または買い換えたことになる。キャリアとベンダーから支給される端末購入補助金は1台当たり20万~70万ウォン。端末価格は20万~90万ウォンなので、ものすごいマーケティング費が支払われたことがわかる。


 SKテレコムからもっとも売れたのはサムスン電子の「SCH-W270」。2007年発売されSKテレコムだけで140万台売れた。KTからはサムスン電子の「SPH-W5000」、LGテレコムはサムスン電子のSPH-S5150が売れた。どれも130万画素のカメラ、MP3プレーヤーを搭載したシンプルな折りたたみ端末である。




その他はLG電子の「ワインフォン」も定番として人気が高い。その名の通り、シニア(ワインのように熟成した世代)向けの端末で、2.4型の画面に通常の2倍ほど大きい文字が表示され、音声も2倍ほど大きいのが特徴。メッセージを読み上げる機能もついている。2007年に発売されてから2年2カ月で200万台販売を突破した。ユーザーの78%は40歳代以上の中年層が占めるが、通話とSMSだけ使えればいいという20代にも売れている。LG電子側は、「流行の移り変わりが早い韓国で2年間売れ続けたこと自体がすごい」とコメントしている。他の端末の場合、6カ月から1年ほどで製品のライフサイクルが終わってしまう。






ユーザーの8割を40歳代が占める一方で、若者にも売れているLG電子の「ワインフォン」

補助金合戦の影響から韓国のサムスン電子、LG電子の携帯電話が市場の7割以上を占める中、意欲的に韓国にやってきたソニーエリクソンやNOKIA、HTC、RIM(BlackBerry)のスマートフォンは予想を下回るどころか、ほとんど売れなかった。ソニーエリクソはCMを大々的に流したが、機器不良やキーパッドの問題(キーパッドに「;」が2つもあった)、高い値段の割にはこれといった特徴がないことから、思うようにいかなかった。それでも外資系の中ではソニーエリクソンが唯一、韓国のように機種変更の周期が早い補助金激戦地の中で生き残ったというイメージはある。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年8月5日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090805/1017643/