[日本と韓国の交差点] 2010年、韓国で最もはやった言葉は「世界がみつめています」

流行語の多くはネットが生んだ「宇宙語」



 2010年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補に、「iPad」や「~なう」などと一緒に、「K-POP」が選ばれたことが韓国で話題になっている。K-POPとはKARA、少女時代、Bigbangなど韓国のアイドルグループが歌う歌謡曲のことをいう。


 1980~90年代、韓国ではJ-POPが大ヒットした。英語を混ぜた歌詞、歌手の衣装、振り付けなど、韓国の歌謡市場に大きな影響を与えた。植民地支配のわだかまりがまだ強く残っていた時代なので、「日本の歌が好き」なんて言おうものなら「親日家」とレッテルを貼られ、ものすごいバッシングを受ける時代だった。韓国では、「親日家」と呼ばれることほど恐ろしいことはなかった。


 ただし、表向きには「反日」、「日本が植民地支配を心から謝罪するまで許さない」なんて雰囲気だったが、裏ではMade in Japanが最高級品とされ、日本のドラマや映画、ファッション雑誌をリアルタイムで手に入れるのがセレブの証であった。


 2002年「日本大衆文化開放」によって日本の歌手の来韓公演がぞくぞく始まった。日本映画の上映も増えた。ケーブルテレビでは日本のドラマが放映され、J-POPのプロモーションビデオがよく流れた。日本のアイドルが来韓する際の空港出待ちは、日本におけるヨン様に負けないほどの数が集まる。ただし、こっそり楽しむという刺激がなくなったせいか、今はJ-POPや洋楽よりもK-POPが圧倒的に人気がある。


 このため、日本の流行語大賞候補にまでなったK-POPの動向は韓国でも大きなニュースとなっている。日本のポータル検索サイトのキーワード上位に韓国のアイドルの名前がランクインした。日本の音楽アルバム販売の歴史を塗り替えた…といった具合に話題は絶えない。



G20がもたらした流行語「世界がみつめています」

 それじゃ2010年韓国の流行語にはどんなものがあったのだろうか。


 今年はなんといってもG20に関連する流行語が大人気を集めた。11月11~12日にソウルで開催されたG20のために韓国中が1年近く大騒ぎした。世界の首脳というお客様を迎える国として「国格」を上げなくてはならないと、「エチケットを守ろう」とか、「外国人には自分から先に声をかけ親切にしましょう」とか、テレビのキャンペーンがすごかった。


 同じ時期にAPECを開催した日本の警備なんかやさしいもの。ソウル中が警察と軍人で囲まれ大変だった。そんな中、G20会場からも遠く静かな住宅街である西大門に、区役所の名前でこんなポスターが登場した。


 「世界がみつめています。ソウルG20 首脳会談期間中、生ごみの排出を自制してください。11月10日~12日は、世界的国際行事G20の成功と快適な周辺環境のために、生ごみの排出を自制くださるよう協力をお願いします」


 これを見た市民たちはネット上にパロディーを掲載し始めた。「世界がみつめています。お母さん夕食のおかずがチゲだけというのは自制してください」というのは、ある高校生の書き込みだ。このほか、「世界がみつめています。カップルはいちゃつくのを自制してください」、「世界がみつめています。CO2を減らすために息を自制してください」、「世界がみつめています。サービス残業は自制してください」。学園祭が行われたある大学では「世界がみつめています。先生、学園祭の期間中に課題を出すのを自制してください」などなどが広がっていった。


 G20公式Twitterを名乗るなりすましTwitterも登場し、「世界がみつめています。ジャージ姿で外を歩くのは止めましょう」との書き込みがあった。これを本当だと信じてしまった人がたくさん居て騒動が起きたりもした。北京オリンピックでは、外国人を意識した政府が市民の日常生活を規制したことが話題になった。「パジャマで街を歩くな」。「道端に洗濯物を干すな」。韓国でもそれに近いほど滑稽な自主規制があったために、あんな嘘でも政府の仕業だと信じてしまったのだ。



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By 趙 章恩

2010年11月25日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101124/217237/

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