6時間で解除された韓国の非常戒厳、ウォン安や議会混乱が半導体産業直撃

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韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は2024年12月3日の22時25分ごろ、1979年以来となる「非常戒厳」を宣言した。尹大統領は「北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守護し、韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に排除、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」とした。大統領が非常戒厳を宣言すると政治活動や報道、出版など、民主主義国家では当たり前の活動の多くが制限される。

 非常戒厳宣言のニュースが報じられてからすぐ、戒厳軍が国会に進入しようとするのを防ぐため数千人の市民らが国会議事堂に集まった。誰かが動員したわけではなく、独裁政権と軍事政権で戒厳を経験した世代や教科書で歴史を学んだ世代が国会議事堂に集まった。国会議員らは塀を超えて国会議事堂に入り、国会議事堂の中では夜勤中だった議員の秘書らが国会本会場前でスクラムを組み、窓ガラスを割って国会に進入した戒厳軍と対峙した。

 韓国の憲法第77条1項には「大統領は、戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態において、兵力をもって軍事上の必要に応じる、または公共の安寧秩序を維持する必要がある場合、法律の定めるところにより戒厳を宣布できる」としている。同5項は、「国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求した場合、大統領はこれを解除しなければならない」としている。戒厳軍が国会を封鎖しようとする中、12月4日午前1時ごろ300人の国会議員のうち190人が国会に集まり全員賛成で非常戒厳解除決議案が可決した。同日午前4時20分ごろ、尹大統領は「国会の要求を受け入れ戒厳を解除する」と発表した。

 わずか約6時間でしかも深夜のうちに非常戒厳は解除されたために、一般市民の生活に大きな変化はなかった。非常戒厳宣言を知らず朝ニュースを見てびっくりしたという人も多かった。学校はいつも通り授業を行い、証券取引所もいつも通り開場し、年末のコンサートやイベントも予定通り行われた。国際信用評価会社スタンダード&プアーズ(S&P)は、非常戒厳が迅速に解除されたことから韓国の国家信用等級に実質的影響がないと評価した。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 12. 

-Original column 

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