[日本と韓国の交差点] 震災を契機に、韓国は災害情報の伝達方法を見直し

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地上波DMBや災害情報ショートメッセージに注目


NHKで、被災地の方々が家族を探す場面を見た。「兄を捜しています」、「母を捜しています」と淡々と言う表情に、30年近く前のことを思い出した。

 韓国では1983年6月、朝鮮戦争により消息が途絶えた家族を捜す特別番組が放映された。当時は「電波の無駄遣い」という理由ことで、平日の昼間はテレビ放送が中断される時代だった。公営放送のKBSが、同放送の正規放送が中断される時間を使って、特別番組を生放送した。


 KBS放送局の前に「誰かこの人を知りませんか」という紙を持って集まった人を映し、一人ひとりを紹介した。家族を捜している人はみんな、死んでも死にきれないと「ハン(根)」を訴え、涙を流していた。30年ぶりに再会した親子や兄弟が抱き合って泣く姿を毎日のように映し出した。視聴者も一緒に泣いた。


 1983円6月30日から1年の間に、朝鮮戦争による離散家族の問い合わせは20万9000件に上った。その中で再会を果たしたのは約1万5000件だった。KBSだけでは手に負えず、大韓赤十字社が受付を担当するようになった。大韓赤十字社は、今でも継続的に家族捜しを手伝っている。


 韓国の場合、戦争に限らず、洪水や火事といった災害でも、テレビが映し出される被害者は、ほとんどがカメラの前で胸を叩きながら慟哭し、被害を訴える。視聴者は一緒に怒り、一緒に泣く。テレビを見ながら共感し、声を出して泣くことで自分のストレスをすっきりさせることもある。



被災民の方は火病に注意して!



 韓国には「ファッビョン(火病)」と呼ばれる病気がある。怒りを心の中にためておと発病するものだ。以下の症状が出る――慢性疲労、動悸、手足は冷たいのに顔が赤くなる、息ができない、眠れない、頭が重く耳鳴りがする、消化不良のように胸の奥に何かが詰まったような感覚がある。だから、怒りは心の中にため込まず、吐き出して解消する方がいいと言われている。


 たまたま私が見た番組だけだったかもしれない。だが、日本のテレビが映す被災地の方々はみんな冷静で、カメラの前で泣く人はいなかった。「私よりもっと大きな被害を受けている人がいるから」という言葉を忘れない。このようにどんな時でも冷静沈着で秩序を守るのが日本人のすごいところだと世界中が称えている。だが、個人的には、火病になってしまうのではないか心配だ。家族が見つかり、泣いて喜ぶ姿も、テレビはもっと映してほしいと思った。



宮城県南三陸町の女性職員の使命感に敬意



 韓国ではまだまだ東日本大震災がトップニュースである。その中で、またもや韓国中を感動させたのが宮城県南三陸町の危機管理課職員の話である。


 津波にのみ込まれるまで防災無線放送で住民に避難を呼びかけた女性職員の話は、韓国中に広がった。毎日新聞の記事を、テレビや新聞が引用して紹介。これらがTwitterとBlogを経由して広まった。


 ちょうど同じころ、駐上海韓国大使館で、一人の中国人女性と複数の職員が不倫をして職員らが本国送還となった事件があった。韓国では「公職に就く者の使命感の違い」として日韓を比較し、南三陸町役場職員の崇高な犠牲を称えた。


 一方で、もし災害放送や警報がしっかりしていて、住民の手元に避難指示が届くシステムがあったとしたら、彼女が犠牲になる必要はなかったのではないか?、韓国の災害放送や災害情報伝達の仕組みはどうなっているのか?という疑問も出始めた。



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