「スマートフォン+4G」競争が激化の一途

韓国初の4G向け周波数競売も予定



 スマートフォンが生活の基盤になりつつある韓国では、スマートフォンから利用できる高速モバイルネットワークである4Gへの関心が何よりも高まっている。


 TwitterやFacebook、人気のアプリケーションも、ネットワークにつながっていないと使い物にならないため、通信キャリアのCMも、端末の機能より、Wi-Fiスポットを他社よりたくさん持っている、モバイルインターネット使い放題料金が安いといった「ネットワークにより安く、速く、つながりやすい」ことを強調する内容になっている。


 最大手のKTは、「4Gで一足先に行く」をテーマにしたCMを流していて、6月からWibro(韓国のモバイルWiMAX)基盤の4GスマートフォンとタブレットPCを発売する。SKテレコムは7月、LGU+は10月よりW-CDMAより下りが5倍ほど速いLTEで4Gサービスを始めるとしている。






KTの4Gサービス広告


KTが4Gとして発売するのは、Wibro+Wi-Fi+W-CDMAの3種類のネットワークに対応した台湾HTCのスマートフォンとタブレットPC。KTは既に3月からWibroが使えるサムスンのGalaxy Tabを発売していて、Wi-Fiより速い4Gが使えると宣伝してきた。また幼児向け教育ロボット、クラウドコンピューティング、モバイル端末で操作できる遠隔業務処理など、4Gネットワークを使った応用サービスも次々に発表している。


 KTは韓国最南端の島でレジャー・観光の名所であるチェジュ道と提携し、「チェジュ・モバイルワンダーランド」構想にも参加している。海、山、滝といった観光スポットはもちろん、バス、タクシー、レンタカーにも4Gネットワークを張り巡らせ、6月までは誰でも無料で移動しながらも高速モバイルネットワークを体験できるようにしている。またKTと自治体が協力してチェジュ道に「スマートワーキングセンター」という拠点を作り、公務員が自分のオフィスにいなくてもこの拠点を訪問して遠隔で仕事ができるようにしている。


 「チェジュ=観光」という単純なイメージを脱皮するため、自治体の積極的な支援のもとで、2009年から大規模なスマートグリッド実証実験を行っている。ここにKTのWibroを追加して、電力使用もWibroで管理し、エネルギー使用パターンを分析して効率よく電力を使えるようにしてくれる「スマートホームエネルギーサービス」も始める。チェジュは過ごしやすい自然環境と、最先端のグリーンITビジネス環境の両方を取りそろえた島であることをアピールしようというのが「モバイルワンダーランド」構想の目的である。


 KTと同じくiPhoneを販売するSKテレコムも4Gを強調したCMを流し、一方、スマートフォンに出遅れ存在感が薄いLGU+は、LTEでどのキャリアよりも速度の速いネットワークを提供すると強調する。


このような中、新たな論点となっているのが周波数だ。


 WibroだけでなくLTEサービスも計画しているKTは、6月で2Gサービスを終了し、その周波数(1.8GHz)をLTE向けに使う方針だと発表したことがある。KTはこれまで、2Gを終了させるため、ユーザーに対し無料で3G端末やスマートフォンに機種変更させてきたが、それでもまだ2G加入者は100万人近く残っている。放送通信委員会は2G加入者が1万人以下になればサービスを終了してもいいとしており、このままではKTの計画通りにはなりそうにない。


 KTはLTE用に900MHzを確保しているが、欧米のキャリアが900 MHzのLTEにあまり投資をしていないため端末を確保するのも難しいと判断したのか、1.8GHzを狙っているのだ。放送通信委員会は、韓国で初めて行われる予定の周波数競売(2.1GHzの20MHz幅)に、KTが6月中に返納する予定の1.8GHzの20MHz幅を追加するかどうか検討している。


 LTEの場合、SKテレコムは800MHz、KTとLGU+は1.8GHzの周波数を使う。2.1GHzの場合は、SKテレコムが60MHz、KTが40MHzを持っているが、LGU+だけが持っていないため、競売といっても放送通信委員会がLGU+の肩を持つ可能性が高いのではないかと言われている。周波数が競売にかけられるとしたら、観戦ポイントは1.8GHzの20MHz幅をKTがまた持っていくのか、それともSKテレコムがKTには渡せないと新たに手を出すか、になりそうだ。


 というのも、スマートフォンが発売されてから、KTとSKテレコムはお互いをけなすCMを頻繁に流している。おかげで得をするのは米アップルだ。KTのCMもSKテレコムのCMも、iPhoneを楽しく使うためには自分たちの4Gが必要だと宣伝しているので、テレビをつけるとiPhoneのCMばかり流れているような気がするからだ。


 トラフィック暴走で4Gの早期サービス実施に周波数確保に必死になっているキャリア。この競争がアップルではなく加入者が得する競争になってくれるといいのだが。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年5月13日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110513/1031787/
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