韓国で人気のスマホアプリは「無料通話できるメッセンジャー」

韓国のスマートフォンユーザーは1500万人を超え、携帯電話加入者の3分の1になろうとしている。韓国ではスマートフォンを使うためには専用料金制度に加入しないといけない。Wi-Fiは無料で使えるが、データ通信定額制に加入しないといけないので通常の携帯電話より3倍ほど高い料金設定なのだ。韓国放送通信委員会が実施した2011年上半期スマートフォン利用実態調査では、スマートフォン加入者の44.4%が5万5000ウォン(4000円程度)以上の料金を払っていた。高いデータ通信定額制に加入するからには、アプリを使い倒して元を取りたいと思っているのか、スマートフォンが普及すればするほど話題になっているのが「無料で○○ができるアプリ」である。

 中でも人気なのが「無料で音声通話ができるアプリ」だ。無料でメッセージを送受信できるメッセンジャーアプリはたくさんあるが、音声通話も無料でできるモバイルVoIPアプリはまだ出始めたばかりである。


 代表的なのはスカイプやViberであるが、韓国では無料通話にチャットのようにメッセージを送受信できて、ソーシャルコマース機能も付いている韓国企業の無料通話アプリの方が人気だ。ポータルサイトDAUMの「マイピープル」、韓国最大手携帯電話キャリアSKテレコム子会社SKコミュニケーションズの「NATEONTALK」、モバイルインターネット電話ソリューションを手掛けるネオメッカの「OlivePhone」など、大手ポータルサイトやキャリアの子会社からは続々と無料通話アプリが登場している。ただし、月5万5000ウォンの一番高い定額料金に加入しているユーザーだけが利用できるようにしている。


 マイピープルはAndroidとiPhone向けのアプリがあり、無料テレビ電話機能も付いているのが魅力である。また1999年から始まり全国民が会員とも言われるDAUMのWebメールに対応した受信お知らせ機能も付いている。パソコン経由でスマートフォンユーザーともチャットやメッセージのやりとりができることから、利用者数が1200万人を突破している。
 無料通話アプリの中で最近もっとも注目されているのはSKコミュニケーションズのNATEONTALKである。




SKコミュニケーションズの無料通話アプリ「NATEONTALK」。すでに300万ユーザーが使っている


携帯電話キャリアであるSKテレコムの子会社から無料通話アプリが出たということ自体、話題の一つ。また、SKコミュニケーションズは3300万人という韓国最大加入者数を誇るインスタントメッセンジャーNATEONを運営しているので、スマートフォン市場でもメッセンジャー市場を席巻できるだろうか、というのも注目されている理由の一つである。NATEONTALKはアプリが公開されて1カ月もしないうちに、300万人が使っている。2011年まで1000万ユーザー獲得が目標だ。


NATEONTALKは無料通話の制限があり、1カ月に約300分(データ量に換算して200MB)まで使える。ハンズオーバーで、Wi-Fiから3Gに、3GからWi-Fiにネットワークが切り替わっても、途切れることなく通話できる。インターネット電話国際標準であるSIPにも対応する。AndroidからもiPhoneからも使える。





NATEONTALKのスクリーンショット








スマートフォンから無料でメッセンジャー+音声通話を利用できる


NATEONTALKが面白いのは、無料通話やメッセンジャーを利用している途中によく分からない話題やキーワードがあった場合、すぐ検索して話についていけるようにしているところである。これなら「そんなことも知らないの?」と言われる前に、話題が豊富な人として一目置かれそうだ。ソーシャルコマース機能があるので、メッセンジャーを使って友達にクーポンをプレゼントすることもできる。通話品質も悪くない。

 毎月のように新しいアプリが登場している無料通話アプリ市場であるが、データトラフィックの問題で、一番高い料金制度に加入しているスマートフォンユーザーだけが利用できるようにキャリアが制限しているから残念である。

 韓国の通信政策を担当する省庁の放送通信委員会は、どんな料金制度に加入していても無料通話アプリが使えるようにするため、無料通話アプリがどれぐらいのデータトラフィックを発生させているのかといったことを調べ始めた。


 放送通信委員会の専門委員らは、「モバイルインターネット電話や無料通話は誰でも利用できるようにするべきである。ただし通信キャリアとコンテンツプロバイダーの利害関係が複雑に絡んでいるため、(誰でも利用できるような)サービス拡大の時期は議論を続けないといけない」という意見を発表した。


 インターネットさえつながれば、どんな端末からも利用できるのがインターネット電話のはず。それを、一番高い料金を払わないと使えないなんて、ちょっと残念である。韓国のキャリアは、スマートフォンに加入している人がネットを使いすぎてトラフィックが飽和状態、早く4Gに切り替えないといけないと大騒ぎしているが、加入している料金制度でアプリを使えないようにするなんてせこいことをするからみんな暴走するのかもしれない。次はどんな「無料で○○ができるアプリ」が流行るのか、楽しみである。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年8月26日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110826/1036203/

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