コンテンツ産業も人々の生活もスマホを中心に回り始めている

 2011年10月31日、韓国のスマートフォン加入件数は2000万を突破した。これは人口の4割に当たる数字で、韓国は世界でもっとも速いスピードでスマートフォンが普及しているとマスコミは連日、関連ニュースばかり報道している。


 韓国ではスマートフォンに加入すると通常の携帯電話料金より2倍高い専用料金プランに加入しないといけなかった。フィーチャーフォンの携帯電話基本料金が月1万2000ウォン(約840円)前後なのに対して、スマートフォンは一番安い料金が月3万5000ウォン(約2300円)である。韓国では、スマートフォンの端末そのものは安くなっているのに通信料金が高いままでは若い世代の占有物になってしまう、という不満が漏れていた。スマートフォン格差によるデジタルデバイドも懸念されていた。


 そんな中、通信キャリアのSKテレコムは2011年10月31日、障害のある人とシニアに向けたスマートフォン専用料金を発表した。聴覚障害のある人向けの料金は月額3万4000ウォン(約2390円)、音声通話200分無料分をテレビ電話無料110分に切り替え、SMS無料送信件数も月1000件と通常の5倍に増やした。データ通信は月100MBまで無料で使える。


 視覚障害者向け料金(月額3万4000ウォン)に含まれるのは音声通話250分、SMS50件、データ通信100MB、シニア料金(同1万5000ウォン、約1050円)には音声通話50分、テレビ電話30分、SMS80件、データ通信100MBとなっている。障害者向け通信料金は国の政策によって35%割り引きされるので、既存料金の半額ほどでスマートフォンを利用できることになる。


 スマートフォンを使うのが日常になってくると、当然規制も変わる。2011年11月2日からはついにアップルのApp Storeにあるゲームカテゴリーが開放された。


 韓国ではアップルとAndroidのアプリケーション(アプリ)ストアの中でも、ゲームカテゴリーが2010年3月からずっとゲーム類等級委員会による「事前審議」の問題で閉鎖されたままであった。オンラインゲームをすべて事前審議して、利用できる年齢を決める等級制を適用してから販売できるようにしていたのである。しかしアプリケーションは個人も自由に参加できる市場だけに、事前に韓国政府の審議を経てアプリストアに登録するのは不可能に近く、ゲームカテゴリーを閉鎖したままアプリストアを運営していた。


 年齢制限を巡ってはアップルと韓国の法律の間で解釈の違いもあった。例えばポーカーゲームの場合、アップルは12歳以上が利用できるゲームに分類しているが、韓国の法律では射幸心を煽るゲームに分類され18歳以上に分類される。


 ゲームアプリの中で一部は韓国の法律を守り事前審議をして年齢等級制度に従い、キャリアが運営するアプリストアまたはエンターテインメントカテゴリーからサービスされていた。地下鉄やバスで見かけるスマートフォンユーザーのほとんどがゲームを利用しているが、アップルのApp Storeではなく韓国のキャリアが運営するアプリストアを利用するしかなかった。そのため人気のアプリストアはアップルの次はAndroidマーケットではなく、キャリアが運営するものであった。






LGU+は「Gamebox」という名前で独自に事前審議を経たスマートフォン向けゲームアプリを販売してきた。写真は同アプリストア画面とアプリを見せているところ


 ゲームカテゴリーが閉鎖されたことにより、韓国ではアップルやAndroid向けのゲームを開発しても韓国語でサービスできず、英語で制作して海外向けとしてサービスしていた。韓国のユーザーも韓国語ではなく英語に設定を切り替えて、住んでいる国を米国や日本などに指定して、海外のアプリストアにアクセスしてゲームを利用していた。


 2011年3月、やっと「ゲーム産業振興に関する法律」が改定され、スマートフォン向けゲームの場合は自律議審でサービスを提供できるようにした。ゲームカテゴリーが開放されれば、キャリアが運営するアプリストアよりもアップルやAndroidのアプリストアにユーザーが集まり、韓国のモバイルゲーム流通構造が大きく変化すると見られている。キャリアを経由しない流通に切り替わることで、より自由にいろんなゲームが登場すると予測されている。


 一方ではゲームカテゴリーの開放によって、韓国のモバイルゲーム会社だけが被害者になるのではという意見もある。韓国の会社には厳しく等級制度や青少年保護といった法律を適用して、海外のデベロッパーには「処罰するのが難しいから」と自律審議を適用してゆるく管理するのではないかという懸念だ。また、モバイルゲームは自律審議になるのに対し、パソコンから利用するオンラインゲームは事前審議を続けるのも公平ではないため、パソコン向け開発者からの反発が予想されている。


 スマートフォンユーザーが人口の4割にも届いたことで、ゲームの法律まで変えることになった。コンテンツ産業も人々の生活や娯楽もスマートフォンを中心に回り始めている。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年11月4日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111104/1038362/

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