韓国、携帯・スマホの通信事業者と端末をユーザーが選べる制度に移行

韓国の携帯電話販売制度が変わる。韓国放送通信委員会は2012年5月より、通信キャリアの販売代理店だけでなく、欧米のように、端末メーカーの直販や海外で購入した端末でもUSIM(第3世代携帯電話で採用する、契約者情報や電話帳データを記録するICカード。SIMカードの上位互換カード)さえ差し込めば使えるようにする制度を施行する。

 これは「開放型IMEI(携帯電話識別番号、International Mobile Equipment Identityの頭文字)管理制度」と呼ばれるもの。


 IMEIは、出庫されるときに端末に与えられる15ケタの識別番号で、韓国では今までキャリアのシステムに登録された端末だけが開通できる閉鎖的運営方式だった。そのためユーザーは、キャリアの代理店を経由しないと携帯電話を購入できない状況だった。


 開放型IMEI管理制度が始まれば、ユーザーは使いたい端末と使いたいキャリアを選んでUSIMを申し込んで差し込めばいい。キャリアと端末メーカーとが組んで、特定の端末を特定のキャリアだけで販売することがなくなる。海外で購入した端末も使えるので、海外で激安の携帯を購入して韓国で使うこともできる。海外メーカーの端末が韓国で発売されるまで待たなくてもいい。端末メーカーであるサムスンやLGはキャリアの代理店を頼らず、直接端末を販売するようになるだろう。





サムスンが2011年11月に発売したGalaxy S2ピンク。販売制度が変われば、サムスンやLGはキャリアの代理店だけでなく、こういったスマートフォン端末を直販するものと見込まれている


 盗難、紛失届がないものに限り、ユーザーはどの端末もUSIMを差し替えるだけで使えるようになる。携帯電話を買うときに割引の条件になっていた24カ月約定といった期間の契約に拘束されることもない。まずは3Gが普及していてユーザーがUSIMを使っているKTとSKテレコムからこの制度を適用し、LGU+は4Gに切り替えたときから適用する。


 放送通信委員会は、現在のキャリア中心の構造が変わることによって、キャリアとメーカーが代理店に支払う奨励金と補助金制度が見直され、自然と競争が激しくなり、長期的には端末価格の値下げや通信費の割引も加速するのではないかと期待している。

韓国は、メーカーが自社の端末販売を奨励するために支払う奨励金と、キャリアが顧客の端末購入金額の一部を補助する補助金に分かれている。代理店によっては奨励金のマージンを少なくしてもっと安く端末を販売するところもあり、携帯電話は定価がない状態だった。携帯電話端末価格は闇に包まれたまま、キャリア代理店の言い値が定価であり、同じキャリアの代理店で同じ機種を選んでも、地域ごとに全然値段が違っていた。2012年5月以降、販売できる場所が増えることで、価格差がどこから来るのかが明確になり、行き過ぎた値引きキャンペーンなども是正されるだろう。

 キャリアの代理店に頼らないとなると、一番大きな変化が見込まれるのがMVNO(mobile virtual network operator)事業者の端末販売である。大手キャリアから通信ネットワークの卸売りを受けて、より安い料金で自社ブランドのサービスを提供しているMVNOの場合、端末の流通に困っていた。メーカーから直接端末を買い、キャリアを自ら選んで、USIMを自分で差し込むだけになれば、MVNOを利用してくれるユーザーも増えるのではないか、中古端末の再利用も増えるのではないか、というのが放送通信委員会の狙いでもある。


 開放型IMEI管理制度に移行する際の懸念として、盗難・紛失に遭った端末の不正利用がある。これを防ぐため、届け出のあった端末のIMEIをキャリアが共有・管理できるようにシステムを変え、IMEI統合管理センターを構築する。海外で購入した端末も使えるようになるので、海外のキャリアともIMEIの情報共有をしていく。また端末の外側の見えやすいところにIMEIを明記するよう制度も変えていくとする。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年11月18日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111118/1039079/

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