2011年11月21日、韓国の通信キャリアKTが第2世代携帯電話(2G)サービス終了承認申請書を放送通信委員会(日本の総務省に相当)に提出した。これで3度目になる。
KTは2011年4月18日と7月25日にも放送通信委員会に2Gサービス終了承認申請書を提出したが、放送通信委員会は「2Gユーザーがまだ80万人ほど残っている」、「KT全加入者の1%以下(約16万人)になれば検討する」として、これを承認しなかった。
2011年11月21日時点でKTが発表した同社2Gユーザーは約15万人で全加入者の1%未満であるため、今度こそは2Gサービスを終了させたいと意気込んでいる。今回放送通信委員会が承認すれば、2カ月ほどの猶予を経て、ソウル地域から順にKTの2Gサービスは終了することになる。
KTの2Gサービス廃止計画を案内するWebページ
KTは2011年6月末には2Gサービスを終了し、2Gで使っていた帯域幅の1.8GHzをLTE(携帯電話でも大容量通信が可能になる移動体通信仕様)に転換して4Gサービスを始めるのが目標であった。ライバル事業者であるSKテレコムとLGU+が周波数を獲得してLTEサービスを始める中、KTは独自の方式であるWibro(モバイルWiMax)を4Gサービスとして進めていたが、他のキャリアにユーザーを取られないためにLTEも始めることにしたのだ。
しかしKTが2G加入者を減らす過程の中で、半ば強引にユーザーを3Gに移行させていることが問題になった。2011年6月には2G加入者の中で通信料金を滞納しているユーザーを職権で解約させ、約80万人いた2Gユーザーを約46万人にまで一気に減らした。また2Gユーザーに3Gに転換するよう勧誘する電話を1日に何度もかけたり、放送通信委員会が承認していないのに9月22日には「2G終了計画」の新聞広告を出してユーザーを混乱させたりといったこともあった。
筆者の母は10年以上も使い慣れている携帯電話番号を変えたくないのでまだKTの2Gサービスを使っている。電話番号は1997年に加入した当時のままで、「018-3XX」局番で始まる。しかし3Gになると「010-XXXX」に局番が変わる。料金も高くなる。KTは2Gから3Gに変えても既存の電話料金を使えるようにする、端末もスマートフォンを無料で提供する、1年間料金の割引もするというが、「電話」しか使わないシニアユーザーにとって3Gやスマートフォンは料金の負担が大きくなるだけでそれほど魅力的ではないようだ。
母によると、KTの勧誘電話はひどい時は1日に5~6回もあるという。しかも全部違うテレマーケティングセンターからで、今勧誘の電話を断ったばかりだというのにまた勧誘の電話がかかってくるという始末でいらいらしてしまうと嘆いていた。
野党の民主党議員らは放送通信委員会にある苦情センターに寄せられた不満内容を独自に調査。「放送通信委員会が、KTの2Gユーザーが全加入者の1%に満たないという理由だけで2Gサービスの終了を承認した場合、消費者の主権が侵害されているのを見て見ぬふりをした責任は避けられない」と批判するまでに至った。
民主党議員らはほかに、「KTが2Gサービス終了を早めその周波数を4Gに転換するため、あらゆる不法的手段で2Gユーザーを回遊していることから苦情が止まない状況である」、「徴兵で入隊している人や正常に料金を払っているユーザーまでも勝手に職権解約したケースがある」、「放送通信委員会は利用者を保護すべき責務を放棄している」、「KTが2Gユーザーをどのようにして3Gに転換させたのかも調査するべきである」と主張している。
放送通信委員会も2Gサービスをある日突然終了させることはないとしており、8月に電気通信事業法の改訂案を国会に提出している。基幹通信事業の休・廃止承認制度を改善した改定案だ。公共の利益を害する恐れがある場合は休・廃止を承認してはならないとして、利用者の被害規定を具体的に明記するようにした。この改定案が国会を通れば、来年5月あたりから適用されることになる。
被害規定の中には「休止または廃止計画に関する利用者への通報が適正でないと認められる場合」、「利用者保護処置計画書など大統領令で定める書類がそろっていない場合」、「医療者保護処置計画及びその施行がしっかり行われず休止または廃止によって顕著な利用者被害が発生すると予想される場合」などの条項が盛り込まれた。
ユーザーの残り少ない2Gサービスを中断してLTEサービスを提供することで周波数を効率よく使いたいというKTの立場も理解できるが、ユーザーを見捨てて無理やり強引にサービスを中断してはならないという反発も強いため、放送通信委員会もそう簡単にサービス中断を承認できないだろう。放送通信委員会は11月末まで結論を出すとしている。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2011年11月24日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111124/1039163/