韓国放送通信委員会(総務省のような省庁)とインターネット振興院が毎年発表する「韓国インターネット利用実態調査」結果が発表された。この調査は全国3万世帯を対象に、2011年7月1日から9月15日まで行われた。
2011年度の特徴はスマートフォンやタブレットPCといったスマートデバイスを1台以上保有している世帯が全体の42.9%と前年比9倍増加していること、3~5歳の幼児のインターネット利用率が66.2%と50代の57.4%よりも多いこと、ネット人口の67%がSNSを利用していて、その内43%がSNSの情報は信頼できると答え、45%が普通と答えたことである。
3歳以上の国民で、月に1回以上ネットにアクセスする人を調べたインターネット利用率は78%であった。3~5歳のネット利用率は66.2%と、調査を開始した2006年と比べ5年間で14.8ポイント増加した。10~30代の場合は99.9%に達する。
ネットで利用しているサービスはEメールが85.7%でもっとも多く、SNSが66.5%、ネットショッピングが64.5%、インスタントメッセンジャー54.3%、ネットバンキング42.2%の順だった。インスタントメッセンジャー利用者の49.4%、SNS利用者の31.5%、ネットバンキング利用者の23.8%はパソコンだけでなくスマートフォンからも利用していた。これもそれぞれ前年比で47.9ポイント、29.9ポイント、21.2ポイント伸びている。
SNS利用者の場合、25.7%が1日1回以上書き込みをしている。利用目的は85.5%が「知人との親交を深めるため」であると答える一方、会社員の場合、58.4%が業務目的でSNSを利用していると答えた。
SNSを利用して知人との関係が密接になったと答えたネットユーザーは47%、SNSを通じて最新情報を得ていると答えた人も24%いた。
SNSの情報に関しても43%が「信頼できる」と、45%が「普通」と答えたことは韓国で興味深い現象として受け止められた。その理由は、韓国政府はSNSを信頼できないとして取り締まりを強化しようとしているのに、ユーザーは信頼できるとしているからだ。
SNSへの書き込みを審議する組織を設置
2011年12月1日、韓国放送通信審議会はSNSで書き込まれる情報の審議を担当するニューメディア情報審議部署を新設すると発表した。同審議会は、SNSで問題と判断される発言や写真に対して投稿者に削除を勧告し、これに従わない場合はIDを遮断してSNSにアクセスできないようにするという。
TwitterやFacebookといったSNSでは、韓国政府のSNS審議方針に対して、「表現の自由に対する過度な規制」であると反発が起きている。
ユーザーの間では、SNSに書き込まれる政治批判を監視するためではないかという反発もあり、SNS審議は検閲と同じだと非難する。人権団体や言論組織は「私的交流のために使われるSNSを規制対象にすること自体おかしな発想」、「政治的目的によって通信と表現の自由を制限しようとしている」と反対意見を表明している。
韓国放送通信審議会は「民主的な手続きに沿って対処する」、「青少年に悪影響を与えるアダルト・麻薬・ギャンブルなどに関する有害情報、名誉棄損、国家保安法違反(北朝鮮関連)などの書き込みが対象となる」というが、人権団体らは「客観的に誰がみても有害情報に見える発言はSNSの中で自浄されているので、政府機関が監視するまでもない」と反対する。
スマートデバイスの普及は加速し、より高速にインターネットを利用できるLTE対応スマートフォンも好調な滑り出しを見せている。スマートフォンを購入して真っ先にインストールするのがメッセンジャーの「カカオトーク」とTwitterと言われているほど、SNSは盛んである。このような状況でSNSの発言を取り締まるという政府の方針は、韓国だけが時代を逆行することになるのではないか心配だ。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2011年12月2日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111202/1039356/