政府機関もスマホのアプリ開発競争に参戦

韓国インターネット専門家協会が主催する「2011スマートアプリアワード」で、ソウル市の「i Tour Seoul」が公共部門大賞に選ばれた。韓国インターネット専門家協会はWebアワードを主催する団体でもあり、デザイン、UI、技術、コンテンツ、サービス、マーケティングの観点から、優秀なアプリとWebサイトを選定している。

 「i Tour Seoul」は2009年に提供開始したソウル市の観光案内アプリで、公共機関がアプリを提供するブームの火付け役にもなった。


 「i Tour Seoul」のコンテンツは2001年ソウル市がオープンしたソウル観光ホームページのもので、韓国語、日本語、英語、中国語で情報を提供している。スマートフォンが発売されてから2009年12月にはアプリ、2010年4月からはモバイルページも追加された。アプリも前述の4カ国語でサービスされていて、スマートフォンを持って韓国を訪問する外国人観光客は、重いガイドブック代わりに使える。2012年1月にはタブレットPC向けアプリも公開する。


 アプリの中身は、観光スポット案内、グルメ、宿泊、交通案内、推薦旅行コース、ショッピングなど、ソウルを楽しめる2万件の情報。利用者の位置情報を使って徒歩ナビをしてくれる機能や、AR(拡張現実)機能を使って、カメラを街中にかざすと、その周辺のグルメやショッピング、名所案内がスマートフォンの画面に登場する機能も付いている。公共機関のアプリなのでもちろん無料で利用できる。ネットにアクセスすることなく利用できるアプリなので、データローミングをうっかり長時間使って高額請求される心配もない。








「i Tour Seoul」の画面。真ん中がメニュー画面となる。左は位置情報を使い、近くのお店や施設を検索したところ。右は特定の観光地についての情報ページ

ソウル市が観光アプリに力を入れている一方、ソウル市の江南区では、地域経済活性化のため、通訳アプリ「江南観光通訳秘書」を2011年12月に公開した。お店の人が外国人観光客とうまくコミュニケーションできるようにするためのアプリで、無料で利用できる。英語、日本語、中国語の通訳ができるもので、音声認識をして通訳する機能や、文字を入力すると通訳をして音声で読み上げてくれる機能もある。韓国語で話したことを音声認識で通訳して日本語を画面に表示し、日本語で読み上げてくれるので、日本語が全くできないお店の人も、スマートフォンの画面をお客さんに見せれば会話成立というわけだ。ショッピング、食事、ホテル、交通などカテゴリー別に3400の文章が登録されてあり、それを応用して使うこともできる。

韓国は2011年の1年間で1000万人の外国人観光客を誘致することを目標にしている。2011年10月時点で800万人を突破した。政府機関である韓国観光公社もより便利に韓国を旅行できるようにして観光客の満足度を高めようと、観光アプリの開発に力を入れている。

 「大韓民国すみずみlive」は、ユーザーが観光地の動画を撮影してスマートフォンから投稿し、他のユーザーと共有できるアプリ。2011年6月の公開以降、人気を集めている。2011年4月からは韓国観光情報3万件、画像100万件をアプリ開発に使えるようOpen APIサービスを行っている。観光アプリを開発するためのガイド、サンプルも提供していて、アプリの著作権は開発者が持てる。


こうした観光アプリがあることは他の国も同じなのだが、IT強国を自負する韓国ならではの面白いところは、金浦空港と仁川空港で「i Tour Seoul」アプリを搭載したスマートフォンをレンタルできることである。KTのローミングセンターで予約するとiPhoneを、中小事業者のローミングセンターを利用するとGalaxy SやOptimusなどのスマートフォンをレンタルできる。1日5000ウォン前後(約350円)なので、スマートフォンと観光アプリを韓国で体験してみるのも楽しい旅の思い出になるかも。1日の利用料金にはデータ通信料も含まれている。


 スマートフォンを買うかどうか悩んでいるなら、ソウル旅行のついでにスマートフォンをレンタルして使ってみるのもおすすめだ。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年12月16日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111216/1039767/

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