オバマ大統領が“宣伝”したあの大人気モバイルアプリ

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2012年3月26日から27日にかけて開催された核安全保障サミットのために韓国を訪問したオバマ米大統領は、3月26日、韓国外国語大学で講演を行った。30分の講演は「国際社会における韓国の役割」がテーマだった。

 核安保サミットという目的があるだけに、講演の内容は「世界平和」とか、「核兵器を減らそう」とか、そういう内容だった。しかし、この講演で、オバマ大統領が韓国の人気SNSのサービス「カカオトーク」の名を出したことから、ものすごい話題になった。


オバマ大統領の発言は、「スマートフォンとTwitter、Me2day(NAVERのSNSつぶやきサイト)、カカオトークによって全世界は一つにつながっている。世界の多くの人々が韓流に染まるのも不思議ではない」という内容だった。


 For like your parents and grandparents before you, you know that the future is what we make of it. And you know that in our digital age, we can connect and innovate across borders like never before — with your smart phones and Twitter and Me2Day and Kakao Talk. (Laughter and applause.) It’s no wonder so many people around the world have caught the Korean Wave, Hallyu.(駐韓米国大使館のFacebookから引用)


 講演のテーマとは関係ない導入部の話なので、韓国は進んでいるね、とリップサービスも込めて発言したのだろうけど、オバマ大統領の口からサービス名が出ただけでものすごい宣伝効果をあげた。「韓流」を韓国語の読み方である「ハンリュ」と発音したのにもまたびっくり。この発言は各種報道、Twitter、Me2day、カカオトークを経由してあっという間に広がった。


 新聞には一斉に「オバマ大統領がカカオトークに言及」という見出しが躍り、モバイル業界はお祭り騒ぎ! カカオトークが6月から提供する予定のソーシャルゲームまで注目されるようになった。

カカオトークは2010年3月にサービスを開始したメッセンジャーアプリである。市場先占効果もあってか、開始2年で4200万ダウンロードを突破した。








韓国の無料メッセンジャーアプリ「カカオトーク」。海外を含め4200万ダウンロードを超えている


同アプリはスマートフォンのアドレス帳に登録してある電話番号から、同じくカカオトークを使っている人を自動登録してくれる機能が便利なメッセンジャーで始まったが(最近はこの自動友達登録機能がウザい、という“カカオトーク疲れ”の人も増えている)、Facebookのような個人のページを作れる「カカオストーリー」というアプリもサービスしている。4月からはニュースと雑誌の記事もシェアできるサービスが始まる。関心のある分野のニュースを友達として登録すれば、スマートフォンのメッセンジャーにリアルタイムでニュースが送信されるという仕組みである。









カカオトークが始めたFacebookのような個人ページアプリケーション「カカオストーリー」のスクリーンショット。写真を簡単にデコレーションして掲載できるところが人気


6月からは、ソーシャルネットワークをベースにその領域をゲームに広げようとしている。友達とメッセンジャーでやり取りしながら、スマートフォンでちょっとした対戦ゲームを楽しめるサービスになる模様。カカオトークがゲームプラットフォームになる。このため、ゲーム制作会社と契約を結んだ。カカオトークの中でしか楽しめないゲームを提供するという。


 ここではソーシャルネットワークゲームといえば、日本のGREEやDeNAが成功モデルとしてよく取り上げられる。90年代後半からオンラインゲームが盛んで、世界市場でも高いシェアを誇る韓国だが、ソーシャルネットワークゲームではまだこれといった代表作がない。スマートフォンのユーザーの間で人気のゲームといえば、韓国でも「Angry Birds」である。


 オバマ大統領や米政府機関もSNSを積極的に活用していて、オバマ大統領の講演前には、駐韓米国大使館のFacebookから「Ask President Obama」というイベントを行い、大統領への質問を募集した。そこで選ばれた3つの質問にも当日の講演で答えてくれた。


 「インターネットで大統領ではないふりをして、自身をかばう書き込みをしたことがありますか?」という質問には、「この質問には驚いた。そういうことはしたことがない。もしかしたら、娘たちはしたかも」なんていうユーモアのある答えが返ってきた。


 SNSもカカオトークの人気も止まらない。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月30日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120329/1044720/

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