スマートスクール最前線 from 韓国 ; 第2回:2014年にはユビキタス学校

スマートスクール最前線 from 韓国

第2回:2014年にはユビキタス学校



2012/07/30 00:00

趙 章恩(チョウ・チャンウン)=ITジャーナリスト.
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 韓国の学校では2000年ごろから教師がオリジナルのデジタル教材を作って授業で使うようになった。教育用サイトのEDUNETもオープンした。EDUNETには、教科課程に合わせて参考資料が掲載されているので、教科書だけでは理解が難しい単元はここに掲載されている動画やアニメーションを見て補える。参考書を買うお金がない、塾に行きたくても行けないといった山間地域や島に住む子供にも多様な勉強ツールを提供している。


 2002年には教育行政情報化システムである「NEIS(National Education Information System)」が始まり、本格的にデジタル教科書の開発に着手した。2007年には教育科学技術部が「デジタル教科書商用化推進計画」を発表、2008年からは全国の小・中学校でデジタル教科書の実証実験が始まった。


 国語、数学、英語、社会、科学の5科目が中心で、研究学校に指定された学校では1学年に1クラスをデジタル教科書研究クラスに指定し、デジタル教科書を使わない他のクラスと学習効果や子供の健康状態を比較して政府に報告している。また担当教師は、デジタル教科書のユーザビリティの改善やデジタル教科書を使った最適な授業法の開発にも参加している。


 2011年からはデジタル教科書だけでなく、教室と学校をスマート化する「スマート教室実証実験」も開始された。2014年にはデジタル教科書が全面導入されると同時に、ソウルから高速鉄道で1時間ほど離れた副都心には「ユビキタス学校」が開校する計画である。


「デジタル教科書の方が好き」


 2011年9月6日から3日間、ソウル市にあるCOEX展示場で「スマートラーニング、スマートな世界(Smart Learning, Smart World!)」をテーマにした「e-Learning Korea 2011」が開催された。eラーニング、ユビキタス・ラーニングの進化形である「スマートラーニング」の各種サービス/コンテンツを体験できる展示会と、国際会議などのイベントが開催された。10カ国から97の企業が参加し、合計で2万3000人が来場した。




図1 展示会で行われたデジタル教科書の公開授業


2011年9月にソウル市で開催された「e- Learning Korea 2011」での様子。デジタル教科書の実験校では米HP社のパソコンが使われているが、この日の公開授業で使われたのはSamsung Electronics社の 「GalaxyTab 10.1」。


会場では、2009年からデジタル教科書研究学校に指定されている仁川市のトンマク小学校の教師と6年生の生徒が、デジタル教科書を使った公開授業を行った(図1)。韓国Samsung Electronics社のタブレット端末「Galaxy Tab 10.1」を使い、生徒はデジタル教科書を見ながら先生の説明を聞き、デジタル教科書の中にある問題を解いていた。

 公開授業に参加した子供たちからは、「デジタル教科書なんてインターネットが使える人なら誰でも使える。難しいことなんて何もない」「写真や動画を見ながら授業を受けられるし、分からない単語はすぐ検索できるからすごく便利。ノート機能もあるから電子ペンでメモもできる。家からはサイバー家庭学習にアクセスして予習・復習もできるし、デジタル教科書の方が好き」という声が聞かれた。


授業のメモをクラウドに保存


 展示会では「未来教室」も公開された。壁がガラスになったり電子黒板になったりする「マジックグラス」や、教師・生徒・保護者がつながる教育クラウド・コンピューティングなどのデモがあった。


 教育クラウド・コンピューティングでは、現段階で教師が学校の内外で校務を行い、授業の準備ができる。ただし、生徒と保護者向けのクラウドの完成はまだ先。これができると、生徒は授業中にした筆記やメモをクラウドに保存して、教科書はもちろんノートを持ち歩かなくても家庭で予習・復習ができるようになる。保護者はインターネットさえつながる場所であれば、スマートフォンやタブレット端末から子供の学校生活や先生からの連絡事項、成績表などを確認できるようになる。


HTML 5ベースでの開発始まる


 e-Learning Korea 2011の会場で来場者の注目を最も集めたのは、「Future-School」、「Smart-Campus」のコーナーである。ここでは、教科書の内容を3D映像に変換した学習コンテンツや、eラーニング用の映像を簡単に作成できるソリューションなどが展示された。


移動通信市場でトップ・シェアを持つ携帯電話事業者のSK Telecom社と、Samsungグループでeラーニングや社員研修を専門とするSamsung SDS社も出展企業に名を連ねた(図2)。SK Telecom社は、小・中・高生向けに「Tスマートラーニング」というアプリケーションを開発した。スマートフォンやタブレット端末から利用できるデジタル参考書が出版社別・科目別に登録されており、ユーザーは自分で学習目標を立てて参考書をインストールして勉強し、アプリケーション内で質問もできるようになっている。利用料は1科目当たり月2万6000ウォン(約1730円)である。




図2 賑わいを見せるSamsungグループ企業のブース

「e-Learning Korea 2011」におけるSamsung SDS社のブースの様子。同社はSamsungグループ内で、eラーニングや企業研究を担当している(a)。(b)は、Samsung SDS社が開発した学習支援アプリと端末。






図3 タブレット向けの大学入試対策学習アプリ

Samsung Electronics社のGalaxy Tabは、韓国ではジネスマンより中高生の間で学習用として人気が高い。


Samsung SDS社は、企業の社員研修向けに、スマートフォンやタブレット端末を使っていつでもどこでも研修が受けられるソリューションなどを紹介した。また、タブレット端末向けの大学入試対策学習アプリケーションなども出展した(図3)。

 韓国ではデジタル教科書の導入やスマート教育は、逆らえない時代の流れとして受け止められている。大学入試がその後の人生を決める学閥社会であり、早期留学をはじめとして子供の教育のためならお金を惜しまない高い教育熱、そして2011年10月時点で国民の4割に当たる2000万人以上がスマートフォンを使うという情報化の早さも、それを後押ししている。


 2011年11月からは2014年のデジタル教科書商用化のために、技術標準に関する研究会が盛んに開催されている。2010年から「デジタル教科書2.0」として次世代デジタル教科書がHTML 5をベースに開発されているが、より細かく技術標準を決めることでどの端末からも使えるように互換性を高めていく。


出典:日経エレクトロニクス,2011年12月26日号 ,pp.21~22 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)


Original link
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20120719/229185/
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