第4回:韓国 . 受験に欠かせない,学習用タブレット端末
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出典:日経エレクトロニクス,2010年12月27日号, (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
韓国の2010年は,スマートフォンとモバイル・インターネットなしでは語れない。特に,2010年9月末で出荷台数が500万台を突破したスマートフォンは,人々や社会を変えたとまでいわれている。
韓国のインターネット環境は,一気にスマートフォンと無線LANに切り替わり,地方選挙では「地元をホットスポットにする」という公約まで登場した。これは,老若男女関係なくスマートフォン・ユーザーが増えているという証拠ではないだろうか。
2010年末には,韓国でのスマートフォンの出荷台数は600万台を突破し,2011年には1500万~1600万台に達しそうな勢いである。
タブレット端末で受験勉強
スマートフォンの次は,タブレット端末がヒットするのが世界の流れである。ただし,韓国ではまだ「iPad」が発売されていない。2010年11月に発売になった韓国Samsung Electronics Co., Ltd.の「GALAXY Tab」は,定額基本料金や端末代金を含めると毎月1万円程度必要になるため,スマートフォンほど気軽に買える状況ではない。
そこで,韓国独自のヒット商品として売れているのが,さらに小さくて安い「PMP(portable multimedia player)」と呼ばれる学習用タブレット端末である。PMPは,電子辞書や音楽・動画再生,無線LANなどの機能を備えている。
韓国政府は教育機会均等を目的として,公営放送である教育放送のWebサイトで大学入試講座の動画を無料で提供している。ここから大学入試の問題の一部が出題されるため,高校生はこの動画をPMPなどで見ているのだ。高校生の多くは夜10時まで学校で自習をし,それから塾へ行く。PMPをいつも持ち歩き,空いた時間にPMPで勉強するのである。
PMPの中で人気なのが,韓国i-station Inc.の「Buddy」である(右上の写真)。中高生をターゲットに売り出し,1カ月で約8000台が売れた。PMPでは通常,パソコン経由で教育放送の動画をダウンロードするのに対して,Buddyは無線LAN経由でダウンロードできるのが特徴だ。価格は,32Gバイト品が42万9000ウォン(約3万円)である注1)。
注1) 2010年12月10日時点の為替レート1ウォン=0.07円で換算。
学習用端末市場に対してSamsung Electronics社は,GALAXY Sでしか利用できない無料の受験勉強用動画アプリケーション・ソフトウエアを同端末に搭載し,それが受験勉強の役に立つとして好評を得ている。PMP市場でシェア7割以上の韓国Cowon Systems, Inc.は,Android 2.2と5型の液晶ディスプレイを搭載し,無線LANと3Gデータ通信が使える端末を2011年1月に発売する予定である。このほかに,電子書籍端末や音楽プレーヤー,ナビゲーションなどのメーカーも学習用タブレット端末に目を付けており,韓国の新学期が始まる2011年3月に向けて新商品が目白押しになるだろう。
学習用のPMPやスマートフォン,タブレット端末を実際に購入するのは,高校生の親である。就職が厳しくて名門大学に入れないとその後の人生が安定しない韓国だけに,「子供のためになる」「勉強に役立つ」という宣伝文句に親は弱いのかもしれない。
高級+省エネでヒット
白物家電でヒットしたのが,通常よりも価格が7万~8万円ほど高い,Samsung Electronics社の高級冷蔵庫である。2010年3月の発売から同年6月までに1万台以上売れた。韓国は貧富の差がかなり開いており,価格が安い中国Haier Electronics Group Co., Ltd.の製品が売れる一方,高ければ高いほど売れる市場も存在する。
韓国では集合住宅に住む割合が圧倒的に高く,4人家族で4LDK,バスルームは二つが基本と,間取りが広い。大きな家電を置く空間的な余裕があり,キッチンとリビング・ルームがつながっている構造なので,家電もインテリアの一部として認識されている。
この高級冷蔵庫は,イタリアのジュエリー/時計デザイナーのMassimo Zucchi氏が設計した(図1)。以前にもデザイナーが設計したエアコンや冷蔵庫,キムチ冷蔵庫などがあったが,話題性だけで実際にはそれほど売れなかった。しかし,今回は「BVLGARI」や「OMEGA」などのブランドを手掛けてきた世界的に有名なデザイナーだったことに加えて,最新の省エネ機能を備えていたことが人気の秘訣となっている.
この高級冷蔵庫は,四季に応じて自動的に温度を調節する「季節自動モード」やユーザーの生活パターンを記憶して冷蔵庫内を最適な状態に保つ「生活自動モード」など,センサを活用する「スマート・エコ・システム」を搭載している。こうした機能により,容量737Lの高級冷蔵庫の月間消費電力は31.8kWと,世界最小クラスとした。
ヒットしたもう一つの要因が,宣伝に「国民的息子」と呼ばれ,主婦に人気の俳優 李昇基(イ・スンギ)氏を起用したことである。冷蔵庫の宣伝に登場するのは女優が多かったが,あえて人気の男性を起用したことで「イ・スンギが宣伝している冷蔵庫」と指名買いされるまでになった。検索サイトでも「Massimo Zucchi冷蔵庫」より「イ・スンギ冷蔵庫」と検索した方が,ヒット件数が多いようだ。
最短最多販売記録を更新
洗濯機では,発売から2カ月間で3万台を売り,Samsung Electronics社の最短最多販売記録を更新するヒット商品が登場した。泡を使って汚れを落とす「バブル・エコ・ドラム式洗濯機」である(図2)。既存のバブル洗濯機に比べて洗濯時間と電気代を半減したことから,大ヒットとなった。価格は他社のドラム式洗濯機よりも2万~4万円ほど高めの設定で,13kg対応品が9万~13万円程度である。しかし韓国で「高くても環境に優しい製品を買うのがおしゃれ」という流行を巻き起こした。今回の洗濯機は,泡を発生させる「バブル・エンジン」を改良して,泡発生に要する時間を半分にした。さらに,泡を空気と一緒にドラムへ押し込むことで洗濯開始から約2分で泡を衣類へ浸透させ,汚れを早く落とすようにした。この結果,通常は1時間50分かかる標準洗濯時間を55分まで短縮したのである。水使用量は150L/回から98L/回へ,電気使用量は540Wh/回から270Wh/回へと減らした。
このほかに,従来モデルから好評だった,80℃の空気でにおいやアレルギー物質を除去する「エアー・ウオッシュ機能」に加えて,今回はすすぎの水量を調整して洗剤の残りを最小限にする「スキンケア機能」や,防水加工されたスポーツウエアも洗える「バブル・スポーツ・コース」を追加した。