85%引き! GALAXYの“売り尽くし”に韓国中が大騒ぎ

.
2012年9月10日~13日、韓国ではサムスン電子の最新スマートフォン「GALAXY SIII LTE」が85%ほど値引きされた破格の値段で販売され、大騒ぎになった。出荷価格110万ウォン(約7万7000円)の端末を17万ウォン(約1万2000円)で販売したのだ。

 これはキャリアのKTが始めたもので、ほかのキャリアを利用しているユーザーがKTにナンバーポータビリティで乗り換えたときだけ適用されるセール価格。SKテレコムもKTにユーザーを取られないようGALAXY SIII LTEを同じ値段で販売した。このチャンスを逃すまいとナンバーポータビリティで同機を申し込む人が殺到した。キャリアのデータを見ると、9月10日と11日の2日だけで約20万人がGALAXY SIII LTEを購入した。






GALAXY SIII LTE



 この破格の販売は、キャリアの補助金が増えたからで、サムスン電子の端末価格には変動がないという。LTE加入者競争が激化していることから、KTとSKテレコムが端末購入補助金を払ってでも、2012年末の目標値を達成するためにユーザーを確保しようとしたのだ。


 韓国の携帯電話加入者数は7月末時点で約5400万人である。人口が5000万人なので新規加入の需要はほぼなく、キャリア間でユーザーを奪い合うしかない状況である。ほかのキャリアからユーザーを奪うには、端末を安く買えるように補助金を増やすのが一番!ということで補助金競争はなくなっていない(関連記事)。


 通信政策を担当する省庁の放送通信委員会は、キャリアの端末購入補助金や過剰なマーケティング競争を規制している。2010年からキャリアは年間売り上げの22%を超えてマーケティング費用を使ってはならないと定めたが、キャリア側は、摘発され課徴金を払ってでも補助金を支払っている。キャリアのプロモーションを利用して安く端末を買っては中古市場で高く売る「フォンテク族」(「財テク」のように携帯電話端末中古取引の差額でもうける人たち)までいるほどだ。


 GALAXY SIII LTEの32GBモデルの価格は8月まで70万ウォン(約4万9000円)だったため、数日違いで3万7000円も損をしたユーザーが怒るのは当たり前。Twitterでは「先にGALAXY SIIIを購入したユーザーの端末価格を補助すべき」だとKTやSKテレコムに怒りをぶつけるつぶやきが後を絶たない。


サムスン電子側は否定しているが、キャリアの代理店ではGALAXY SIII LTEは今回の売り尽くしセールを最後に生産が終了するとユーザーに説明している。32GBの機種が足りなくて、本来は海外輸出用に製造された16GBモデルを3万ウォン安い14万ウォン(約9800円)で販売している代理店もあるという。


 韓国ではiPhone 5の発売は9月にはない模様である。このことから、韓国のマスコミは「サムスン電子がiPhone 5の発売前にGALAXY SIIIの在庫を売り払って、新しくアップルに対抗できる新機種を発売しようとしているのではないか」、「GALAXY SIIIよりGALAXY Note2を戦略端末として後押ししたいようだ」と分析する。サムスン電子はGALAXY SIIIの64GBモデルも発売する予定だったが、これはお蔵入りとなりそうだ。


 結局今回の売り尽くしセールは、キャリアのLTE加入者確保とサムスンのiPhone 5対策在庫処分のタイミングが重なり、破格な値段で販売できた。一度値段が下がったGALAXY SIIIを元の値段で買いたがるユーザーはないので、生産を終了するしかないという見方もある。


 生産終了の報道に、GALAXY SIIIを安く買えたと喜んでいたユーザーも、「最新機種を安く買えたと思ったら在庫処分だったなんて」、「生産終了というのは、端末に不具合があっても交換してもらえないのでは? アフターサービスはどうなるの?」とコメントを残し、がっかりした様子だった。


 それにGALAXY SIIIを使っていないユーザーも怒った。「キャリアがサムスン電子のスマートフォンだけに補助金を出しているのでほかのメーカーの端末は安くならない」、「結局みんなサムスン電子のスマートフォンを使うしかない」、という不満を記事のコメント欄に書き込む人も増えている。


 放送通信委員会はナンバーポータビリティを利用するときだけもらえる端末購入補助金は減らし、加入者がまんべんなく得をするように料金を割引するようキャリアに要求しているが、うまくいかない。同委員会の調査によると、2012年5月から7月までたった3カ月間でキャリア3社が支払った端末補助金は2兆ウォン(約1400億円)にのぼる。


 情報に敏感な学生やビジネスパーソンは補助金を狙って常に安い料金で機種変更できるからいいが、これは結局、キャリアが、情報にうといユーザーから高い料金をもらい、ほかのユーザーを補助しているようなものなのでいい気分はしない。別に私がGALAXY SIIIを買い逃したからそう言っているわけではない。でもやっぱり悔しい!






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年9月14日]


-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120914/1063386/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *