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サムスン電子とLG電子がついにWindows 8パソコンを発売した。
サムスンはWindows 8ノートパソコンを「スマートPC」と呼ぶ。タブレットの携帯性とノートパソコンの高性能なところを組み合わせたパソコンという意味で、Windows 8のノートパソコンを、タブレットやUltrabookと区別している。
サムスンのスマートPCは「ATIV」というブランド。9月初旬にベルリンで開催されたIFA2012で公開した当時のまま、まずは11.6型のキーボード脱着式モデルから先に発売した。一般向け「ATIV Smart PC」とその上位モデルとなる「ATIV Smart PC Pro」の2つがある。ATIVグローバルサイトで紹介しているWindows 8タブレット「ATIV Tab」はまだ発売時期は決まっていないという。
スマートPCには電子ペン「Sペン」が付属する。文字の認識率が高いので使いやすいと評判が高く、スマートフォンのGALAXY Noteの人気を後押ししている。ディスプレイに手書きした文字や数式を瞬時にテキストに変換してくれる「Sノート」、スマートTVやスマートフォンと連動してファイルや今見ている画面を共有する「All Share Play」といったサムスンのスマートフォンで人気を集めるアプリは全てATIVでも使えるようにした。
発売されたスマートPCは11.6型ディスプレイだが、キーボードは13型向けのもので小さすぎないので、書類を作るときも打ち間違いが少なくなった。韓国ではメールなどの文面に「タブレットで書いていますので誤字はご容赦ください」と一言添える人が多い。韓国語はローマ字で書いて変換するのではなく、ハングル文字の母音と子音の組み合わせで書くのでタッチ式のソフトウエアキーボードや小さい携帯型のキーボードだとつい隣の文字を押してしまう。「変換」というもう1回チェックする段取りがないので、誤字チェックしてくれないメールや掲示板の書き込みだと誤字に気付かないことがよくある。サムスンが「ATIVはキーボードが大きい」と宣伝しているのは、英語や韓国語を使うユーザーからの要望が多かったからだろう。
一般向けのATIV Smart PCの仕様は、CPUがIntel Atom Z2760 (1.5GHz)、11.6型ディスプレイ(1366×768ドット)、2GBのメモリーに64GBのSSDを搭載。9.9mmの薄さでキーボードを外すと744gになる。価格は109万ウォン(約7万5000円)である。1回の充電でネットサーフィンは14.5時間、動画連続再生は9.5時間利用できる携帯性が売りだ。
ATIV Smart PC Proは、CPUがIntel Core i5、11.6型ディスプレイ(1920×1080ドット)、メモリー4GBに128GBのSSDを搭載する。11.9mmの薄さながら冷却性能がプラスチックより30%良くなるメタルファンを採用した。キーボードを外した状態で888g。電源を入れてパソコンが立ち上がるまで8.5秒、IEのアイコンをクリックしてWebページの画面が開くまで0.5秒しかかからない点もアピールしている。価格は159万ウォン(約11万5000円)である。両方とも前面に200万画素、背面に800万画素のカメラが付く。
サムスン電子は10月24日のATIV記者発表会で、「タブレットパソコンのラインアップが拡大しても、ユーザーはパソコン本来の機能と性能を必要としている。サムスン電子は画期的な製品を持続的に発売する。最高のモバイル環境を提供するだろう」と自信を見せた。
LG電子はスライド型
LG電子のWindows 8パソコンはATIVのようなブランド名はなく、タッチスクリーンノートパソコンは「H160」、タッチスクリーンでオールインワンパソコンは「V325」というモデルだ。LGはスマートPCではなく「Tab book」と呼ぶ。タブレットとノートブック(韓国ではノートパソコンを「ノートブック」という)のいいところだけを組み合わせたという意味なのはサムスンと同じ。
H160は画面のサイズはサムスンと同じく11.6型だが、キーボードを取り外せない。ディスプレイの横にあるボタンを押すとオートスライドでキーボードが現れる。そのせいか15.9mmとちょっと厚みがあり、重さも1.05kgになった。CPUはIntel Atom Z2760(1.8GHz)、11.6型IPS液晶(1366×768ドット)、2GBのメモリーと64GBのSSDを搭載する。サムスンと同じく電子ペン「スマートタッチペン」が付属する。価格は専用カバー付きで110万ウォン(約7万5000円)である。10月26日から発売すると発表はしたものの、量販店やネットショッピングでは11月から予約販売開始と書いてある。
LGは10月26日から、UltrabookにもWindows 8を搭載して販売している。本体はそのままWindows 8にアップグレードしたいユーザー向けに、23型のタッチスクリーンディスプレイも発売した。
韓国ではWindows 8がタッチスクリーンに対応していることよりも、パッケージソフトからアプリ方式に切り替わったことの方が話題になった。ソフトウエア販売方式がパッケージからアプリへ完全に切り替わるのではないか、という声もある。
韓国は電子政府、オンラインバンキング、航空券予約、ネットショッピングなど、決済機能が必要な主なWebサイトはほとんどIEを標準にする。いろいろなサービスのWindows依存度が高いことからも、AndroidでもiOSでもなくやっぱりWindows端末が一番使いやすい!というユーザーがたくさんいる。外ではiPadやGALAXY Tab、仕事ではノートブックと2台を使い分けていたユーザーが、これからはWindows 8の端末だけに絞る可能性もある。
カーナビやMP3プレーヤーを製造していた中小メーカーがタブレットを製造するようになった。グーグルのAndroidタブレット「Nexus 7」が9月に参入したことをきっかけに、ここでは激安タブレット競争が繰り広げられている。安いタブレットとノートパソコンを使い分けるか、高くてもWindows 8パソコン1台に絞るか、ユーザーとしては迷うところだ。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年11月02日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121102/1069222/