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モトローラ・モビリティが、韓国市場から2013年2月に撤退すると発表した。モトローラは2011年発売したスマートフォン「ATRIX」と「RAZR」を最後に、新規端末を発売しなかった。モトローラ韓国支社の社員は約500人いるが、ほぼ全員が再就職先のないまま解雇される形となった。
Yahoo! Koreaの撤退と並んで、韓国のネットユーザーはモトローラの韓国撤退を残念がっている。Yahoo! Koreaが韓国のインターネット黎明期を支えたポータルサイトとしてネットユーザーの思い出に残っているように、モトローラも韓国初の携帯電話として、たくさんの思い出を残したからだ。
モトローラは1988年、韓国初の携帯電話を発売した。電話というより凶器のような物体で、大きなアンテナが差し込まれた四角い箱の形をしていた。重さ1kg、長さ30cm、バッテリーは30分も持たなかった。それでも自動車1台が買える値段だったので、80年代まで携帯電話を持っているのは新聞記者や政治家、起業家といった一部の人に過ぎなかった。
その後はモトローラのポケベルが流行った。国産のポケベルもあったが、GalaxyよりやっぱりiPhoneの方がかっこいいという人がいるように、当時もモトローラのデザインが優れている(といってもどれも黒くて四角だった)という理由でよく売れた。
1996年以降、個人が安い値段で携帯電話を利用できるようになってからは、韓国でモトローラのフォルダー式携帯電話「StarTAC」が一世を風靡(ふうび)した。88gという驚異的な軽さで、ポケットに入れても邪魔にならない初めての携帯電話が出たとして話題を集めた。StarTACは当時130万ウォン(約10.5万円)もしたのに130万台が売れた。1996年の物価はまだ電車賃の基本料金が500ウォンほどで今の半額だった時代である。2012年の物価でいうと200万ウォン(約15万円)はする携帯電話だった。
StarTACを持っているのはお金持ちということでもあり、持っているだけで女性にもてるほどであった。2012年夏に大ヒットしたドラマ「応答せよ1997」でも、1997年、ソウルから釜山にやってきた転校生の携帯電話がStarTACで、それをきっかけに御曹司だということがばれ、女子の間で噂(うわさ)になるという場面があった。現代のビジネスパーソンがiPadやタブレットPCを持ち歩くように、90年代後半はモトローラのStarTACができるビジネスパーソンの象徴だった。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121214/1074022/