[日本と韓国の交差点] 水害で廃業に追い込まれた書店をボランティア2500人が再建

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韓国のテレビ番組で3月末、個人が経営する地元の書店が、地域住民の助けで蘇った面白い事例を紹介した。

 その書店は、ソウルから4時間ほど離れた人口27万人のグンサン市にある「ハンギル書店」だ。グンサン市は2012年8月13日、たった1日で444ミリの雨が降る韓国史上最悪の暴雨に見舞われた。濁流が、ビルの地下にあったハンギル書店に流れ込んだ。200坪の店内は天井まで水に浸かり、店内にあった約10万冊の本はすべてゴミになった。ハンギル書店の社長と社員らは、あまりにもひどい状況に言葉を失った。これはもう廃業するしかないと思ったという。


 廃業するにしても、水に浸かった本を捨てて、店内を片付けないといけない。どこから手を付ければよいのかわからず、途方に暮れていた時、いつもハンギル書店で参考書を買っている地元の中高生たちが手伝いたいとやってきた。孫から話を聞いたおじいさん、おばあさんも手伝いに来た。「25年も親しまれてきた地元唯一の大型書店が水害で廃業するかもしれない」という噂が広がり、近所の小学生から軍人まで手伝いに来た。


 毎日10~80人ほどの人が集まり、最終的には延べ2500人がボランティアとして店内の掃除を手伝った。「ボランティア達のために」と食べ物を持参する人も後を絶たなかった。近所の教会は彼らに食事を振る舞った。段ボールに入れたパンや飲み物をこっそり置いていく人もいた。


 ハンギル書店はボランティアの十匙一飯(韓国のことわざで「シプシイルバン」と読む。自分のご飯からスプーン1杯分を取り分けるだけでも、10人分集まれば1人前になるという意味。ほんの小さな親切でも集まれば大きな力になる)によって、2カ月に及ぶ掃除の末、店内を片付けることができた。図書館、美術館など、公共施設が水害に遭い、それを復旧するためボランティアが集まったという話はよく聞く。だが、街の書店のためにここまでボランティアが集まったのは韓国でも初めてのことであった。



使えないかもしれない商品券を購入して再開を支援



 地元の人々の支援は、掃除で終わることはなかった。この書店を廃業させないための色々なアイデアが集まった。
 「立ち読みしながら読みたい本を選べる地元の書店を守りたい」
 「子供に紙の本(紙本)を読む楽しさを残してあげたい。スマートフォンを使えばいつでもどこでも電子本を読めるけど、紙本のぬくもりは伝わらない」
 「地元に帰省した時に、ハンギル書店をうろうろしていると必ずと言っていいほど同級生に会えた。街の書店はみんなの憩いの場であり、待ち合わせの場であり、思い出の場所だ。なくなってほしくない。なんとかしたい」



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By 趙 章恩

2013年4月2




-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130402/246002/

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