[日本と韓国の交差点] ネットを使った選挙運動の光と影

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日本でも、インターネットを利用した選挙運動を解禁する公職選挙法改正案が4月中に成立する見通しだ。韓国では、90年代後半にブロードバンドが普及し始めた頃から、ネット選挙運動に取り組むようになった。候補者らはホームページを作って公約を周知することができるので、従来の選挙に比べて選挙運動にかかる費用を劇的に安くできる可能性がある。

 韓国の中央選挙管理委員会は2012年1月に「公職選挙及び選挙不正防止法」を改定して、ネット選挙運動を全面解禁した。


 候補者は、候補として登録する以前から投票の前日までネット上で選挙運動ができる。候補や、正式に登録した選挙運動員でなくても、誰でも自由に選挙や候補者に関する自分の意見をネットやTwitterに書き込むことができる。自分が支持する候補に関する書き込みをメールで送信することも可能だ。投票日にも、「○○に投票しよう」など特定候補を支持する内容でない限り、Twitterやネットに書き込んでかまわない。


 改定まで、従来の選挙運動もネット選挙運動も、候補者として登録した翌日から投票の前日までしかできない規定があった。



始まりは2002年の大統領選挙



 韓国でネット選挙運動の影響力が初めて認知されたのは、2002年12月の大統領選挙だった。この年に当選した盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(当時)を、欧米のマスコミは「世界初のネット大統領」と呼んだ。


 盧武鉉氏を支持する勢力は「盧武鉉を愛する人達」というホームページを作り、ネット上で公約を宣伝。なぜ同氏を支持するのかについて書き込んだ。お金をかけて昔ながらのお金のかかる選挙運動――選挙運動員を動員したり、宣伝カーに乗って全国を駆け回ったりする――をしなくても、候補者の考えを広めることができるネット選挙運動が脚光を浴びた。


 2002年の大統領選挙では、紙媒体を発行しないインターネット新聞も活躍した。インターネット新聞の記事の下に、読者はコメントを書き込むことができる。記者が、読者の反論に答えたりする。既存のマスコミの記事に影響されることのないネット新聞が、20~40代の有権者の情報源になった。こうしてネットから情報を得た20~40代の市民は、自分の意見も聞いてもらいたいと自発的に選挙運動に加わるようになった。「人を動員する」選挙運動から、「人が自発的に参加する」選挙運動へと切り替わったのだ。



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