韓国から東南アジア市場狙うKAKAOとLINE、激化する無料メッセアプリの市場先取り競争 [2013年4月26日]

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日本に限らず世界で人気を誇るLINE(ライン)、韓国ではLINEより人気があるKAKAO TALK(カカオトーク)、華僑を中心に全世界の中国人が利用しているWechat(ウィーチャット)、この3つの無料メッセンジャーアプリがアジア市場で激しく競争している。

 韓国で絶大の人気を誇るKAKAO TALKは、LINEより早くサービスを開始し、2011年3月の東日本大震災の際に、日本に住む韓国人の安否確認ツールとして大活躍した。韓国では「後で電話するね」ではなく、「後でカトクするね」と言うようになり(韓国ではKAKAO TALKを略してカトクと呼ぶ)、メールよりKAKAO TALKを利用する機会が増えた。


 ブログやFacebookに飽きた人達は、KAKAO TALKでつながっている友達にだけ写真を公開するKAKAO Storyを使うようになった。ところが、韓国での成功を踏み台にして日本やアジア市場に進出しようとしたKAKAO TALKの戦略は思い通りにいかなかった。


 それは、強敵LINEが登場したからだ。








日本では圧倒的人気のLINE(ライン)だが、“本国”である韓国ではKAKAO TALKにリードされている


LINEの貢献で韓国NHN株価は高値更新


 韓国系企業でありながら本国より先に日本でサービスを開始したLINEは、東南アジアや中南米、スペインでもユーザーが増え続けている(関連記事:1年半で利用者1億人突破「LINE」の快進撃が続く)。LINEは既にタイ、インドネシア、台湾など東南アジアだけで5000万人近いユーザーを確保している。


 Nokiaは低価格スマートフォン「Asha」にLineをプリインストールすることにした(関連記事:LINEがMWCデビュー、ノキアの新興国向けスマホで展開)。絶好調のLINEのおかげで、親会社である韓国NHNは株価が最高値を更新し続けている。


東南アジアで激しい先取り競争展開


 KAKAO TALKはLINEが市場を握っている日本を避けて、世界で4番目に人口が多く(約2億5000万人)、スマートフォンの普及が始まったばかりのインドネシアを狙っている。3月からアジアで人気の男性アイドルグループ「BigBang」を東南アジア向けイメージキャラクターに起用した。KAKAO TALKのK-POPマーケティングは効果があり、インドネシアではユーザーが毎日数倍ずつという勢いで増え始めた。


 中国系のWechatが市場を先占したベトナムでもK-POPアイドルのCMが話題になり、KAKAO TALKが2位に追いついた。中国系Wechatは全世界の華僑が利用していることから、ユーザー数が3億人を超えた。この数は、KAKAO TALKとLINEのユーザーを足した合計よりも多い。KAKAO TALKとLINEがアジア市場で成功するためには、Wechatの壁を越えなければならないわけだ。Facebookも無料メッセンジャーアプリを始めたので、ライバルはさらに増えた。


市場先取りが鍵握るメッセアプリ市場


 メッセンジャーアプリは、他のどのアプリよりも市場先占効果が大きい。ユーザーの多い方にまたユーザーが集まるからだ。日本ではLINE、韓国ではKAKAO TALKが一度築き上げた市場シェアはなかなか変動しない。日本に進出したKAKAO TALKは苦戦していて、LINEも韓国ではKAKAO TALKを越えられなかった。


 そこから考えると、今まさにスマートフォンの普及が急速に進んでいる東南アジア地域では、先に進出した方が今後もずっと市場をリードできる可能性が高い。


 KAKAO TALKとLINEが海外で成功すると、ゲームやスタンプなどのモバイルコンテンツ提供者もKAKAO TALKとLINEを経由して、容易に海外進出できる。そのため、韓国市場だけでは市場が小さすぎて収益を上げにくいモバイルゲームやキャラクター会社も、KAKAO TALKとLINEの海外進出を応援している。




KAKAOとLINEマネタイズは道半ば


 しかし海外進出だけが課題ではない。KAKAO TALKとLINEの本当の課題は利益を上げることである。


 KAKAO TALKは「Anipang」などKAKAO TALKを基盤とするモバイルゲームが好調で、2012年にやっと赤字から逃れられた。今後は米アップルのApp Storeのような「KAKAO Page」というコンテンツ流通プラットフォームを作り、スマートフォン向け音楽、動画、ゲームなどあらゆるコンテンツを流通させようとしている。










韓国で人気があるKAKAO TALKはスマホ向けコンテンツ流通プラットフォーム「KAKAO Page」を始めた。購入したコンテンツは友達1人とシェアできるので、2人で一緒に楽しめるのが特徴


 2013年4月に始まったばかりのKAKAO Pageには、自分が購入したコンテンツを友達1人とシェアできる機能や、友達2人に面白そうなコンテンツを推薦すると自分と友達2人合わせて3人が無料でコンテンツを利用できる機能があり、友達と一緒に楽しめる「コンテンツ販売所」であるのが特徴だ。


 一方のLINEはスタンプを使った企業のプロモーションが好調で、多くの国で企業と提携し、プロモーションを代行するサービスに力を入れている。


 KAKAO TALKとLINE、そこにWechatを加えたアジア3強の動きから、目が離せない。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130426/1088602/


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