LTEに変えると何がいいの?LTE加入者が2000万人を超えた韓国で人気のサービス [2013年5月10日]

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 2013年5月、3Gよりも高速データ通信が可能なLTEの加入者が2000万人を超えた韓国。LTEサービスが始まったのは2011年7月だが、1年10カ月ほどでスマホユーザー(約3500万)の約6割が3GからLTEに乗り換えた。


 4月にサムスン電子がスマホの大型新製品「GALAXY S4」を発売したことで、LTE加入者はさらに増えそうである。(関連記事:日本国内登場間近!? 「GALAXY S4」の韓国ソウル発売現場をレポート








韓国で発売された「GALAXY S4」はLTE加入者獲得合戦も刺激している。


 韓国のキャリア(通信事業者)の間では、3Gより料金が高く従量制のLTE加入者を増やしてARPU(1契約当たりの平均収入)を伸ばすため、「LTE加入者専用」サービス競争を繰り広げている。2013年末までに、スマホユーザーの8割にLTEを使わせるのがキャリア3社の目標である。


韓国LTEのキラーコンテンツとは


 「LTEに変えるとこんなサービスが利用できてとっても便利で楽しい」と韓国のキャリアが宣伝しているのは、ナビゲーションと野球観戦である。


 キャリア3社の中で最もシェアの低いLGU+は、他のキャリアより一足先にLTEサービスを開始した。LTEならではのサービスとして、スマホから利用するクラウドコンピューティング方式の「3Dナビゲーション」を目玉にしている。


 モバイルデバイス向けに作られたキャリアのナビゲーションサービスは、乗り換え案内や徒歩ナビ機能もあり、いつでもどこでもすぐ使えて便利だ。しかし容量の大きいマップのダウンロードとアップデートに時間がかかりすぎるのが不便だった。


 最初にナビゲーションを起動した際に、300MB近いマップをスマホにダウンロードしなければならない。その後も、ナビゲーションを使うたびに、「アップデート中です」という表示が出て、何分か待たされることになっていた。韓国は“せっかちな人”が多いので、2~3分のアップデートも待てず、「これは使いものにならない!」という評価を下してしまう。


3Dマップを高速表示


 LGU+のLTEナビゲーションは、端末にマップをダウンロードすることなく、クラウドサーバーにあるマップを表示する。LTEの高速ネットワークを使ってすぐサーバーからコンテンツを取り寄せて表示するので、以前のように端末にダウンロードする必要がなくなった。


 周辺のビルや交差点などがはっきり分かる3Dマップなので、方向音痴で“地図が読めない女性”でも簡単に利用できるのは便利だ。LTEナビゲーションはLTE加入者しか利用できないが、利用料金は無料である。


 このLTEナビゲーションの面白いところは、グループナビ機能にある。友達に待ち合わせ場所を転送してから、その人(または車)が道に迷わっているのか、ちゃんと目的地に向かっているのか位置情報を共有できる。


 「今周りに何が見える? 一体どこにいるの?」と電話で騒がなくても、スマートに場所を教えられる。複数の車で移動する際にも、必死で前の車を追いかけなくてもよくなった。それぞれの車の位置を把握できるので、はぐれることなく一緒に移動できる。最大5人と共有できる。


バッテリー消耗という弊害も


 しかし、良いことばかりではない。ナビゲーションを利用するためには常にLTEネットワークにつながっている必要があるため、バッテリーの消耗が心配だという声がある。LTEはデータ通信使い放題ではなく従量制なので、ナビゲーションを利用するたびに大量のデータを使ってしまうのではないかという問題もある。


 LGU+はこのほか、LTE専用サービスとして、ストリーミング動画や音楽を2秒以内に再生できるようアップグレードした。今までは動画再生が始まるまで7秒以上かかっていた。さらに今までは動画再生中に電話がかかってくると自動的に動画再生が中止されたが、マルチタスク機能を強化して、動画を見ながら電話をしたり、カカオトーク(関連記事)でチャットしたりできるようにもしている。いずれも、“せっかちな韓国人”にとって大きな魅力になる。


LTEで高画質の野球生中継


 SKテレコムは、LTE加入者だけが利用できる野球生中継「Tベースボール」に力を入れている。


 テレビでは野球中継をあまり放送しなくなったのも影響があるが、好きなチームの試合は生中継で見たいという野球ファンが多く、2012年夏にも大ヒットしたアプリである。700万人ほどが利用しているTベースボールのアプリレビューを見ると、4947人のうちに4693人が5点満点と評価し、平均点数4.9という人気ぶりである。


 ワンセグ放送よりも断然きれいな1Mbpsの高画質で、スマホの4~5インチ画面でも十分迫力ある中継を視聴できる。2013年内には、2MbpsのフルHD生中継も行う予定である。


 好きなチームを設定すると、ニュースや試合中継、選手情報などすべてのメニューがそのチームの話題を優先的に表示する「パーソナル」機能、ホームランや得点チャンス・投手交代など見たい場面を設定しておくと中継中に知らせてくれる「アラーム」機能、生中継中にさっきの場面をもう一度見たいという場合に使う「タイムマシン」機能もあるので面白い。


見たいシーンだけを観戦


 タイムマシン機能は、これまた“せっかちな韓国人”利用者のニーズに応えるために始まった。ホームランや盗塁など重要な得点場面を見逃した時、今すぐさっきの場面が見たいというニーズがあるのだ。従来は、野球中継が終わってスポーツニュースの時間まで待たないとハイライト場面を見られなかった。


 もう1つタイムマシン機能のメリットは、バッテリーの消耗を最小限に抑えつつ、高画質の野球生中継を楽しめることだ。試合を最初から最後までスマホで見るとバッテリーの消耗が激しい。アラーム機能で試合の流れを把握し、タイムマシン機能で好きな場面だけを選んで観るという観戦スタイルも流行っている。「Tベースボール」からハイライト場面のVTRや、野球をテーマにしたWeb連載漫画なども見られるようにして、生中継時間以外でも楽しめるように工夫している。


 この他にもLTE専用の高画質モバイルショッピング、高画質ゲームなどが登場した。LTEならではのスマホの使い方を提案する動きは、しばらく続きそうだ。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130510/1089942/

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