[日本と韓国の交差点] 韓国で横行する押し込み販売~相次ぐ代理店の自殺

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韓国のセヌリ党(与党)と民主統合党(野党)は、6月3日から臨時国会を開くことを決めた。韓国中を怒らせた「甲の横暴」問題を解決し、自殺などが二度と起こらないよう防止策を練るためである。

 事件の発端は大企業による代理店への“押し込み”だった。ナムヤン乳業という牛乳や飲料水などを製造・販売する大企業は、代理店に大量発注するように強制することで売り上げを伸ばしていた。代理店が在庫を売り切ることができず、損をすることを知っていながらだ。代理店が断っても製品を大量に置いていき、代金を振り込めと要求した。ある50代の代理店主が「これ以上は無理だ」と反発すると、30代の営業所長は彼に対して「(従わないなら)殺してやる」と電話で暴言を吐いた。


 代理店側は、“押し込み”をやめるようナムヤン乳業本社に幾度も要求したが聞いてもらえなかったという。ついには代理店が集まり被害者協議会を設立。ナムヤン乳業の会長と代表理事、営業チーム長などをソウル中央地検に告訴した。さらに、録音しておいた営業所長の暴言をSNS上で公開した。暴言の内容はSNSを通じて瞬く間に広がった。マスコミも取り上げ、韓国中に知れ渡った。


 そんなに大変なら代理店をやめることもできたであろうに、どうして続けたのだろうか。ナムヤン乳業被害者協議会によると、代理店になる際に、冷蔵倉庫や冷蔵トラックといった設備投資が必要になる。多くの代理店は「投資を回収するまでは代理店契約を維持しなくて」はと思い、不当な取引だと思いながらも我慢し、なんとか製品を売って生計を立てようとがんばってきた。でも残ったのは借金だけ。我慢の限界を超え、協議会の設立に至ったというわけだ。


 ナムヤン乳業の会長は、マスコミが“押し込み”問題を報道する直前に、自分が持っていたナムヤン乳業の株の一部を売った。実態調査をするとか、代理店に謝罪するとか、解決のために努力することもなく、会社の評判が下がると知って経営者が自分の会社の株を売り払うとは……。驚かずにはいられない。


コンビニでも、デパートでも、酒店でも


 ナムヤン乳業の他にも、同様の事件が数えきれないほど起きている。マッコリや、法事につかう伝統酒を取り扱っている代理店主が、「“押し込み”にもう耐えられない」と遺書を書いて自殺する事件があった。自殺した代理店主は酒造会社の在庫“押し込み”のために、多額の借金を抱え悩んでいたという。


 他の代理店主も次々に“押し込み”を証言した。「営業社員が実績を上げるため賞味期限が切れた酒までも買い取れと押しつけた。『いったん買い取ってくれれば後で返品してもいい』と言われたが、結局返品させてもらえず、代理店の損失になった」という証言もあった。


 ある大手コンビニエンスストアは、病気や赤字続きでコンビニを経営できなくなった加盟店主が解約を求めると、前年の売上高の35%を違約金として要求した。加盟店の赤字を改善するため一緒に悩んでくれるどころか、違約金まで求められたことに憤慨したコンビニ店主が、コンビニ本部の営業社員の目の前で自殺する事件もあった。コンビニを続けることもできない、金がなくて解約することもできない――悩んだ加盟店主が自殺した事件は、今年に入って既に4件に上っている。



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By 趙 章恩

2013年5月29




-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130527/248677/

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