サムスンのGALAXYブランドで発売される“Google純正”スマホ、2社の「協調と競争」に注目 [2013年5月17日]

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 米Googleの開発者向けイベントである「Google I/O 2013」は、韓国でも大きな話題になっている。約6000人の開発者が参加する一大イベントは世界中にインターネット生中継され、韓国では2013年5月16日深夜1時から始まった「キーノート」の動画中継を見ながらTwitterやブログに投稿する人も多かった。(関連記事:Google I/O 2013で音楽配信サービスや開発ツール「Android Studio」など発表


 韓国で話題になったのは、やはり、Googleのソフトウエア開発標準となるスマートフォン(レファレンスフォン)として、「Nexus」ブランドのスマートフォンではなく、サムスン電子の「GALAXY S4」を選択したことである。「GALAXY S4 Google Edition(Google版GALAXY S4)」として米国などで発売される。


Google版スマホなのに、名前はGALAXY


 これまでの慣例では、Googleのレファレンスフォンには必ず「Nexus」という名前が付いていた。既存のレファレンスフォンである「Nexus 4」(日本国内では未発売)は同じ韓国のLG電子製だが、LGは自社ブランドの「Optimus」ではなく、「Nexus 4」という名前でGoogleに納品した。


 今回、“Google純正”ともいえるレファレンスフォンが「Nexus」ではなく、サムスンのブランドである「GALAXY S4」の名前のままで発売されるのは興味深い。「2013年のレファレンスフォンはGoogle傘下のMotorolaから出るのではないか」という噂もあったが、実際にはGoogleはサムスンを選択した。


 Google版GALAXY S4は、OSとしてはAndroid 4.2.2を搭載するが、最新のAndroidへのアップデートがどの端末よりも早く提供されることになる。Android 5.0(Key Lime Pie)がもうすぐ登場するという噂もある。Android 5.0を真っ先に体験できるのも、このGoogle版GALAXY S4になりそうだ。


 Google版GALAXY S4は、開発者らが自由に自分の好きなソフトウエアをGALAXY S4に搭載してテストできる(Bootloader unlocked)状態で提供する。サムスンが開発したソフトウエアは一切搭載せず、純粋にAndroidとGoogleのソフトウエアだけを搭載する。この点は既存のレファレンスフォン「Nexus」と同様だ。




価格はNexusシリーズとしては高め


 Google版GALAXY S4のストレージは16GB、SIMフリーで、発売日は6月26日。価格は649ドルである。米Appleの「iPhone 5」のSIMフリーが649ドルなので、Google版GALAXY S4も同じ価格で勝負するようだ。


 この価格設定には意外さもある。GoogleのNexusシリーズは、「ハイスペックなのに価格は安い」ことが大きな特徴だった。LG電子の「Nexus 4」の場合、同じ仕様のスマートフォンの半額程度の299ドル(8GB)、349ドル(16GB)で売り出して大人気となった。


 Google版GALAXY S4の649ドルという価格は、GoogleのNexusにしては“高い”。韓国では「Nexus 5が出るのを待った方がいいかもしれない」というつぶやきも結構見かけた。


Androidレファレンスフォン初のLTE端末


 もう1つ、気になるのはストレージ容量である。GALAXY S4のストレージは16GBでも、システム領域が占める割合が大きく、ユーザーが自由に使えるのは8.8GBしかないことを不満に思う声もある(micro SDカードで64GB追加することは可能)。あれもこれもテストしたい開発者はどう思うだろうか。同じくストレージ容量16GBのNexus 4は、13GBほどユーザーが使える領域がある。


 今までGoogle Playストアでは「Nexus」というGoogleオリジナルブランドのスマートフォンだけを販売していた。今回のGoogle版GALAXY S4は従来のNexusシリーズと同様の扱いで、Google Playストアで発売。米国内ではT-MobileとAT&TのLTE通信網を利用できる。Google版GALAXY S4はGoogleのレファレンスフォンとしては初めてのLTE端末でもある。


GoogleとMotorola、サムスンとTizenの関係は?


 韓国のマスコミでは、LG製の「Nexus 4」よりもサムスン製の「GALAXY S4」をプッシュすることで、Googleはサムスンと密接な関係であることをアピールしようとしているのではないか、とも報道されている。以前とは少し風向きが変わったようだ。一時期は、サムスンがAndroid OSに依存しすぎることを懸念して、米IntelやNTTドコモらと一緒に新しいスマートフォン向けOS「Tizen(タイゼン)」の開発に参加したことでGoogleとの関係が悪くなったという報道も出ていた。


 しかし、Android OSを搭載したスマートフォンで最も売れているのはサムスンのGALAXYシリーズであることもまた事実である。米国の調査会社Strategy Analyticsが2013年1~3月のAndroidスマートフォン端末の営業利益を推計したところ、全体の利益は53億ドルで、この内94.7%の51億ドルをサムスンが占めている。2位のLGが1億ドルなので、50倍もの差がある。


 今後Googleと傘下のMotorolaによる新しいスマートフォンが発売されれば、サムスンのシェアは変わるだろうか。世界的にGoogleの影響力が強くなっている中で、サムスンはソフトウエア開発人材集めに熱を上げている。「Googleのような会社を目指している」とも言われる。Googleとサムスンの「協調と競争」の行方が楽しみである。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130517/1090645/

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