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医療機器は米国やEU(欧州連合)、日本からの輸入に依存していた韓国だが、2012年から新興国への輸出が増加しはじめた。韓国食品医薬品安全処によると、2012年の輸出は対前年比17.6%増の19.67億米ドル。輸入は同3.2%増の26.01億米ドルだった。貿易赤字は2011年の8.48億米ドルから2012年には6.34億米ドルに減少した。
韓国が輸出している医療機器は、超音波診断装置が多い。実際、医療機器メーカーの輸出額上位も、サムスンメディソン(2.1億米ドル)、韓国GE超音波(1.8億米ドル)、NUGA医療機(0.72米億ドル)と超音波診断装置の関連企業が並んだ。
韓国の医療機器輸出額は、中国・ロシア・インド・中南米など新興国で着実に伸びている。韓国保険産業振興院によると、医療機器の輸出全体では前述の通り2012年に対前年比17.6%増加したが、中国向けの輸出額に限れば66%増、ロシア向けは25.4%増、中南米と新興国向けは36%増加しているという。
韓国の医療政策を担当する省庁である保健福祉部(部は省)は2013年10月23日、韓国製の医療機器の海外輸出を支援する「海外医療機器総合支援センター」をベトナムとインドネシアにオープンした。このセンターは、韓国製の医療機器であればメーカーに関係なく修理やアフターサービス、現地の医療従事者を対象にした医療機器使用教育、韓国中小医療機器メーカーの海外進出のための販売代理や輸出手続き代理などの役割を担う。
海外医療機器総合支援センターは、韓国と東南アジアの政府間保健産業分野の協力増進のための支援活動である。韓国保健福祉部は、国をあげて医療機器の輸出に力を入れていると現地政府にアピールすることで、韓国製の医療機器の認知度やブランド価値を高め、輸出増加につながることを期待している。オープン初日には韓国から保健福祉部や医療機器協同組合などの役員が現地を訪問し、ベトナム・インドネシア両政府と韓国製の医療機器輸出のための許認可手続きについて意見交換した。
韓国は今後新興国が医療機器の主な顧客になると展望している。先進国は既に米国やドイツ、日本の医療機器が市場を確保しているので、超音波診断機器がメインの韓国のメーカーが進出するのは難しい。一方、中国や新興国は経済発展により医療サービスの需要が高まっており、医療機器もほぼ輸入に依存しているので、韓国の医療機器も輸出できるチャンスがあると見込んだのだ。
特に中国は人口が多く生活水準も高まっていることから、米国に続いて世界第2位の医療機器市場になると韓国のメーカーは展望している。中国には既に韓国医療機器メーカーのサムスンメディスン、Lutronic(医療用レーザー機器)、VATECH(歯科用CT)、CU Medical Systems(AED)などが進出している。中国の医療市場への進出を狙う韓国企業はとても多く、韓国の通信キャリアであるSKテレコムも熱心に動いている。中国の医療機器メーカーであるTIANLONG(天隆)社を買収し、中国の医療情報ネットワーク構築や体外診断機とIT技術を融合したヘルスケア・サービスを始める準備を進めている。
韓国保健産業振興院は、新興国進出支援活動の一環として中国各地で韓国製の医療機器と病院を輸出するための「韓国医療宣伝活動」を行っている。病院輸出とは、韓国の大手病院を中国に設立することで、病院の建設から医療機器、医師、看護師、医療情報システムなど全てを韓国の大手病院と企業が手掛けることを指す。韓国の技術で最先端の病院を中国に作り、中国にいる医師と韓国にいる医師をつなげる遠隔診療でより質の高い医療サービスを提供することを狙う。
韓国保健産業振興院は2013年9月、中近東に韓国製の医療機器を輸出するため、エジプトやアラブ首長国連邦の医療機器メーカーを韓国に招待し、現地進出のためのマーケティングや流通事業者選定について学ぶシンポジウムも開催した。韓国保健福祉部は、医療機器産業の海外進出活性化のために全省庁が参加する産業育成案について議論を始めた。政府の積極的な支援を追い風に、韓国製の医療機器の新興国向け輸出は、今後も大きく伸びそうだ。