サムスンのお膝元でiPhone 5sと5cを酷評する韓国メディア、ユーザーはAndorid不安から乗り替え検討も [2013年9月13日]

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米アップルが2013年9月10日(現地時間)に発表した
スマートフォン「iPhone 5s」と「iPhone 5c」。日本ではNTTドコモからも販売されることになり、話題騒然になっている。

 韓国でも、やはりiPhone 5sと5cは話題になっている。去年の「iPhone 5」の時と同様、またもや5sと5cは日本で先に発売される。韓国での発売は今年11月以降になりそうだ。今回は5sと5cを先行発売する国から個人輸入してMVNOで使える道が開けた。「キャリアの補助金なしでもいいから早くiPhone買いたい!」と心待ちにしているユーザーも少なくない。

指紋認証やカメラ機能、処理速度向上などが話題になっている「iPhone 5s」

韓国メディアはiPhone 5s/5cを酷評

 海外のメディアは、スティーブ・ジョブズがいた頃のようなあっと驚かせるところはなくても、iPhone 5sの指紋認証やカメラ機能改良、A7チップ搭載で処理速度が高くなった点、常に動きを感知して最適の状態にするモーションプロセッサーM7を搭載したところなどを高く評価している。

 それに対し、韓国メディアは酷評しているケースが多い。「iPhone 5sと5cは期待外れ」「新作発表後アップルは株価下落、サムスン電子は株価上昇」「5cは値段が高すぎて低価格スマホとは言えない」「指紋認証なんていらない無駄な機能」など、韓国メディアでは異常なほどアップルを批判する記事が多いのに驚いてしまった。

 「iPhone 5sと5cを少しでも褒めるとサムスンから広告もらえなくなるのか?」と突っ込みたくなるほどである。韓国にいると、iPhone 5sと5cについての中立的な情報を得るには、海外メディアの記事と、国内ブログのレビューを頼るしかない。

韓国ではサムスンの大型新製品発売が間近

 韓国内でも世界市場でも、スマホはサムスンの「GALAXYシリーズ」が最も売れている。サムスンは9月5日、新しいスマホ「GALAXY Note 3」と腕時計型のウエアラブル端末「GALAXY Gear」を公開したばかりである。

 GALAXY Note 3は、5.7インチSuper AMOLEDディスプレイの大画面に1310万画素カメラ、3200mAhの大容量バッテリーに重さは182gというスペックで、前の機種に比べ使いやすくなった。韓国のスマホユーザーは写真撮影が大好きで、特に「セルフカメラ」と呼ぶ自分撮りが大好きである。Wi-Fiが使える場所が多いので、テレビドラマの再放送やバラエティー番組のクリップ動画などを移動中に視聴する人も多い。通常の画面サイズのスマホは「小さすぎて目が痛い」と不評。韓国のWebサイトは未だにAdobe Flashのコンテンツが多いので、(iOSが動くiPhoneシリーズではなく)Android OSが動くGALAXYでないとネット閲覧が不便だという面もある。

Androidスマホの「スミッシング」詐欺が脅威に

 しかし最近、Androidスマホを狙った「スミッシング」が多発しており、「安全なiOSに乗り換えるべきなのではないか」と考えるユーザーが増えている。Twitterやブログ、韓国メディア記事のコメント欄の反応などを見ると、悩んでいるユーザーが多いのが分かる。

 韓国のスミッシングは、ショートメッセージ(SMS)とフィッシング(phishing)を組み合わせた造語。知人の電話番号からURL入りのSMSが送られてきて、そのURLをクリックすると悪性コード(マルウエア)に感染する。悪性コードを通じてハッカーにスマホを勝手に操作され、知らない間に有料アプリの決済を繰り返したり、モバイルショッピングサイトを経由して金品を盗まれたりするという、新しい金融詐欺である。

 アドレス帳に登録してある友人の電話番号から「結婚することになりました!」とか、「最近仕事がうまくいかなくてお金に困っている」といった内容のSMSとURLが送られてくると、気になってついクリックしたくなるものだ。ハッカーがスマホ内に保存された個人情報を盗み見して友人になりすましてSMSを送るので、従来型の「迷惑メール」に比べて引っかかってしまいやすい。

スミッシング被害金額は半年で約3億円

 スミッシング被害に遭った人はほとんどがAndroidスマホのユーザーだ。韓国ではGALAXYシリーズなどAndroidスマホ使っているユーザーが多いというのが1つの要因である。だが、AndroidスマホではGoogle Playストアを経由しなくても自由にアプリケーションをインストールできるため、悪性コードが入ったアプリに「感染」しやすいという事情もある。

 セキュリティ会社であるフィンランドF-Secureの調査によると、2012年10~12月世界市場で新しく発見されたスマホの悪性コードの96%がAndroid向けに作られたものだった。同じ期間中のiOS向け悪性コードの発見件数は0件だった。米シマンテックの調査結果も似ていて、Androidの悪性コードは103件、iOSの悪性コードは1件だった。

 韓国警察庁サイバーテロ対応センターによると、スミッシング犯罪発生件数は2012年の2182件から、2013年は上半期だけで16万449件に増えた。被害金額は2012年の5億6900万ウォン(約5200万円)から2013年上半期は32億1900万ウォン(約3億円)まで増えた。一度に大金を決済するのではなく、被害者が気付かないよう500~1000円ほどのお金を長期に渡って盗むのが特徴である。

“国産スマホ”も良いが、安全でかわいいカラーのiPhoneが気になる

 もちろん、スミッシング被害が急増しているのはサムスンやGALAXYのせいではない。だがAndroidスマホを使う限り、メッセージをクリックしないように気をつける以外打つ手が乏しい。AndroidのGALAXYでは不安がある。iPhone 5s/5cはGALAXYシリーズより画面は小さいし、韓国語のWebサイトの一部を表示できない不便さがある。だが「iPhoneを使った方が身のためかな」と悩むユーザーも多い。

 筆者もその1人。かわいいカラーで価格も安いiPhone 5cを狙っている。韓国メディアはiPhone 5cについて「洗礼されたスタイリッシュなモノクロがiPhoneの特徴だったのに、サムスンのまねをしてカラーを増やした」と酷評している。ここまでメディアにけなされながら、韓国でiPhone 5sと5cがどれだけ売れるか、注目したいところだ。


カラフルな「iPhone 5c」を筆者も狙っている

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130912/1104805/

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