韓国アプリアワード、位置情報やARなど応用した「生活便利アプリ」が受賞 [2013年12月27日]

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 2013年も残りあとわずかとなり、韓国でも各分野で1年を振り返るイベントが行われている。アプリケーション業界でも、今年公開されたアプリで最も優秀な製品を選定する「スマートアプリアワード」の授賞式があった。韓国のアプリ開発専門家、2000人がデザインやユーザーインタフェース、技術、コンテンツ、サービスを評価し、革新的で優秀な製品を選ぶ。後援しているのは、韓国のICT政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省に当たる)だ。受賞すると、ダウンロードページに大々的に書き込んで宣伝するほど、自慢になるアワードでもある。

 「総合大賞」に選ばれたアプリは、KIA自動車の「KIA Motion」だった。写真と音楽を選択するだけで簡単に動画を制作でき、SNSで共有もできる。しかし韓国内では、「HONDAの動画制作アプリ『road movies』をそっくり真似たのが大賞だなんて」と選定に問題があるのではないかと疑問を投げかけるユーザーも少なくなく、「スマートアプリアワード」の信頼性が揺らいでしまった。

 一方で、部門別大賞や優秀賞を受賞したアプリには斬新な製品が多く、13年を代表できるアプリとして納得できた。

 例えば、「マーケティングイノベーション大賞」を取った韓国・新世界デパートのアプリは、AR(拡張現実)を利用してオンラインとオフラインをつなげるツールである。位置情報を利用してユーザーのいる場所から近い店舗のセール情報を提供し、デパートのARコーナーでアプリを起動すると、スマートフォンの画面にその都度、違う商品が登場し、画面の商品を割引価格で購入できる。

 冬はブーツを履くことが多いが、気に入った靴があっても履き替えるのが面倒だからと買わずに帰る客をつかまえるため、スマホで自分の足を撮影し、気に入った靴にカメラを当てて合成する「バーチャル試着」の機能が利用できる。衣装はスマホではなく、デパート内にあるバーチャル試着専用のブースを利用するようになっている。新世界デパートによると、バーチャル試着やバーチャルクーポンで楽しくショッピングができると口コミで広がり、アプリ公開から4カ月で40万人以上がダウンロードしたという。

「スマートアプリアワード総合大賞」を受賞したKIA自動車の「KIA Motion」の画面

 

スマートTVや他のデバイスと連動するアプリに期待

 「生活サービス部門大賞」は、位置情報を利用して各種料理の出前を注文できる「配達トン」が受賞した。アプリを起動すると自分の居場所から出前を注文できる料理のリストが登場し、メニューを見ながらお店に電話をして注文できる。

 現金やクレジットカードを持っていなくても、アプリ経由であれば携帯電話料金との合算請求で注文でき、次の注文に使えるポイントも貯まるところが便利だとして話題になった。料理だけでなく、花やその他の代わりに買ってきてほしいものをお願いすることもできる。

 「公共サービス分野大賞」は安全行政部の「スマート安全帰宅」が受賞した。自分の目的地と居場所を保護者に伝えることができるアプリで、共働き家庭で子供の居場所を確認したり、子供の居場所をマップ上に表示したり、子供が帰宅経路から外れると保護者にメールで知らせるといった機能がある。国民の8割近くがスマホユーザーの韓国だけに、GPS機能のあるスマホを使って子供やお年寄りの安全を守れるアプリを省庁が無料で配布している。

 「公共サービス分野優秀賞」では、事故の内容と現場をより正確に早く消防や警察に通報できる「スマート救助隊」が受賞した。国土交通部が提供するアプリで、応急処置や生活安全情報といった付加コンテンツもあり、生活必需アプリとして定着している。

 市内の交通状況をリアルタイムに確認できる「ソウル交通ポータル」を、ソウル市が「公共サービス分野」で受賞した。道案内や道路の渋滞や事故確認、駐車場、バスの乗り換えや到着時間案内、地下鉄乗り換えや運行情報案内、ソウル市内各地の防犯カメラ映像確認、交通関連相談(ソウル市コールセンター)などのメニューがある。自家用車で出勤する人が多く、朝から晩まで渋滞するソウルではとても使えるアプリだ。

 韓国では各省庁も生活を便利にする無料アプリ配布に熱心で、企業もオンラインとオフラインをつなげるマーケティングツールとして面白いアプリを無料で提供している。「あると生活が便利」というより、「ないと何もできない」というほど、韓国ではスマホが生活に根付いてしまった。

 14年から韓国では4K放送が始まるほか、冬季オリンピックやワールドカップといったイベントもあるため、高画質スマートTVの普及が増えると見込まれている。スマホだけでなく、スマートTVや他のデバイスとも連動するアプリが今後、「スマートアプリアワード」に選ばれるのではないだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131226/1116583/

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