[日本と韓国の交差点] 映画「アベンジャーズ2」のソウルロケで韓国が大騒ぎ

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韓国で最も視聴率が高いテレビ番組は、地上波放送局3社が放映する夜8~9時台のニュースである。地上波放送局の夜のニュースは、紙の新聞を自宅で購読する人が少ない韓国では新聞の1面よりも影響力がある。それだけに視聴者は、夜8~9時台のニュースが報じた出来事を、今韓国で起きている最も重要なことと受け止める。ここ数日、「北朝鮮の短距離ロケット発射」や「日韓首脳会談実現」と同じ重要度で扱われているのが、米映画「アベンジャーズ2」のソウルロケの話題である。

 「アベンジャーズ」という映画は米国の有名なマンガが原作で、2012年に公開された。キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ハルクといった特殊能力を持つスーパーヒーローらが「アベンジャーズ」というチームとして力を合わせ、滅亡の危機から世界を救うという内容だ。米マーブルスタジオが2億2000万ドルの費用をかけて制作。2012年に全世界で15億ドルを超える収入を得たという。興行収益は映画「アバタ―」、「タイタニック」に次ぐ歴代3位。日本でも2012年に公開、2014年にはDVDも発売された。


 大ヒットしたことから「アベンジャーズ」の続編を制作することが決まった。「アベンジャーズ2」は2015年夏に北米をはじめ世界各地で公開される予定。2014年3月から南アフリカとイタリアで撮影が始まった。3月30日~4月14日には、韓国ソウルで撮影が行われる。ソウルで撮影する場面は、上映時間約2時間のうち20分ほどになるという。


ロケ地を通るバスは迂回して運行


 大ヒットしたハリウッド映画の続編を韓国ソウルで撮影するというだけでも十分大きな話題だが、このロケを韓国の政府機関が積極的に誘致し全面協力したために、さらに話題をさらうことになった。韓国観光公社と韓国映画振興委員会は3月18日、米マーブルスタジオと「映画『アベンジャーズ2』ロケ地及び大韓民国観光活性化のための了解覚書(Memorandum of Understanding)」を締結した。韓国政府は、ハリウッド映画にソウルの街並みが登場することが、韓国を世界の映画ファンに向けて宣伝する良いチャンスになると考えたようだ。


 「映画『アベンジャーズ2』ロケ地及び大韓民国観光活性化のためのMOU」には、「米マーブルスタジオは韓国での撮影秘話を盛り込んだ特別映像を韓国政府に提供し、各政府機関が宣伝用に使えるようにする」「韓国を否定的に描写する内容は映画に入れない」「米マーブルスタジオが韓国ロケで使った費用の30%を韓国政府が補てんする」といった内容が含まれているという。韓国政府が「アベンジャーズ2」に投資したと見ることができる。



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2014年3月24日



趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン

 



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