[日本と韓国の交差点] 日本の原発判決が韓国に与えた影響

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セウォル号沈没事故以降、韓国社会はこれまでよりも「災害対策」と「安全」に敏感になっている。このような大惨事を予防するため、さまざまな産業が安全対策を再検討している。

 今一番の心配は原発だ。稼働から30年を超えた原発を稼働させ続けることについて、原発周辺の住民と市民団体らが事故の可能性が非常に高いと懸念している。韓国は経済発展を優先し、安全より利益と効率を重視し続けてきた。このままでいいのかという疑問の声が後を絶たない。


 こうした中、日本の福井地裁が5月21日、大飯原発3、4号機の再稼働を認めないとする判決を下したことが韓国で大きな話題になった。福井地裁の「個人の生命と生活に関する利益である人格権より大事な価値はない」という判決が、韓国の原発周辺に住む住民と市民団体を動かした。


 韓国の国会はセウォル号が沈没した原因の一つとして、李明博前大統領が2009年に、20年だった客船寿命を30年に延長したことが問題だと見ている。同大統領は、客船の寿命を10年延長すると年間250億ウォン(約27億円)の経済利益を得られるとして、規制を緩和した。学者の間では「20年以上運航した客船は事故の可能性が高い。客船の運航寿命を延長して得られる利益より海洋事故による損失の方が大きい」と反対する声が上がったが、当時の韓国政府はこれを受け入れなかった。


 セウォル号は、既に18年にわたって運航されていた中古船を、韓国の船会社チョンへジン社が日本から輸入し、韓国でさらに2年以上運航していた。海洋水産部(部は省)の資料によると、韓国内で運航中の客船は173隻(2013年末時点)。このうち海外から輸入した中古客船は36隻。輸入した客船の平均運航期間は20.7年だった。


当初予定していた寿命を超えて稼働


 設計寿命を延長して使い続けている原発でも、セウォル号と同じことが繰り返されるのではいかという懸念が高まっている――安全より利益を重視して運航寿命を延長したことが大参事につながる。


 韓国原子力安全委員会は、ゴリ原発1号機を2017年まで稼働できるようにした。同機は設計寿命30年で1978年に商業運転を開始した。本来なら2008年で寿命を迎えるものを2017年まで延長している。ゴリ原発は韓国第2の都市、釜山市から車で1時間ほどの距離にある。


 韓国の原発は、釜山周辺の東海岸に集中している。事故があった場合、釜山から近い九州にも影響が出る。もちろん九州地域にある原発で事故があった場合、同じように釜山地域に影響が出る。韓国も日本も原発は自分たちだけの問題ではない。



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2014年5月27日



趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン

 



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